灰色のエッセイ

板倉恭司

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私の犯したしょうもない罪の話

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 今回は、かつて私の犯した罪について告白します。本当に申し訳なかったな、と今も反省しております。



 数年前のことです。その時、私は自宅の近くにある市営体育館に設置されているトレーニングルームにてウエイトトレーニングを終え、体育館の敷地内にあるベンチにて休んでおりました。
 トレーニーの方なら誰しもがご存知でしょうが、ウエイトトレーニングの直後は速やかな栄養補給が必要です。私は、自宅であらかじめ作っておいたおにぎりを食べ、プロテインドリンクを飲んでいました、
 その時、誰かの視線を感じました。ふと見ると、数メートル離れた位置にもベンチがあり、そこで母親と男の子が座っていました。母親はまだ二十代でしょうか、スマホをいじっていました。男の子は小学生の一年か二年くらいで、物珍しそうに私を見ていたのです。おそらく、八十五キロあるゴツめの体で濃い顔のおっさんがプロテインドリンクを飲んでいる姿が、子供には奇妙なものに映ったのでしょう。
 私の中に、いたずら心が生まれました。ウエイトトレーニングの直後で、アドレナリンが出てハイな気分になっていたせいもあるかもしれません。男の子に向かい、変顔をしたのです。
 すると、男の子は「お母さん! お母さん!」と言いながら、母親の腕を引っ張りました。母親は、怪訝な表情で顔を上げ、何がおきたのかとキョロキョロ周りを見回します。
 その瞬間、私は何事もなかったかのように顔の向きを変えました。母親から見れば、ベンチで休んでいるオッサンでしかありません、

「ちょっと、邪魔しないで」

 母親は子供に言うと、ふたたびスマホをいじり始めます。私は前を向いていましたが、その辺りの動きは視界に入っていました。
 ふたたび男の子の方を見ると、悔しそうに私を見ています。そこで、またしても変顔をしました。
 すると、男の子はまた騒ぎます。

「お母さん! お母さん!」

 言いながら、母親をつつきました。しかし、母親は無視してスマホをいじっています。私は面白くなり、さらに変顔で挑発しました。
 苛立った男の子は、いっそう騒ぎます。

「お母さん! おじさんが変な顔!」

 言うまでもなく、これは「おじさんが変顔してる!」と言いたかったのでしょう。しかし、言葉だけ聞けば大変に失礼なものです。
 母親は、パッと顔を上げました。私の方を見た後、立ち上がり子供を睨みつけました。

「ちょっと! あんた何言ってんの! 失礼でしょ!」

 恐ろしい顔で叱り付けます。男の子の顔は恐怖に歪み、今にも泣きそうになっていました。
 次に、母親は私に頭を下げました。

「どうもすみません!」

 私は困ってしまいました。正直に「いや、私が変顔をしたせいです」といえばよかったのですが、母親の剣幕に押されてしまいました。

「いや、大丈夫です。大丈夫ですから、あまり怒らないであげてください」

 といって、逃げるようにその場を去りました。



 今思うに、男の子には申し訳ないことをしたと思っております。この出来事が、親子関係に深刻な溝となっていないことを祈ります。





 

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