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やすなと、みけにゃん(2)
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やすなとみけにゃんは、仲良く手を繋いで歩いています。
大きな鏡の置いてあるお店の前を通りかかった時でした。みけにゃんは、足を止め、まじまじと鏡を見つめます。
「みけにゃん、どうかしたの?」
やすなが尋ねても、みけにゃんは黙ったまま鏡を見つめています。かと思うと、いきなり髪の毛をいじくり始めました。
「ちょっと、みけにゃん。何やってんの?」
「わかってないにゃあ、やすなは。オス猫にとって、毛づくろいは重要な儀式だにゃ。何匹のメス猫が、オレの毛並みを見てときめいていたことか」
そう言うと、みけにゃんは帽子を脱いで地面に置きました。すると、頭に生えている三角の耳が露になります。やすなは、驚いてしまいました。
「みけにゃん、帽子を脱いじゃ駄目だよ」
しかし、みけにゃんは答えません。おもむろにポケットからクシを取り出し、髪の毛をとかし始めました。
大変です。このままでは、みけにゃんは変な生き物として、保健所に連れて行かれるかもしれません。それどころか、宇宙人として怪しげな組織の人たちに捕獲されてしまうかもしれません。
「みけにゃん! 帽子を被りなさい!」
やすなが叱りつけると、みけにゃんはビクリ! として、恐る恐る彼女の顔を見ます。
やすなは出来るだけ怖い顔で、みけにゃんを睨みました。やすなだって、みけにゃんを叱りたくはありません。でも、みけにゃんを酷い目や危険な目に遭わせたくないのです。
「にゃにゃにゃ、わかったにゃ。やすなは、怒ったら怖いにゃよ」
みけにゃんは怯えた表情で、しぶしぶ帽子をかぶりました。やすなと手を繋ぎ、また歩き始めます。
二人で町中を歩いていると、とあるファーストフード店の前を通りかかりました。
すると、みけにゃんが立ち止まったのです。
「何か食べようにゃ!」
そう言うと、みけにゃんはずかずか店内に入って行きました。やすなは、大慌てです。
「ちょっと! みけにゃん! わたし、お金持ってないよ!」
しかし、みけにゃんは自信たっぷりの表情で言いました。
「大丈夫だにゃ! 魔王さまから、お金もらったにゃ! やすな、ここはオレのおごりだにゃ!」
そう言った後、みけにゃんはお店の女の人の方を向きました。
「おい娘! チキンナゲットをいっぱいよこせにゃ! やすな、何でも好きなものを注文しろにゃ!」
「えー……」
やすなは、ちょっと困ってしまいました。しかし、みけにゃんはお構い無しです。
「おい娘、オレはチキンナゲットが大好きだにゃ! 早くよこせにゃ!」
そう言いながら、みけにゃんはぴょんぴょん飛び跳ねて催促しています。仕方ないので、やすなは注意しました。
「みけにゃん! お店の人を困らせちゃ駄目でしょ! おとなしくしなさい!」
結局、みけにゃんは両手いっぱいにチキンナゲットを持って席に着きました。やすなも、ハンバーガーとコーラをトレイに乗せて席に着きます。
楽しく食べようと思った時でした。みけにゃんは、チキンナゲットをいきなり右手で弾き飛ばしました。
かと思うと、左手で上手くキャッチします。
「うにゃ! にゃにゃ!」
そう言いながら、みけにゃんはチキンナゲットを片手で弾いてはキャッチ、片手で弾いてはキャッチをしばらく繰り返しました。
最後は、宙に舞ったチキンナゲットを口でキャッチしたのです。
「にゃはははは! 美味しいにゃ!」
チキンナゲットを美味しそうにむしゃむしゃ食べながら、みけにゃんは笑顔で言いました。
やすなは、思わず苦笑します。猫の姿の時のみけにゃんは、チキンナゲットが大好きでした。でもやすなちゃんは、パパとママに言われていたのです……人間の食べるような味の濃い物を、猫に食べさせてはいけないと。
しかし、やすながチキンナゲットを食べている時には、みけにゃんは物欲しそうな顔で、じっとやすなの口元を見ています。
やすなは仕方なく、チキンナゲットを一個だけあげていました。すると、みけにゃんは、それはそれは美味しそうに食べるのです。
みけにゃんは今までずっと、チキンナゲットをお腹いっぱい食べてみたかったんだろうなあ……やすなは、そう思いました。
そして、幸せそうなみけにゃんの顔を見たら、やすなも幸せな気分になってきました。
「にゃにゃ? やすな、どうしたにゃ?」
ニコニコしているやすなの顔を見て、みけにゃんは尋ねてきました。
「うん、みけにゃんが凄く嬉しそうだったからね。みけにゃんが嬉しいと、わたしも嬉しい気持ちになるよ」
そう答えると、みけにゃんはさらに嬉しそうな表情になりました。
「にゃはははは! やすなが嬉しいと、オレはもっと嬉しいにゃ! やすなが幸せなら、オレはもっと幸せだにゃ!」
「でも、みけにゃん……食べ物で遊んじゃ駄目だよ」
やすなの言葉に、みけにゃんはちょっとだけ悲しそうな表情になります。
「にゃにゃにゃ。オレはこうやって食べるのが好きなのににゃ。でも、やすながそう言うなら仕方ないにゃ」
言いながら、みけにゃんはまたチキンナゲットを口に入れます。
すると、満面の笑みを浮かべました。
「やっぱり、美味しいにゃ! やすなと食べるチキンナゲットは、格別の味だにゃ!」
お店を出た後、やすなとみけにゃんは手を繋いで、仲良く歩いて行きます。
やがて二人は、近所にある真幌公園へと入って行きました。
公園に入っていくと、みけにゃんは目を輝かせます。
「やすな! あそこだにゃ! あそこで、オレとやすなは出会ったにゃ!」
みけにゃんはベンチのそばの植え込みを指さしながら、ぴょんぴょん飛び跳ねています。やすなも当時を思い出し、懐かしい気持ちに襲われました。
「そうだね。みけにゃんてば、ここでみーみー鳴いてたね」
やすなは、とても懐かしくなりました。
「あの時は本当に、寂しくて悲しくて怖かったにゃ。でも、やすながオレを拾ってくれて……オレは凄く嬉しかったにゃ。やすなは、オレの命の恩人だにゃ。オレはいつか、やすなに恩返ししたい……ずっと、そう思ってたにゃ」
植え込みを見ながら、しみじみと語るみけにゃん。やすなは、嬉しくなりました。
「恩返しなんて、いいんだよ。わたしの方こそ、みけにゃんには何度も助けられたし」
「にゃ、にゃんとお! 本当かにゃ!」
みけにゃんは、驚いた顔で聞いてきます。
「本当だよ。みけにゃんが居てくれて、わたし幸せだったよ」
そうなんです。辛い時も悲しい時も、いつもみけにゃんがそばにいてくれました。テストの点が悪かった時も、友だちと喧嘩をした時も、パパやママに叱られた時も、みけにゃんはいつもそばに居て、やすなを慰めてくれていたのです。みけにゃんがそばに居るだけで、とても元気づけられました。
やすなは今まで、みけにゃんにたくさんのものをもらっていたのです。
目には見えない、大切なものを。
「にゃはははは! 嬉しいにゃ! オレはやすなに誉められたにゃ! 嬉しいにゃ!」
みけにゃんは笑顔で叫びながら、ぴょんぴょん飛び跳ねました。挙げ句、木によじ登りました。
ところが、登っている途中で、背中から落っこちてしまいました……。
「みけにゃん! 大丈夫!?」
やすなは、慌てて駆け寄りました。すると、みけにゃんは顔をしかめて起き上がります。
「いててて……爪がないのを忘れてたにゃ……」
大きな鏡の置いてあるお店の前を通りかかった時でした。みけにゃんは、足を止め、まじまじと鏡を見つめます。
「みけにゃん、どうかしたの?」
やすなが尋ねても、みけにゃんは黙ったまま鏡を見つめています。かと思うと、いきなり髪の毛をいじくり始めました。
「ちょっと、みけにゃん。何やってんの?」
「わかってないにゃあ、やすなは。オス猫にとって、毛づくろいは重要な儀式だにゃ。何匹のメス猫が、オレの毛並みを見てときめいていたことか」
そう言うと、みけにゃんは帽子を脱いで地面に置きました。すると、頭に生えている三角の耳が露になります。やすなは、驚いてしまいました。
「みけにゃん、帽子を脱いじゃ駄目だよ」
しかし、みけにゃんは答えません。おもむろにポケットからクシを取り出し、髪の毛をとかし始めました。
大変です。このままでは、みけにゃんは変な生き物として、保健所に連れて行かれるかもしれません。それどころか、宇宙人として怪しげな組織の人たちに捕獲されてしまうかもしれません。
「みけにゃん! 帽子を被りなさい!」
やすなが叱りつけると、みけにゃんはビクリ! として、恐る恐る彼女の顔を見ます。
やすなは出来るだけ怖い顔で、みけにゃんを睨みました。やすなだって、みけにゃんを叱りたくはありません。でも、みけにゃんを酷い目や危険な目に遭わせたくないのです。
「にゃにゃにゃ、わかったにゃ。やすなは、怒ったら怖いにゃよ」
みけにゃんは怯えた表情で、しぶしぶ帽子をかぶりました。やすなと手を繋ぎ、また歩き始めます。
二人で町中を歩いていると、とあるファーストフード店の前を通りかかりました。
すると、みけにゃんが立ち止まったのです。
「何か食べようにゃ!」
そう言うと、みけにゃんはずかずか店内に入って行きました。やすなは、大慌てです。
「ちょっと! みけにゃん! わたし、お金持ってないよ!」
しかし、みけにゃんは自信たっぷりの表情で言いました。
「大丈夫だにゃ! 魔王さまから、お金もらったにゃ! やすな、ここはオレのおごりだにゃ!」
そう言った後、みけにゃんはお店の女の人の方を向きました。
「おい娘! チキンナゲットをいっぱいよこせにゃ! やすな、何でも好きなものを注文しろにゃ!」
「えー……」
やすなは、ちょっと困ってしまいました。しかし、みけにゃんはお構い無しです。
「おい娘、オレはチキンナゲットが大好きだにゃ! 早くよこせにゃ!」
そう言いながら、みけにゃんはぴょんぴょん飛び跳ねて催促しています。仕方ないので、やすなは注意しました。
「みけにゃん! お店の人を困らせちゃ駄目でしょ! おとなしくしなさい!」
結局、みけにゃんは両手いっぱいにチキンナゲットを持って席に着きました。やすなも、ハンバーガーとコーラをトレイに乗せて席に着きます。
楽しく食べようと思った時でした。みけにゃんは、チキンナゲットをいきなり右手で弾き飛ばしました。
かと思うと、左手で上手くキャッチします。
「うにゃ! にゃにゃ!」
そう言いながら、みけにゃんはチキンナゲットを片手で弾いてはキャッチ、片手で弾いてはキャッチをしばらく繰り返しました。
最後は、宙に舞ったチキンナゲットを口でキャッチしたのです。
「にゃはははは! 美味しいにゃ!」
チキンナゲットを美味しそうにむしゃむしゃ食べながら、みけにゃんは笑顔で言いました。
やすなは、思わず苦笑します。猫の姿の時のみけにゃんは、チキンナゲットが大好きでした。でもやすなちゃんは、パパとママに言われていたのです……人間の食べるような味の濃い物を、猫に食べさせてはいけないと。
しかし、やすながチキンナゲットを食べている時には、みけにゃんは物欲しそうな顔で、じっとやすなの口元を見ています。
やすなは仕方なく、チキンナゲットを一個だけあげていました。すると、みけにゃんは、それはそれは美味しそうに食べるのです。
みけにゃんは今までずっと、チキンナゲットをお腹いっぱい食べてみたかったんだろうなあ……やすなは、そう思いました。
そして、幸せそうなみけにゃんの顔を見たら、やすなも幸せな気分になってきました。
「にゃにゃ? やすな、どうしたにゃ?」
ニコニコしているやすなの顔を見て、みけにゃんは尋ねてきました。
「うん、みけにゃんが凄く嬉しそうだったからね。みけにゃんが嬉しいと、わたしも嬉しい気持ちになるよ」
そう答えると、みけにゃんはさらに嬉しそうな表情になりました。
「にゃはははは! やすなが嬉しいと、オレはもっと嬉しいにゃ! やすなが幸せなら、オレはもっと幸せだにゃ!」
「でも、みけにゃん……食べ物で遊んじゃ駄目だよ」
やすなの言葉に、みけにゃんはちょっとだけ悲しそうな表情になります。
「にゃにゃにゃ。オレはこうやって食べるのが好きなのににゃ。でも、やすながそう言うなら仕方ないにゃ」
言いながら、みけにゃんはまたチキンナゲットを口に入れます。
すると、満面の笑みを浮かべました。
「やっぱり、美味しいにゃ! やすなと食べるチキンナゲットは、格別の味だにゃ!」
お店を出た後、やすなとみけにゃんは手を繋いで、仲良く歩いて行きます。
やがて二人は、近所にある真幌公園へと入って行きました。
公園に入っていくと、みけにゃんは目を輝かせます。
「やすな! あそこだにゃ! あそこで、オレとやすなは出会ったにゃ!」
みけにゃんはベンチのそばの植え込みを指さしながら、ぴょんぴょん飛び跳ねています。やすなも当時を思い出し、懐かしい気持ちに襲われました。
「そうだね。みけにゃんてば、ここでみーみー鳴いてたね」
やすなは、とても懐かしくなりました。
「あの時は本当に、寂しくて悲しくて怖かったにゃ。でも、やすながオレを拾ってくれて……オレは凄く嬉しかったにゃ。やすなは、オレの命の恩人だにゃ。オレはいつか、やすなに恩返ししたい……ずっと、そう思ってたにゃ」
植え込みを見ながら、しみじみと語るみけにゃん。やすなは、嬉しくなりました。
「恩返しなんて、いいんだよ。わたしの方こそ、みけにゃんには何度も助けられたし」
「にゃ、にゃんとお! 本当かにゃ!」
みけにゃんは、驚いた顔で聞いてきます。
「本当だよ。みけにゃんが居てくれて、わたし幸せだったよ」
そうなんです。辛い時も悲しい時も、いつもみけにゃんがそばにいてくれました。テストの点が悪かった時も、友だちと喧嘩をした時も、パパやママに叱られた時も、みけにゃんはいつもそばに居て、やすなを慰めてくれていたのです。みけにゃんがそばに居るだけで、とても元気づけられました。
やすなは今まで、みけにゃんにたくさんのものをもらっていたのです。
目には見えない、大切なものを。
「にゃはははは! 嬉しいにゃ! オレはやすなに誉められたにゃ! 嬉しいにゃ!」
みけにゃんは笑顔で叫びながら、ぴょんぴょん飛び跳ねました。挙げ句、木によじ登りました。
ところが、登っている途中で、背中から落っこちてしまいました……。
「みけにゃん! 大丈夫!?」
やすなは、慌てて駆け寄りました。すると、みけにゃんは顔をしかめて起き上がります。
「いててて……爪がないのを忘れてたにゃ……」
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