17 / 37
ボリス編
ミーナ、逃走する
しおりを挟む
その日、奇妙な客が来店した──
扉の開く音を聞き、ボリスは顔を上げる。すると、黒い服を着た男が入って来るのが見えた。すらりとした体型で、目鼻立ちの整った若者である。腰からは、細身の刀剣をぶら下げていた。
この青年が誰なのか、ボリスは知っている。トライブの幹部、ビリーだ。彼は椅子から立ち上がり、軽く会釈した。もっとも、内心では歓迎していない。トライブの人間が店に来るということは、十中八九トラブルの前触れであろう。
「ニコライさんはいますか?」
ビリーは、にこやかな表情で聞いてきた。だが、目は笑っていない。ボリスに対する、恐れと嫌悪の入り混じった感情が目に出ている。ボリスは堅い表情で頷いた。
「奥にいますよ。今、呼んで来ます。少々お待ちください」
しばらくして、店の奥からニコライが現れた。
「ようビリー、何しに来たんだ?」
軽い口調で聞いたが、ビリーはにこりともしない。
「単刀直入に言いますが、このところ我々の縄張りで、首を引きちぎられた死体が見つかりました。それも、立て続けに五人です」
「なるほど、そりゃあ大変ですな」
おどけた口調のニコライに、ビリーは眉をひそめる。
「ええ、本当に大変ですよ。我々にも面子がありますからね。何か、情報はありませんか?」
「いやあ、ないな。だいたい、その話自体が初耳だよ」
「そうですか。では、何か分かったら知らせてください。あと、もうひとつあります。最近、おかしな薬が出回っているんですよ」
「おかしな薬? なんだいそりゃあ?」
首を傾げるニコライを、ビリーは冷たい目で見つめた。
「これなんですが、ちょっと見てもらいたいのです」
そう言うと、ビリーは懐から折りたたまれた小さな紙片を取り出した。ニコライの前で、紙片を開いて見せる。
中には、ひとつまみの白い粉が入っていた。
「これです。キューブと呼ばれているそうですがね、邪眼草とはまた違った効果があるようです。調べておいてください。何か分かったら、僕に教えていただけると助かります」
「いいよ」
ニコライは即答したが、ボリスは渋い表情だ。トライブのために仕事をするのは、気が進まないのだろう。
だが、こちらの事情などお構いなしにビリーは語り続ける。
「最後に、もうひとつだけ。うちにいたアンクルという男が、しばらく前から行方不明になっています。何か、心当たりはありますか?」
ビリーの言葉に、ニコライは肩をすくめた。
「さあ、知らないな。まあ、どうせろくでもない奴なんだろ? 消えたところで、トライブには何の影響もないだろうし」
軽い口調のニコライに、ビリーは眉をひそめる。
「確かに、消えたところで大した影響のない男であることは間違いないです。しかし、アンクルがろくでもない奴だということを、なぜ知っているのです?」
「何となく、そんな気がしてね」
「何となく、ですか」
ビリーは、鋭い視線を向けてきた。だが、ニコライはすました表情で受け止める。ビリーは口元を歪め、言葉を続けた。
「これは、仮の話ですがね……もしも、トライブのメンバーに何かあった場合、我々としても動かざるを得ないのですよ。メンバーが、どんな人間であったとしても。時と場合によっては、相手に僕が制裁を加えることもあります」
言いながら、ビリーは刀の柄を軽く叩いた。
「そうかい、あんたも大変だな。ちなみに、これも仮の話だが……そのメンバーが、年端も行かぬ女の子を犯すクズ野郎だったとしても、やっぱりあんたは動くのか?」
「もちろんです。我々は、トライブなんですよ。トライブのメンバーは皆、血を分けた兄弟であり家族です。あなたは、自分の家族を傷つけられて黙っていられますか?」
静かな口調で語るビリー。その目には、不退転の意思があった。ニコライは目を逸らし、口元を歪める。
「なるほどね。あんたらの事情は分かったよ」
「僕も、アンクルという男の悪評については耳にしていました。個人的には、あんな男のために指一本であろうと動かしたくはありません。しかし、組織の問題となれば話は別です。アンクルの件は、行方不明ということで終わらせます。が、今後また同じようなことが起きたら、僕は……いや、トライブは相手を制裁します。しないといけないのですよ」
言った後、ビリーは軽く会釈した。そして向きを変え、店を出て行った。
ビリーが立ち去った後、ニコライは苦笑しながらボリスの方を向いた。
「やれやれ、もうバレちまったか。まあ、仕方ないけどな。いつかはバレるだろうし」
「やれやれ、なんて言っている場合ですか? このままだと、いずれはトライブとやり合うことになるかもしれませんよ」
「うーん、そうなったら逃げるしかないな。さすがに、奴らを相手にしたくない」
・・・
ジムは怯えていた。
最初のうちは、自らの巨大な力に酔っていた。今まで自分に暴力を振るってきた者たちを、思いのまま蹂躙する……これまで、想像の中だけでしかなしえなかったことを、現実に行っている。ジムは、憎しみのままに相手を叩きのめし、首を引きちぎった。
だが最近になって、おかしな点に気づく。近頃、眠ってもいないのに意識が消えるのだ。
最初は、ほんの数分ほどだった。気がつくと、見覚えのない場所にいる。そこまで、どうやって来たのかわからない。歩いた記憶もない。
いったい、何が起きたのだろう。疑問を感じつつも、さほど気にも留めていなかった。それよりも、手に入れた力を振るうのが先だ。ジムは、あちこちで暴れ回った。
だが、日が経つにつれて、記憶をなくす頻度が増えていく。さらに、時間も長くなっていく。気がつくと日が暮れていたり、とんでもない場所にいたりした。
そして今日、意識が戻った時……目の前で、父と母が倒れていた。
手足が引きちぎれ、首がねじ曲げられた死体となって──
ジムは、ただただ呆然となっていた。彼は今まで、自分をいじめていた少年たちを、片っ端から死体に変えていた。いわば、連続殺人鬼のような存在である。だが、彼の中では違う思いがあった。
これまで殺してきた少年たちは、無抵抗の自分を散々いたぶってきた。だからこそ、その報いを受けた……その思いが、ジムから罪悪感を覆い隠していた。
しかし、両親が死んだとなると話が別だ。両親は、何も悪いことはしていない。それなのに、なぜ死ななくてはならないのか。
いや、それ以前に……。
僕が、やったのか?
彼には、そんなことをした覚えはない。だが、ここ最近は記憶が無くなることが多いのだ。見たこともない場所で、ハッと我に返る……そんなことも、頻繁に起きている。
記憶が失われている空白の時間帯に、両親を殺してしまったのだろうか?
そんな……。
ジムは頭を抱え、その場にしゃがみ込む。
しばらくして、彼は立ち上がった。ふらふらと外に出る。
既に辺りは暗くなっていた。このゴーダムでは、暗くなってから外を出歩いていたら、どのような目に遭わされても文句は言えない。はめている指輪を奪うため、手首を切断するような輩が徘徊しているくらいだ。ジムのような少年がうろうろしていたら、たちどころに殺されて身ぐるみ剥がれてしまう。あるいは、殺されてから食われるか。
それでも、あんな家にはいたくなかった。両親の無惨な死体が転がっているような家には。
夢遊病患者のように、ふらふらとジムは歩き続けた。
いつの間に現れたのか、ジムの背後から二人の男が後を付いていく。どちらも若く、顔は蒼白い。瞳は紅く光っており、口に長く鋭い犬歯が生えていた。
「おい、そこのガキ」
片方の男が、声をかけてきた。だが、ジムは無視して歩き続ける。今や、ジムの体にまではっきりした変化が訪れていた。手のひらに、奇妙な亀裂が生じている。さらに、手の皮膚がぼろぼろ剥がれ落ちていた。
その下からは、黒い地肌が表れている。爬虫類のような皮膚だ。
男たちも、さすがにおかしいと気づいたらしい。顔を見合わせた。
「あいつ、ちょっとおかしくねえか?」
ひとりが囁いた。その直後、ジムは立ち止まる。彼の体に、はっきりとした異変が生じていた。
二人のバンパイア……その目の前で、少年の体は変貌を遂げた──
・・・
「な、なんだよこいつ……」
ミーナは、思わず呟いていた。
先ほどまでは、確かにバンパイアの気を感じていた。だから、その気を辿ってここまで来たのだ。
しかし今、目の前にいるのはバンパイアではない。
身長は、二メートルを軽く超えている。渡し屋のボリスよりも、遥かに大きい。肌は黒く、爬虫類のそれのようだ。手足は異常に長く筋肉質であり、指には鋭い鉤爪が生えている。頭には毛が一本も無く、後頭部が長い異様な形だ。瞳は黒く、大きく裂けた口には鮫のように鋭い牙がびっしり生えている。
その足元には、大量の灰が散らばっていた。どうやら、この怪物がバンパイアを仕留めたらしい
「チッ、面倒そうな奴だね」
ミーナは、短剣を抜いて後ずさっていく。こいつは、かなり手ごわい……彼女のバンパイアの勘が、そう告げている。まともに殺り合ったら、ミーナといえど苦戦するのは間違いないだろう。
それ以前に、バンパイアでもない者との戦いに命を懸ける気はないのだが。
ミーナは、ちらりと横道を見た。奴は、図体はでかい。だが、その図体ゆえに入れる場所は限られている。だからこそ、路地裏に入り込めば逃げられるだろう……確信は持てないが。
突然、不気味な音が響く。目の前にいる怪物が鳴いたのだ。威嚇しているのか、あるいは何かを訴えているのか。どこか悲しげな雰囲気の声だ……。
もっとも、怪物の事情などミーナの知ったことではない。彼女は、怪物めがけ短剣を投げつけた。だが、怪物は簡単に払いのける──
直後、ミーナは横に飛んだ。地面を転がり、横道に入り込み、建物の隙間に身を隠す。姿勢を低くし息を潜め、じっと外の様子を窺う。
しばらくして、ミーナは立ち上がった。どうやら、怪物は去ったらしい。あれは、いったい何だったのだろう。
「全く、なんて日だろうね……」
ミーナは周囲に気を配りながら、慎重にその場を離れた。
扉の開く音を聞き、ボリスは顔を上げる。すると、黒い服を着た男が入って来るのが見えた。すらりとした体型で、目鼻立ちの整った若者である。腰からは、細身の刀剣をぶら下げていた。
この青年が誰なのか、ボリスは知っている。トライブの幹部、ビリーだ。彼は椅子から立ち上がり、軽く会釈した。もっとも、内心では歓迎していない。トライブの人間が店に来るということは、十中八九トラブルの前触れであろう。
「ニコライさんはいますか?」
ビリーは、にこやかな表情で聞いてきた。だが、目は笑っていない。ボリスに対する、恐れと嫌悪の入り混じった感情が目に出ている。ボリスは堅い表情で頷いた。
「奥にいますよ。今、呼んで来ます。少々お待ちください」
しばらくして、店の奥からニコライが現れた。
「ようビリー、何しに来たんだ?」
軽い口調で聞いたが、ビリーはにこりともしない。
「単刀直入に言いますが、このところ我々の縄張りで、首を引きちぎられた死体が見つかりました。それも、立て続けに五人です」
「なるほど、そりゃあ大変ですな」
おどけた口調のニコライに、ビリーは眉をひそめる。
「ええ、本当に大変ですよ。我々にも面子がありますからね。何か、情報はありませんか?」
「いやあ、ないな。だいたい、その話自体が初耳だよ」
「そうですか。では、何か分かったら知らせてください。あと、もうひとつあります。最近、おかしな薬が出回っているんですよ」
「おかしな薬? なんだいそりゃあ?」
首を傾げるニコライを、ビリーは冷たい目で見つめた。
「これなんですが、ちょっと見てもらいたいのです」
そう言うと、ビリーは懐から折りたたまれた小さな紙片を取り出した。ニコライの前で、紙片を開いて見せる。
中には、ひとつまみの白い粉が入っていた。
「これです。キューブと呼ばれているそうですがね、邪眼草とはまた違った効果があるようです。調べておいてください。何か分かったら、僕に教えていただけると助かります」
「いいよ」
ニコライは即答したが、ボリスは渋い表情だ。トライブのために仕事をするのは、気が進まないのだろう。
だが、こちらの事情などお構いなしにビリーは語り続ける。
「最後に、もうひとつだけ。うちにいたアンクルという男が、しばらく前から行方不明になっています。何か、心当たりはありますか?」
ビリーの言葉に、ニコライは肩をすくめた。
「さあ、知らないな。まあ、どうせろくでもない奴なんだろ? 消えたところで、トライブには何の影響もないだろうし」
軽い口調のニコライに、ビリーは眉をひそめる。
「確かに、消えたところで大した影響のない男であることは間違いないです。しかし、アンクルがろくでもない奴だということを、なぜ知っているのです?」
「何となく、そんな気がしてね」
「何となく、ですか」
ビリーは、鋭い視線を向けてきた。だが、ニコライはすました表情で受け止める。ビリーは口元を歪め、言葉を続けた。
「これは、仮の話ですがね……もしも、トライブのメンバーに何かあった場合、我々としても動かざるを得ないのですよ。メンバーが、どんな人間であったとしても。時と場合によっては、相手に僕が制裁を加えることもあります」
言いながら、ビリーは刀の柄を軽く叩いた。
「そうかい、あんたも大変だな。ちなみに、これも仮の話だが……そのメンバーが、年端も行かぬ女の子を犯すクズ野郎だったとしても、やっぱりあんたは動くのか?」
「もちろんです。我々は、トライブなんですよ。トライブのメンバーは皆、血を分けた兄弟であり家族です。あなたは、自分の家族を傷つけられて黙っていられますか?」
静かな口調で語るビリー。その目には、不退転の意思があった。ニコライは目を逸らし、口元を歪める。
「なるほどね。あんたらの事情は分かったよ」
「僕も、アンクルという男の悪評については耳にしていました。個人的には、あんな男のために指一本であろうと動かしたくはありません。しかし、組織の問題となれば話は別です。アンクルの件は、行方不明ということで終わらせます。が、今後また同じようなことが起きたら、僕は……いや、トライブは相手を制裁します。しないといけないのですよ」
言った後、ビリーは軽く会釈した。そして向きを変え、店を出て行った。
ビリーが立ち去った後、ニコライは苦笑しながらボリスの方を向いた。
「やれやれ、もうバレちまったか。まあ、仕方ないけどな。いつかはバレるだろうし」
「やれやれ、なんて言っている場合ですか? このままだと、いずれはトライブとやり合うことになるかもしれませんよ」
「うーん、そうなったら逃げるしかないな。さすがに、奴らを相手にしたくない」
・・・
ジムは怯えていた。
最初のうちは、自らの巨大な力に酔っていた。今まで自分に暴力を振るってきた者たちを、思いのまま蹂躙する……これまで、想像の中だけでしかなしえなかったことを、現実に行っている。ジムは、憎しみのままに相手を叩きのめし、首を引きちぎった。
だが最近になって、おかしな点に気づく。近頃、眠ってもいないのに意識が消えるのだ。
最初は、ほんの数分ほどだった。気がつくと、見覚えのない場所にいる。そこまで、どうやって来たのかわからない。歩いた記憶もない。
いったい、何が起きたのだろう。疑問を感じつつも、さほど気にも留めていなかった。それよりも、手に入れた力を振るうのが先だ。ジムは、あちこちで暴れ回った。
だが、日が経つにつれて、記憶をなくす頻度が増えていく。さらに、時間も長くなっていく。気がつくと日が暮れていたり、とんでもない場所にいたりした。
そして今日、意識が戻った時……目の前で、父と母が倒れていた。
手足が引きちぎれ、首がねじ曲げられた死体となって──
ジムは、ただただ呆然となっていた。彼は今まで、自分をいじめていた少年たちを、片っ端から死体に変えていた。いわば、連続殺人鬼のような存在である。だが、彼の中では違う思いがあった。
これまで殺してきた少年たちは、無抵抗の自分を散々いたぶってきた。だからこそ、その報いを受けた……その思いが、ジムから罪悪感を覆い隠していた。
しかし、両親が死んだとなると話が別だ。両親は、何も悪いことはしていない。それなのに、なぜ死ななくてはならないのか。
いや、それ以前に……。
僕が、やったのか?
彼には、そんなことをした覚えはない。だが、ここ最近は記憶が無くなることが多いのだ。見たこともない場所で、ハッと我に返る……そんなことも、頻繁に起きている。
記憶が失われている空白の時間帯に、両親を殺してしまったのだろうか?
そんな……。
ジムは頭を抱え、その場にしゃがみ込む。
しばらくして、彼は立ち上がった。ふらふらと外に出る。
既に辺りは暗くなっていた。このゴーダムでは、暗くなってから外を出歩いていたら、どのような目に遭わされても文句は言えない。はめている指輪を奪うため、手首を切断するような輩が徘徊しているくらいだ。ジムのような少年がうろうろしていたら、たちどころに殺されて身ぐるみ剥がれてしまう。あるいは、殺されてから食われるか。
それでも、あんな家にはいたくなかった。両親の無惨な死体が転がっているような家には。
夢遊病患者のように、ふらふらとジムは歩き続けた。
いつの間に現れたのか、ジムの背後から二人の男が後を付いていく。どちらも若く、顔は蒼白い。瞳は紅く光っており、口に長く鋭い犬歯が生えていた。
「おい、そこのガキ」
片方の男が、声をかけてきた。だが、ジムは無視して歩き続ける。今や、ジムの体にまではっきりした変化が訪れていた。手のひらに、奇妙な亀裂が生じている。さらに、手の皮膚がぼろぼろ剥がれ落ちていた。
その下からは、黒い地肌が表れている。爬虫類のような皮膚だ。
男たちも、さすがにおかしいと気づいたらしい。顔を見合わせた。
「あいつ、ちょっとおかしくねえか?」
ひとりが囁いた。その直後、ジムは立ち止まる。彼の体に、はっきりとした異変が生じていた。
二人のバンパイア……その目の前で、少年の体は変貌を遂げた──
・・・
「な、なんだよこいつ……」
ミーナは、思わず呟いていた。
先ほどまでは、確かにバンパイアの気を感じていた。だから、その気を辿ってここまで来たのだ。
しかし今、目の前にいるのはバンパイアではない。
身長は、二メートルを軽く超えている。渡し屋のボリスよりも、遥かに大きい。肌は黒く、爬虫類のそれのようだ。手足は異常に長く筋肉質であり、指には鋭い鉤爪が生えている。頭には毛が一本も無く、後頭部が長い異様な形だ。瞳は黒く、大きく裂けた口には鮫のように鋭い牙がびっしり生えている。
その足元には、大量の灰が散らばっていた。どうやら、この怪物がバンパイアを仕留めたらしい
「チッ、面倒そうな奴だね」
ミーナは、短剣を抜いて後ずさっていく。こいつは、かなり手ごわい……彼女のバンパイアの勘が、そう告げている。まともに殺り合ったら、ミーナといえど苦戦するのは間違いないだろう。
それ以前に、バンパイアでもない者との戦いに命を懸ける気はないのだが。
ミーナは、ちらりと横道を見た。奴は、図体はでかい。だが、その図体ゆえに入れる場所は限られている。だからこそ、路地裏に入り込めば逃げられるだろう……確信は持てないが。
突然、不気味な音が響く。目の前にいる怪物が鳴いたのだ。威嚇しているのか、あるいは何かを訴えているのか。どこか悲しげな雰囲気の声だ……。
もっとも、怪物の事情などミーナの知ったことではない。彼女は、怪物めがけ短剣を投げつけた。だが、怪物は簡単に払いのける──
直後、ミーナは横に飛んだ。地面を転がり、横道に入り込み、建物の隙間に身を隠す。姿勢を低くし息を潜め、じっと外の様子を窺う。
しばらくして、ミーナは立ち上がった。どうやら、怪物は去ったらしい。あれは、いったい何だったのだろう。
「全く、なんて日だろうね……」
ミーナは周囲に気を配りながら、慎重にその場を離れた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる