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●どうしてこうなるのかわからない。
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またやらかした! 僕はただ謝ろうと思っただけだったのに、気づいたら何故か兄をベッドに押し倒していた。
兄は困り顔で僕を見上げた。ほの甘い桜色の匂いが濃く香る。僕は花の匂いに誘われた虫のように、兄の首筋に顔を寄せた。
鼻で兄の下顎を押し上げる。無防備に晒された首筋には、僕が咬みついた時の傷が痣となり、まるで一片の小さな花びらが貼り付いているようだった。その赤みを帯びたピンク色に口づけ、舌でなぞる。すると兄は僕の下で身じろぎ、艶めかしい吐息を漏らした。その微かで弱々しい空気の震えは、僕の脳髄をひどく痺れさせた。すぐに首筋をしゃぶるだけでは我慢が出来なくなり、僕は至近距離から兄に懇願した。
「お兄さぁん」
情けない、嗚咽の一歩手前みたいな声が出た。
「なに?」
兄は少し掠れた小声で囁いた。
「僕いま、狂おしいくらいに、お兄さんとしたいです」
切れ長の目が少し見開かれた。薄い唇が言葉を紡ぎだす前に、僕は唇で兄の口を封じた。舌と舌を絡め合う、本気のキス。僕は腕で兄の頭を挟み込み、兄は僕の背中に腕を回した。兄はあの日の夕方のように寝惚けてはいない。僕を誰かと間違えたのではなく、僕を僕と分かっていて、蕩けるような口づけをくれる。何度も何度も顔の角度を変え、より深く交わりたいがためにお互いの舌や歯や顎を邪魔に感じ、一層もどかしさがつのる程に、貪り合った。
息継ぎのために、僕は兄から唇を離した。今回は、兄は僕を突き放さなかった。そのかわり、指先で僕の下唇を拭いながら言った。
「今はダメ」
「えーっ、ダメなんですか今! この流れで!? じゃあ、いつならいいん……ふごっ」
「知玄ィ」
一転して、ヤクザめいたドスの利いた声で兄は凄んだ。
「声がでかい」
僕は口を塞いできた兄の手のひらの下で「すみません!」と口を動かした。実際出た声は、「ふひはへん!」
「それに、雰囲気とかあるじゃん」
「ひははふほひふふふひひふぇふぁふぁひふへふは(今がそういう雰囲気ではないんですか)」
「お前がついさっき自分でぶっ壊したんだろ。つかよぅ、ひとがいいともダメとも言う前に勝手におっ始めようしてんじゃねーよ。こっちはヤる前に色々準備が必要なんだよ」
兄の手が僕の口から離れた。僕は再度叱られないよう、声のボリュームを落として聞いた。
「準備とは」
「シャワー浴びたりとか」
「シャワー!」
僕は笑った。お兄さんったら純情な女の子みたい。好きな人の匂いなんて臭いどころかご褒美なのだから、気にしなくていいんですよ。だが兄が眉間の皺を深くしたので、僕は口を噤んだ。
「ところでお前、コンドーム持ってる?」
「持ってないですね。前の彼女の時に使いきったきりで」
言ってからまた余計な事を言ってしまったと気付く。なんだか、我ながらケチくさい言い種だ。
「それくらい、いざって時の為に持っとけよ」
「はい、すみません」
「しょうがねぇ、兄ちゃんが煙草買うついでに買ってきてやらぁ。サイズは?」
「Lサイズでお願いします」
「オーケー。じゃ、母さんが寝た後、またここに忍んできな」
兄は乱れた衣服を整えると、僕を一瞥し、部屋を出ていった。
兄は困り顔で僕を見上げた。ほの甘い桜色の匂いが濃く香る。僕は花の匂いに誘われた虫のように、兄の首筋に顔を寄せた。
鼻で兄の下顎を押し上げる。無防備に晒された首筋には、僕が咬みついた時の傷が痣となり、まるで一片の小さな花びらが貼り付いているようだった。その赤みを帯びたピンク色に口づけ、舌でなぞる。すると兄は僕の下で身じろぎ、艶めかしい吐息を漏らした。その微かで弱々しい空気の震えは、僕の脳髄をひどく痺れさせた。すぐに首筋をしゃぶるだけでは我慢が出来なくなり、僕は至近距離から兄に懇願した。
「お兄さぁん」
情けない、嗚咽の一歩手前みたいな声が出た。
「なに?」
兄は少し掠れた小声で囁いた。
「僕いま、狂おしいくらいに、お兄さんとしたいです」
切れ長の目が少し見開かれた。薄い唇が言葉を紡ぎだす前に、僕は唇で兄の口を封じた。舌と舌を絡め合う、本気のキス。僕は腕で兄の頭を挟み込み、兄は僕の背中に腕を回した。兄はあの日の夕方のように寝惚けてはいない。僕を誰かと間違えたのではなく、僕を僕と分かっていて、蕩けるような口づけをくれる。何度も何度も顔の角度を変え、より深く交わりたいがためにお互いの舌や歯や顎を邪魔に感じ、一層もどかしさがつのる程に、貪り合った。
息継ぎのために、僕は兄から唇を離した。今回は、兄は僕を突き放さなかった。そのかわり、指先で僕の下唇を拭いながら言った。
「今はダメ」
「えーっ、ダメなんですか今! この流れで!? じゃあ、いつならいいん……ふごっ」
「知玄ィ」
一転して、ヤクザめいたドスの利いた声で兄は凄んだ。
「声がでかい」
僕は口を塞いできた兄の手のひらの下で「すみません!」と口を動かした。実際出た声は、「ふひはへん!」
「それに、雰囲気とかあるじゃん」
「ひははふほひふふふひひふぇふぁふぁひふへふは(今がそういう雰囲気ではないんですか)」
「お前がついさっき自分でぶっ壊したんだろ。つかよぅ、ひとがいいともダメとも言う前に勝手におっ始めようしてんじゃねーよ。こっちはヤる前に色々準備が必要なんだよ」
兄の手が僕の口から離れた。僕は再度叱られないよう、声のボリュームを落として聞いた。
「準備とは」
「シャワー浴びたりとか」
「シャワー!」
僕は笑った。お兄さんったら純情な女の子みたい。好きな人の匂いなんて臭いどころかご褒美なのだから、気にしなくていいんですよ。だが兄が眉間の皺を深くしたので、僕は口を噤んだ。
「ところでお前、コンドーム持ってる?」
「持ってないですね。前の彼女の時に使いきったきりで」
言ってからまた余計な事を言ってしまったと気付く。なんだか、我ながらケチくさい言い種だ。
「それくらい、いざって時の為に持っとけよ」
「はい、すみません」
「しょうがねぇ、兄ちゃんが煙草買うついでに買ってきてやらぁ。サイズは?」
「Lサイズでお願いします」
「オーケー。じゃ、母さんが寝た後、またここに忍んできな」
兄は乱れた衣服を整えると、僕を一瞥し、部屋を出ていった。
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