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◯まるで子供の悪戯のように。
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漫画一冊読み終わらした丁度そのときに、知玄はやってきた。
「お邪魔しますー」
ドッキリ番組のレポーターみたいなひそひそ声で言い、ドアの隙間から滑り込んできた。
「ちゃんと細工はしてきたか?」
「バッチリですよ」
知玄は親指を立てた。知玄の部屋の方から、ロックの重低音が聴こえてくる。俺が部屋にこもって「また何かやってる」だけならお袋は気にも留めないが、知玄が部屋にいないとなれば大騒ぎだ。だから部屋にいる風に装えと、知玄に予め言い含めておいたんだ。
知玄は寒そうに自分で自分の二の腕を擦った。
「来な」
俺は被っていた毛布を少し上げ、知玄を招き入れた。二人で頭まですっぽり被った毛布の下、知玄は喋り出した。
「この部屋、エアコン利かせ過ぎじゃないですか?」
「いいんだよ。暖かい季節だからこそ、わざと部屋の気温下げて、布団被って寝んの」
「贅沢ですねぇ」
くっくっと知玄の喉が鳴る。
「この毛布いいな、肌触りが良いし、お兄さんの匂いがいっぱいします」
「いいだろ。そのまま朝まで眠っててもいいよ」
「それは嫌です」
不意打ちで脇を擽ってやると、知玄は女の子みたいにキャッと言って身をよじった。そして仕返しとばかりに俺の横っ腹を擽ろうとする。毛布の下で互いに手や足でつつき合う。親に内緒で夜更ししているガキのテンションで、笑いを噛み殺しつつじゃれ合う。子供のおふざけと違うのは、やがて始まるのは本気の喧嘩ではなく本気の愛撫ってことだ。
毛布の中に熱と湿気が籠る。俺達は薄く汗ばみながら、触り合った。蒸し暑さに我慢できなくなると、胸の辺りまで毛布を剥いだ。
俺は知玄の顔にかかる猫っ毛を手櫛でかき上げた。鼻筋と鼻筋を擦り合わせ、キスをする。
知玄のキスはこなれているのに、地味にヘタクソ。だが下手さが気にならないくらい、興奮は最高潮に達していて、夢中で貪り合う。唇が離れると、知玄は俺を仰向けに転がし、のしかかってきた。
「本当にいいんですよね?」
知玄は今にも泣き出しそうな顔だ。
「おう。ただし、約束はちゃんと守れよ」
「はい」
約束は、大声を出さないこと、俺が嫌がることをしないこと、そして絶対に口外しないこと。
「ほんとに守れる?」
「守れます」
知玄は真剣な顔で断言した。
これ、本当なら兄ちゃんである俺が止めないといけないやつ。カエル事件の教訓を活かせてねぇ、と、霞がかった頭で考える。
まだ小学校に上がる前だ。おたまじゃくしを獲ってきて知玄に見せた。俺は観察したらすぐ田んぼに帰すつもりだった。でも知玄が飼いたいって駄々をこねたから、水槽を作ってやった。そしたら数週間後、おたまじゃくしがカエルになって大脱走。俺達は親父にすげー怒られた。知玄がぴーぴー泣いて可哀想だった。その一件で思った。弟の我儘は聞くもんじゃないって。
知玄が後ろから、俺の手首を強く引っ張る。シーツに俯した身体が持ち上がり、結合が深くなる。
「……っ!」
「ごめんなさい、痛かったですか?」
口では労るようなことを言いながら、知玄は容赦なく腰を打ちつける。意識が飛びそう。でも俺がしっかりしないと。これ以上過ちを重ねないように。
「お邪魔しますー」
ドッキリ番組のレポーターみたいなひそひそ声で言い、ドアの隙間から滑り込んできた。
「ちゃんと細工はしてきたか?」
「バッチリですよ」
知玄は親指を立てた。知玄の部屋の方から、ロックの重低音が聴こえてくる。俺が部屋にこもって「また何かやってる」だけならお袋は気にも留めないが、知玄が部屋にいないとなれば大騒ぎだ。だから部屋にいる風に装えと、知玄に予め言い含めておいたんだ。
知玄は寒そうに自分で自分の二の腕を擦った。
「来な」
俺は被っていた毛布を少し上げ、知玄を招き入れた。二人で頭まですっぽり被った毛布の下、知玄は喋り出した。
「この部屋、エアコン利かせ過ぎじゃないですか?」
「いいんだよ。暖かい季節だからこそ、わざと部屋の気温下げて、布団被って寝んの」
「贅沢ですねぇ」
くっくっと知玄の喉が鳴る。
「この毛布いいな、肌触りが良いし、お兄さんの匂いがいっぱいします」
「いいだろ。そのまま朝まで眠っててもいいよ」
「それは嫌です」
不意打ちで脇を擽ってやると、知玄は女の子みたいにキャッと言って身をよじった。そして仕返しとばかりに俺の横っ腹を擽ろうとする。毛布の下で互いに手や足でつつき合う。親に内緒で夜更ししているガキのテンションで、笑いを噛み殺しつつじゃれ合う。子供のおふざけと違うのは、やがて始まるのは本気の喧嘩ではなく本気の愛撫ってことだ。
毛布の中に熱と湿気が籠る。俺達は薄く汗ばみながら、触り合った。蒸し暑さに我慢できなくなると、胸の辺りまで毛布を剥いだ。
俺は知玄の顔にかかる猫っ毛を手櫛でかき上げた。鼻筋と鼻筋を擦り合わせ、キスをする。
知玄のキスはこなれているのに、地味にヘタクソ。だが下手さが気にならないくらい、興奮は最高潮に達していて、夢中で貪り合う。唇が離れると、知玄は俺を仰向けに転がし、のしかかってきた。
「本当にいいんですよね?」
知玄は今にも泣き出しそうな顔だ。
「おう。ただし、約束はちゃんと守れよ」
「はい」
約束は、大声を出さないこと、俺が嫌がることをしないこと、そして絶対に口外しないこと。
「ほんとに守れる?」
「守れます」
知玄は真剣な顔で断言した。
これ、本当なら兄ちゃんである俺が止めないといけないやつ。カエル事件の教訓を活かせてねぇ、と、霞がかった頭で考える。
まだ小学校に上がる前だ。おたまじゃくしを獲ってきて知玄に見せた。俺は観察したらすぐ田んぼに帰すつもりだった。でも知玄が飼いたいって駄々をこねたから、水槽を作ってやった。そしたら数週間後、おたまじゃくしがカエルになって大脱走。俺達は親父にすげー怒られた。知玄がぴーぴー泣いて可哀想だった。その一件で思った。弟の我儘は聞くもんじゃないって。
知玄が後ろから、俺の手首を強く引っ張る。シーツに俯した身体が持ち上がり、結合が深くなる。
「……っ!」
「ごめんなさい、痛かったですか?」
口では労るようなことを言いながら、知玄は容赦なく腰を打ちつける。意識が飛びそう。でも俺がしっかりしないと。これ以上過ちを重ねないように。
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