兄がΩ 〜うっかり兄弟で番いましたが、今日も楽しく暮らしています。〜

文字の大きさ
20 / 86

◯何でこんなところに?

しおりを挟む
「何でこんな所に寝てんの?」
「テスト勉強で疲れてんじゃね」
「だからってさぁ……」
 お袋は呆れ顔だ。
 知玄とものりにはしばらく狸寝入りしてろと言ってある 。俺はさっさと作業着に着替えた。大丈夫、自然体にしてれば、兄弟でナニしてたなんてバレやしない。
「そういや、親父は帰って来たん?」
「四時頃にね!」
 しょうがねぇジジイだな。お袋が愛想尽かさないのをいいことに、やりたい放題だ。お袋はもう、それが男の本能だと思って諦めている。
 男は女が逃げれば追うもんだが、女が逃げないと知るや、調子に乗ってふらふらと遊び歩く。それはΩに対するαも同じ。その本能は、俺には役に立つ。俺が素直に相手してやれば、いずれ知玄は自然に俺のもとを去るだろう。

「くそだりぃ……」
 夏祭り本番まで、毎晩お囃子の稽古だ。ちょっと脱け出して公民館の裏手にまわり、うんこ座りで煙草をふかしていたら、
 ドンッ! ドンッ! でしっ!
「おおぅ」
 背中にどっしりとしたつきたてのお餅みたいなものが次々乗っかってきた。
「アキちゃんみーっけ」
「なんだよ。煙草吸ってんのに、危ねぇだろ」
 背中にお餅を乗せたまま、ゆっくりと前屈みになって地面に煙草の先を押し付ける。お餅が二匹、背中から降りて、俺の目の前に立ちふさがる。もう一匹はまだ乗っている。ふかふかのお腹が密着して暑苦しい。お囃子のガキどもの妹達。退屈しきって俺に絡んできた。親達は気にも留めず、井戸端会議中。
「またサボってる。先生に言うよ」
 お餅1が俺をビシッと指差した。
「吸殻はちゃんとゴミ箱に捨ててよね」
 お餅2も負けず劣らずキツい。姉妹ではないのによく似ている。どうしてこう、物怖じしない女子って、見た目が似たり寄ったりなんだ。小さくて丸い目に小さくて丸い鼻、でも鼻の穴はでかい。全体的にお餅、みたいな。
「アキちゃん、ほらお囃子の練習! 行こっ!」
「そんなぐいぐい引っ張んな」
 お餅3はテコでも降りない。しょうがねぇから、俺はおぶったまま立ち上がった。表に出ると、誰かがヒューヒューと口笛を鳴らす。
「あらぁー、アキちゃん、モテモテじゃなぁい?」
「いよっ色男っ」
「うるせえ殺すぞ」
 俺が呻ると、お餅1が俺のズボンを引いた。
「殺すなんて言ったらダメなんだよ」
 はい、すんません。
 その時、突然お餅3が急に背中で暴れ出し、俺がしゃがむのを待たずに飛び降りて駆け出した。
「アカネちゃーん」
 お餅2も後を追った。茜が来たからだ。チビ達はお姉さんがいれば、野郎よりもそっちの方が良いらしい。
 茜は何故か稽古初日の顔合わせの時から、しれっと末席に着いていた。大学の研究レポートのためだとか、なんだとか。この祭、女人禁制なんだけど。
「おはようございます、知白ともあきさん」
 夜なのに「おはよう」って、業界人か。
「ん、どーも」
 確かに、俺ら若衆は目上を下の名前にさん付けで呼ぶけれども、女子がそれをやると謎の深みが出るので、ちょっとやめて欲しいかな。
 茜がチビ達を連れて行った後、お餅その1がまだ残っていた。
「お前も行けよ」
 だがお餅1は、俺の右腕を抱え込んで離さない。
「やだっ、うちはアキがいい」
 呼び捨てかよ。それもやめろ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

夫婦喧嘩したのでダンジョンで生活してみたら思いの外快適だった

ミクリ21 (新)
BL
夫婦喧嘩したアデルは脱走した。 そして、連れ戻されたくないからダンジョン暮らしすることに決めた。 旦那ラグナーと義両親はアデルを探すが当然みつからず、実はアデルが神子という神託があってラグナー達はざまぁされることになる。 アデルはダンジョンで、たまに会う黒いローブ姿の男と惹かれ合う。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

処理中です...