兄がΩ 〜うっかり兄弟で番いましたが、今日も楽しく暮らしています。〜

文字の大きさ
60 / 86

○頼りになる人。

しおりを挟む
「もしかして、お兄さんがよく僕に言う番って、そういう意味なんですか?」
 知玄とものりィ!? びっくりし過ぎて言葉が出ねぇ。犬達にかまけて、すっかり油断してた。
「お兄さん、僕、なんか変なこと言いました?」
 いやお前、間違ってねえよ。そうだよ、俺がΩでお前がαで、俺らは去年の春、実の兄弟同士なのに、うっかり番になっちゃったんだよ。なんて説明出来る心境ではなく、俺は震える唇を無理と動かし、やっとのことで言葉を搾り出した。
「いや、言ってねぇけど……」
 すると知玄はホッとした様子で「なんだぁ」と言った。
「やっぱりお兄さん、僕達のことをαとΩの番みたいに特別な関係だって言ってくれてたんですね! うふふ、なんか嬉しいなぁー」
 冗談だろ。そこまで解っといて、まさにお前がαで俺がΩだってことに、気付いてねえのかよ。マジかぁー。でもいいか。気付かないなら気付かないで。知玄には一生、教える気はねぇし。
 真実を話したところで、知玄は困惑するだけだ。何しろ俺だって、自分が抱えている問題を一人で何とか出来るとは思っていない。誰かの助けが必要だ。だが、それは知玄じゃない。
 ここしばらく考えた末、俺は思った。頼りになる人……それは親父だ。他に考えられない。これまでずっと反発してきた身で、今更頼るとか甘えるとか、どの面さげてと自分でも思う。だが、親父だったら、俺がちゃんと話せばきっと駄目だとは言わないはずだ。俺の意地やプライド……そんなものよりも大事な、守らなければならない者の為に、恥なんかかなぐり捨てて、頭を下げるしかない。
 だがもし、俺が知らないだけで、親父にΩに対する悪感情があったら?
 その時はその時と、腹を括るしかないのか。
 急に北風が冷たい。犬達は充分歩いたし、二匹ともちゃんとウンコした。さて、そろそろぇるか。

 帰ったら事務所に誓二せいじさんがいて、親父と話していた。なんか嫌な予感がする。俺が事務所に入ると、親父は便所だといって入れ替りに出ていった。
「よぅ、アキ」
 誓二さんはソファから立ち、両手を広げて俺に近付いてきた。後退った俺の肩に、誓二さんは素早く腕を回す。
「何しに来たの」
 誓二さんは俺の質問には答えずに、耳許に囁いた。
「急ぎで引っ越しの手配を済ませた。一緒に暮らそう」
 俺は誓二さんの腕を振りほどいた。
「まさか、俺がΩだって、親父にバラしてないよな?」
「これから言うところだった。本家の養父じいさんにはもう話したよ。元々、俺に跡目を継がせる気だったから良いってさ。アキが俺の子を産んでくれれば、井田の血筋も絶えないし」
 カッとなって気が付いたらブッ飛ばしていたし、俺を見上げてくる顔に更にムカついて鳩尾に足をめり込ませていた。喚き散らす俺を、親父と知玄が二人がかりで取り押さえた。
 親父からの平手打ちを一発食らった後、俺は知玄の手で事務所から土間に引きずり出された。親父は誓二さんの方に向かった。
 結局、誓二さんは親父に何も話さなかったらしい。
 俺は夕飯も食わず、薬を飲んで、さっさと布団に潜り込んだ。単純に眠いし、暴れ疲れた。知玄は来ない。もう二度と、俺の隣には来ないかも。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

ちっちゃいもふもふアルファですけど、おっきな彼が大好きで

Q矢(Q.➽)
BL
僕、吉田 嵐太はレッサーパンダの獣人である。 しかもアルファの勝ち組だ! どんな女の子やオメガだって、僕の前ではめろめろだ!! そんな僕がある日、におい惚れした相手とは…。 ※本作品は獣人DKカップルのゆるラブオメガバースです。大学生になる終盤まで本格的なえちちシーンは出てきません。 *吉田 嵐太 (‪α‬) 私立 岩清水男子高等学校1年 Sクラス 獣種 レッサーパンダ 160/50→?? ★さりげなく自己評価が高い傾向あり。 *壱与 瑞希 (ハイスペチートΩ) 私立 岩清水男子高等学校1年 Cクラス 獣種 グリズリー(ハイイログマ) 189/72 →192/74 ★嵐太に盲目、育てたい俺のアルファ。 ★前提 *純人類と動物の特性を持つ人類が混雑する世界。 *そのうえでオメガバースという‪α‬、 β、Ωという性別に別れています。 ※オメガバース独自設定含みます。 ※スローでゆっくり成長していくレッサー吉田とグリ壱与の恋を、基本ゆるく、時にはヤキモキしながら見守ってくだされば幸いです。 ※11/30、本編完結。 多くの皆様にご覧いただき感謝に堪えません。最後まで楽しく書けましたのは皆様のお陰です。 嵐太と瑞希を愛して下さって本当にありがとうございました。 近々、卒業後の2人の生活を描いた短いお話を書きたいと思っております。 本当にありがとうございました(*^^*)

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?

モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。 平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。 ムーンライトノベルズにも掲載しております。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

処理中です...