世界最強は元落ちこぼれ

かたは

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旅立ち編

エレナの気持ち

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村でもしばらく過ごし、またアトラ達はイスト王国を目指し出発して三週間がたった。

その間にアトラは少しずつ力をつけて、とうとうエレナ相手に勝ち越せるようになっていた。エレナは、アトラに負ける度に悔しそうにまた、悲しそうにしていた。

そして夜中にトイレで起きたアトラは1人暗闇の中に歩いて行くエレナを見かけた。
(こんな時間にどうしたんだろう?)
そう思っているとエレナは暗闇の中森に入って行った。
エレナを尾行していると、エレナは暗闇で視界がままならない状態で魔物と戦っていた。

(なんて無茶を!視界が不安定な状態で魔物と戦うなんて)

すると、エレナがダークウルフの攻撃を受け地面に倒れこんだ。

(ヤバイ、助けなきゃ)そうして、アトラはエレナの加勢をしてなんとかダークウルフを退くことができた。

「なんて無茶な事をするんだ。夜中に1人で森に入って、魔物とまで戦うなんて死にたいのか」

アトラはかなりの声で怒鳴った。すると、、、

「わか・な・くせ・」

「えっ」

「私の気持ちなんてわからないくせに」
エレナが声を荒げるとは思っていなかったアトラは驚いていた。

「私は小さい頃に、勇者の物語や英雄譚に憧れた。でも、現実はそんなに甘くはない。英雄譚に出てくる主人公は必ず男の子、物語での女の子は常にかよわいイメージでいつも勇者に助けられている。なんで?、女の子だってやれば出来る。なんで弱いって決めつけるの?。だから私は、女性初の剣聖になるんだ。でも、貴方に、たった4週間で追い抜かされた。私の惨めな気持ちなんてわかるの?」

そう言ったエレナは泣いていた。

「エレナ、僕も勇者や英雄ではないよ」
優しく言った。そして続けてまた、アトラは口を開いた。

「エレナ、全て自分の思った通りになんかはならない。僕もそうだ。僕はね、家族に捨てられたんだ。」

エレナは少し驚きこちらを見ている。

「僕はもう、あの家には戻れない。でも、エレナは違うだろ。剣聖になれないなんて、まだ決まってない。だから、こんな形で命を軽く見ないでほしい」

「アトラは、私が剣聖になるのは、おかしいと思わないの?」
(私の周りにいた、女の子はいつも、物語のお姫様に憧れていて勇者になりたいと思うのは変って言う人ばかりだったのに)

「思わない。エレナ僕はね、村に滞在していた時に1人で特訓している姿を見て綺麗だし凄いと思った。エレナが物語の勇者や英雄譚に憧れてたように僕もエレナに憧れている。だから、死なないでね」

「うぇ~~~~」
そう言いながらエレナはアトラの胸の中で泣いていた。
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