異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫

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73.グサーノの倒し方を聞く(5月21日)

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さて、馬車の荷台に揺られながら状況を整理するとしよう。

今向かっている先は、アルカンダラから徒歩で1日半の距離にあるイリョラ村だ。
イリョラ村に着いたら、村長のホアキンまたは運び屋のナタリオを訪ねる事が第一目標だ。

イリョラ村の手前に位置するリナレスの街で入手した情報によれば、地中に潜むムカデ或いはゴカイのような魔物であるグサーノは、石のように硬い物であれば防ぐことが出来るらしい。
グサーノがどのように地中を進んでいるのかは不明だが、シオヤアブの化け物と思われるモスカスがグサーノを誘き出して狩ろうとした時の状況から考えると、ミミズのように地中の隙間を縫っているわけではなく、何らかの魔法のような現象で前方の土を後方に流しているか、或いは土そのものを呑み込んでいるように思える。

では、そのグサーノからどのように身を守りながら戦うか。

荷台上では当然その話題となった。


「だから!石みたいに硬ければ平気なんでしょ?だったらアリシアちゃんの防壁魔法で、みんなの靴をカッチカチにしちゃえばいいじゃん!」

「お前、モスカスの前に躍り出たグサーノを見てなかったのか!?靴だけ硬くても頭の先から襲い掛かられたらどうするよ!?」

「そん時はスッと逃げる!」

「そう簡単にいくかなあ。それよりもカズヤさんの結界をすごく密に張ったら?結界の上は見えない床の上を歩いているみたいな感じだったし、やみくもに歩いてスッと逃げるよりはいいと思うけどなあ。カズヤさんどう思いますか?」

「それよりも、実際にこの地に住んでいる人の意見を聞こう。ティオ殿はグサーノを見た事がありますか?」

「ティオって呼び捨てで構わないぜ?見たところイトー君って歳も同じぐらいだろ?」

御者台で手綱を握るティオが振り向いてニヤッと笑いながら言う。確かにアリシア達よりも少し年上に見えるから、俺の見た目年齢とは同世代なのだろう。

「じゃあお言葉に甘えて。それで、グサーノと出くわした事は?他の狩人がどうやって狩っているか知らないか?」

「そりゃこの辺りは庭みたいなもんだからな。ガキの頃から遊び回ってりゃ、いろんな魔物にも出くわす。ほら、あそこに土が少し盛り上がった所があるだろ。ありゃグサーノが顔を出した跡なんだぜ」

ティオが指差す先には、森の木々の間にポツポツとある土盛りが見える。一見すると大きなモグラ塚のようだ。

「あそこからグサーノがニョキっと出てくるんですか?」

アリシアが荷台から御者台に身を乗り出すようにして、ティオの指差す方を見る。

「あ、ああ。そりゃもうニョキっと」

ティオ……なんか顔が赤いのは何故だ。

「でも、昨日見たグサーノよりも小さそうじゃない?昨日ってもっと大きな盛り上がりが出来てたよね」

「グサーノって言っても、大きさはバラバラなんだよ。森に出る奴らはだいたい2メートルぐらい。もっと大きいのは草地に住んでるんだ。草地で出くわすグサーノは怖えぞ。あのでっかい牙で噛み付かれたら、人間の胴なんて真っ二つだからな!」

「そうなんだ!昨日見たグサーノも、あっという間に馬を土の中に引きずり込んでったよね」

「ああ。一瞬だったけど、あの光景は忘れられそうにない」

「そんなグサーノをどうやって倒したらいいんでしょう。ティオさんいい方法ご存知ありませんか?」

「知ってるぜ!カサドールの親方達は槍を投げて倒してたな!あとは太い矢を何本も撃ち込んで、土の中に潜れなくしてから、でっかい剣でトドメを刺すんだ」

ティオがオーバーアクションで解説してくれる。

「グサーノの胴体には、投槍とか太い矢が刺さるって事ですか?だったらイザベルちゃんの矢でも刺さるんじゃないかな」

「イザベルってその白い髪の子?そんな細腕でも引ける弓で放つ矢なんか、跳ね返されっちまうんじゃないか?」

「失礼ね!じゃあどんな弓だったらいいって言うのよ!」

「そりゃあれだよ。街の衛兵隊が使ってるでっかい弓、名前なんつったっけ?車輪が付いたやつ!」

「バリスタの事か?」

「そうそれ!バリスタだ!あれを馬車に載っけて使うんだ!」

バリスタにそんな運用方法があったか。
さしずめ移動砲台のようなものだろう。

「だがバリスタは連射できないだろう?外したらどうする。奴らは地に潜って地下から一気に襲いかかってくるんじゃないのか?」

「その隙間を埋めるのが投槍なんだよ!それにバリスタを載せた馬車は1台だけじゃないんだぜ。俺が聞いた中で1番多いのは、バリスタ4基に投槍装備のカサドールが10人でグサーノを狩ったって話だ」

ちょっと待て。
バリスタを運用するだけでも、装填手と射撃手、左右に動かすための兵士が2人に御者が1人。1基につき合計5人は必要だ。それが4基と投擲手10名。総勢30人で挑んだという事か。さらに指揮官や近接戦闘を行う者、後詰の魔法師や魔導師を合わせれば、50人ほどのパーティードになったはずだ。
それだけの人数を掛けねばならない魔物だとすれば、先行した先輩狩人達は大丈夫なのだろうか。

「そん時のパーティードが余りにも強過ぎて、ここいらの魔物が駆逐されたって話だからな。俺も見てみたかったぜ!」

ティオはまるで見てきたかのように話しているが、結局は伝聞だ。話には尾鰭も背鰭もついているはずだ。
だがそれでも、グサーノが巨大で強大な魔物であるという事に変わりはない。

今までのティオの話をまとめると、やはりアウトレンジからの一撃で仕留めるしかグサーノを倒す方法はなさそうだ。
奴の身体に槍や矢が刺さるのであれば、貫通魔法を付与したAT弾でも効果があるだろう。
欲を言えば、貫通痕の内部から破壊できるような魔法が付与できればなお良い。

「ティオ。グサーノはどれぐらいの速さで移動できる?」

「おっと……イトー君は難しい事を聞くなあ。ガキの頃に追い掛けられたことがあるけど、そん時も余裕で逃げられたぜ!だから大人が歩くぐらいの速さだと思う!」

これは有益な情報だ。
ミミズは自分の体長と同じ長さをだいたい1分で移動できるらしい。グサーノの体長が2メートルから4メートルだとして、ミミズのように体を伸縮させて地中を進んでいるのならば、ティオの言う“大人が歩くぐらいの速さ”にも納得できる。

「でも、自分が通ってきた穴に引っ込む時の速さは凄えぞ!もう一瞬だよ一瞬!」

それはモスカスが誘き出したグサーノで目撃済みだ。一瞬というのは大袈裟だが、確かに穴に吸い込まれるように戻っていった。

つまりグサーノ狩りは盛大なモグラ叩きだと思えばいいのか。
開けた土地に上手く誘き出す事ができれば、遠距離狙撃で片が付くかもしれない。
例えば高い木や岩、建物の上からG36VかPSG-1で狙撃する。狙撃手は俺とアリシア、観測手スポッターとしてアイダとイザベル。理想的には直掩と全体の管制役が必要だが、狙撃をアリシアに任せて俺が直掩に付いてもいい。
何にせよ見通しの良くない森の中で戦うのは、余りにもリスクが高すぎる。地中をゆっくり移動して、突然背後から襲い掛かられたり足元の土ごと飲み込まれたりしたら、対応できそうにない。

◇◇◇

グサーノについての質問がひととおり終わると、今度はティオが娘達の話を聞きたがった。
海を見た事が無いらしいティオは、特にサメの魔物ティボラーンに興味深々のようで、馬の手綱を取りながらもイザベルと話し込んでいる。

「海用の船って、アルカンダラで見る船よりデカいんだろ?その船よりでっかい魔物がいるって言うの?」

「そそ!歯なんてこーんなに大きくて、人間ぐらい一呑みにしちゃうんだから!それが3頭、代わる代わる襲ってきたの」

「それで!?どうなったんだよ!?」

「そんなん、私達がやっつけたに決まってるじゃん!だからアンタとも話出来てるんでしょ!?」

「だから!どうやってだよ!?そんな強そうな魔物、お前達だけで倒せるわけないだろ!?」

ティオの言うとおりだ。
屈強な4人組とでも言うならともかく、俺も含めた4人でデカい魔物を狩ったなんて言っても、誰も信用しないだろう。

「ふっふっふ。これだから素人さんは!カサドールの実力は見た目じゃ……」

イザベルが荷台上で膝立ちしたままの角度で、斜め上方の空を見上げて固まる。

「イザベル?どうした?」

イザベルが見つめている空を、俺とアリシア、アイダも見る

「お兄ちゃん、あっちの空に煙が見えた!」

「煙?どこに??」

「今は木の影になってて見えないかも。ティオさんあっちに何かある?」

イザベルが指さす方向を目で追ったティオが唸る。

「あっちって……今向かってるイリョラ村の方だぞ!」
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