5 / 46
いざ安住の地へ
<フィン> 王族の食事会
しおりを挟む
僕はフィン。
フィン・クロード。
この国の王子だ。
……ん?なにかあった?
あぁ家さんと話したことね。
さすがにいきなり王子だとは言えなかったよ。
というか、フィンという名前では気付かれないのかな?
王子の名前くらい……絶賛後継者争い中の王子の名前くらい、誰でも知っているものと思ったけど。
家さんだし、興味なさそうだね。
面白い家だったなぁ。
あんな家を見繕ってくれた商人さんに感謝だね。
……あれ?なんでそもそも内見に行ったんだっけ?
そんなことを考えながら僕はお城に帰る。
今日は食事会があるから時間までに戻れてよかった。
この国、クロード王国はエルゼルド大陸の南部にある人間が治める国だ。
この大陸は獣人が多いが、僕たちはその昔オルハレスト大陸から海を渡ってやってきた人間の子孫だ。
古代神シルヴァリウス様が庇護するエルゼルド大陸には様々な種族が暮らしている。
シルヴァリウス様が生み出した獣人、他の大陸から渡ってきた人、妖精、魔族、さまざまだ。
国が1つしかないオルハレスト大陸と違って、この大陸にはいろんな国があるけど、今は割と平和だ。
長らく戦争は聞かない。
だからこそ内部で争ってしまうんだけどね。
僕の家族も……。
「おや、今日は欠席するのかと思っていました」
僕の方を見ながら感じ悪い薄ら笑いを浮かべているのは第2妃のイザベラ。
こいつ……。
「昼間に街へ出かけておりましたが、ちゃんと戻っておりましたので」
冷静に、冷静に。
「家を買ったそうですね」
「……はい」
どこでそれを?
いや、手先を仕向けてきたんだから知ってるか。
家さんには違うかもと言ったが、そんなことはない。間違いなくこの人たちが僕に暗殺者を仕向けている。
「家を買ったのか?」
「はい、父上。庶民の暮らしぶりをみるために、一般の商人の紹介で購入しました」
「よい心がけだ。して、どうだった?」
ここで襲われました、と言ったら父はどういうだろうか?
危ないと言ってくれるのか、撃退したことを褒めるのか、それとも僕の恐れを咎めるのか?
「平民街だと?良い心がけじゃないか。いや、平民にまで落ちる準備をする必要はないのではないか?あっはっは」
「ダリアン」
思いっきりバカにしてくる弟と一応咎めるイザベラ。
「ダリアンよ。我々は王族だが、国が存在するのは民のおかげなのだ。民なきところに国はない。平民街をバカにするのはよしなさい」
「はい、すみません、父上」
父上に怒られながらも、ものすごい睨んでくるダリアン……。
絶対反省してない。
「フィンよ。せっかく平民街に拠点を作ったのなら定期的に様子を報告するように。生活もするなら市場も含めて気になることがあれば教えてくれ」
「かしこまりました、父上」
なにを報告すればいいんだろう。
あとで誰かと相談しよう。
「それでは食事にしよう。我が国の繁栄を願って"乾杯"」
「「乾杯!」」
今日は王族の食事会だ。
月に1度、王城で開催されるこの会のことが僕は苦手だ。
なにせ第2妃のイザベラや弟ダリアンと顔を合わせないといけない。
兄上は不在で正妃様は無口だし、第3妃も母上も妹たちもあまり会話しない。
父上はどう考えているのだろうか?
顔を合わせることで王族の関係に完全に亀裂が入るのを避けようという目論見なんだと思うんだけど。
食事の味はしない。
食事会が終わると皆すごすごと自室に戻る。
僕は母上について一緒に部屋を出る。
「フィン、平民街はあぶなくないかしら?」
「大丈夫ですよ、母上。詳しくは話せませんが、とても楽しかったです」
家さんのことを話したくなるが、理解してもらえないだろうな。
「フィン、ミカエル様が病気に臥せっているため、あなたは有力な王位継承者の候補の1人です。そのことを忘れぬよう」
「もちろんです、母上。私が平民街に拠点を作ったと聞いて、イザベラ様は訝しんでいるでしょう」
「目的がある、ということですか?」
「もちろんです」
どちらかというと穏便にこの承継を終わらしたいだけなんだけどな。
父上が早くダリアンに継承すると言ってくれれば終わるのに。
「あなたに考えがあるなら止めはしません。あなたは賢い子です。今すべきことをしなさい」
「はい、母上」
そう言って僕は母上と別れて自室に戻る。
それにしても不思議な家さんだったな。
そういえば商人さんが昔はたくさん作られたって言ってたっけ。
あんな家が並んでいたら楽しそう……いや、怖いかな。
昔はあんなに強い家が並んでいたのかな?
どんな世界だったんだろう。
ステータスはすさまじかった。
僕とはえらい違いだ。
でも、楽しかったな。
あんなに気楽にしゃべったのは初めてだ。
また明日……は、予定があるから明後日行こう。
フィン・クロード。
この国の王子だ。
……ん?なにかあった?
あぁ家さんと話したことね。
さすがにいきなり王子だとは言えなかったよ。
というか、フィンという名前では気付かれないのかな?
王子の名前くらい……絶賛後継者争い中の王子の名前くらい、誰でも知っているものと思ったけど。
家さんだし、興味なさそうだね。
面白い家だったなぁ。
あんな家を見繕ってくれた商人さんに感謝だね。
……あれ?なんでそもそも内見に行ったんだっけ?
そんなことを考えながら僕はお城に帰る。
今日は食事会があるから時間までに戻れてよかった。
この国、クロード王国はエルゼルド大陸の南部にある人間が治める国だ。
この大陸は獣人が多いが、僕たちはその昔オルハレスト大陸から海を渡ってやってきた人間の子孫だ。
古代神シルヴァリウス様が庇護するエルゼルド大陸には様々な種族が暮らしている。
シルヴァリウス様が生み出した獣人、他の大陸から渡ってきた人、妖精、魔族、さまざまだ。
国が1つしかないオルハレスト大陸と違って、この大陸にはいろんな国があるけど、今は割と平和だ。
長らく戦争は聞かない。
だからこそ内部で争ってしまうんだけどね。
僕の家族も……。
「おや、今日は欠席するのかと思っていました」
僕の方を見ながら感じ悪い薄ら笑いを浮かべているのは第2妃のイザベラ。
こいつ……。
「昼間に街へ出かけておりましたが、ちゃんと戻っておりましたので」
冷静に、冷静に。
「家を買ったそうですね」
「……はい」
どこでそれを?
いや、手先を仕向けてきたんだから知ってるか。
家さんには違うかもと言ったが、そんなことはない。間違いなくこの人たちが僕に暗殺者を仕向けている。
「家を買ったのか?」
「はい、父上。庶民の暮らしぶりをみるために、一般の商人の紹介で購入しました」
「よい心がけだ。して、どうだった?」
ここで襲われました、と言ったら父はどういうだろうか?
危ないと言ってくれるのか、撃退したことを褒めるのか、それとも僕の恐れを咎めるのか?
「平民街だと?良い心がけじゃないか。いや、平民にまで落ちる準備をする必要はないのではないか?あっはっは」
「ダリアン」
思いっきりバカにしてくる弟と一応咎めるイザベラ。
「ダリアンよ。我々は王族だが、国が存在するのは民のおかげなのだ。民なきところに国はない。平民街をバカにするのはよしなさい」
「はい、すみません、父上」
父上に怒られながらも、ものすごい睨んでくるダリアン……。
絶対反省してない。
「フィンよ。せっかく平民街に拠点を作ったのなら定期的に様子を報告するように。生活もするなら市場も含めて気になることがあれば教えてくれ」
「かしこまりました、父上」
なにを報告すればいいんだろう。
あとで誰かと相談しよう。
「それでは食事にしよう。我が国の繁栄を願って"乾杯"」
「「乾杯!」」
今日は王族の食事会だ。
月に1度、王城で開催されるこの会のことが僕は苦手だ。
なにせ第2妃のイザベラや弟ダリアンと顔を合わせないといけない。
兄上は不在で正妃様は無口だし、第3妃も母上も妹たちもあまり会話しない。
父上はどう考えているのだろうか?
顔を合わせることで王族の関係に完全に亀裂が入るのを避けようという目論見なんだと思うんだけど。
食事の味はしない。
食事会が終わると皆すごすごと自室に戻る。
僕は母上について一緒に部屋を出る。
「フィン、平民街はあぶなくないかしら?」
「大丈夫ですよ、母上。詳しくは話せませんが、とても楽しかったです」
家さんのことを話したくなるが、理解してもらえないだろうな。
「フィン、ミカエル様が病気に臥せっているため、あなたは有力な王位継承者の候補の1人です。そのことを忘れぬよう」
「もちろんです、母上。私が平民街に拠点を作ったと聞いて、イザベラ様は訝しんでいるでしょう」
「目的がある、ということですか?」
「もちろんです」
どちらかというと穏便にこの承継を終わらしたいだけなんだけどな。
父上が早くダリアンに継承すると言ってくれれば終わるのに。
「あなたに考えがあるなら止めはしません。あなたは賢い子です。今すべきことをしなさい」
「はい、母上」
そう言って僕は母上と別れて自室に戻る。
それにしても不思議な家さんだったな。
そういえば商人さんが昔はたくさん作られたって言ってたっけ。
あんな家が並んでいたら楽しそう……いや、怖いかな。
昔はあんなに強い家が並んでいたのかな?
どんな世界だったんだろう。
ステータスはすさまじかった。
僕とはえらい違いだ。
でも、楽しかったな。
あんなに気楽にしゃべったのは初めてだ。
また明日……は、予定があるから明後日行こう。
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる