取り壊し反対!偉そうだけど本当は優しい魔法の家が住人を離さないために奮闘するお話

蒼井星空

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いざ安住の地へ

<フィン> 公開処刑

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「フィン閣下!!!」
「どうした?」
 呼びに来た兵士に答える。
 彼は王城警備隊員だ。

「大変です、フィン閣下。敵が公開処刑をやるようです。その……捉えた魔導騎士団を」
「なんだと!?」

 報告を聞いて僕は一気に血の気を失った。
 まさか、そんなことをしてくるなんて。

「ガウェル中隊長!」
「フィン閣下、こちらへ」

 僕がさきほど会議をしていた天幕へ行くと、そこにはガウェル中隊長、メロード中隊長のほか数名の騎士団員が集まっていた。

「あいつら、卑怯にも公開処刑をやると言いまわっているようです。こちらにも聞こえる声で喧伝しています……」
 ガウェル中隊長が悔しそうに言う。

「なにが目的で……?」
「十中八九誘い出すためでしょう。敵はこちらを籠城させたくないのでしょう。また、王国軍の本隊が合流する前にこちらの数を減らしたいのかと」
 メロード中隊長が教えてくれる。
 汚いしきついが敵にとっては合理的という事か。

「さらに、捕虜にしておくと兵糧を分け与えなくてはならないが、殺してしまえば不要だ。自分たちの負担を減らし、こちらへのダメージも……」
 なんて卑怯な奴らだ。

「完全にかつて周辺国同士で結んだ戦時協定に反するふるまいだが、戦争がなくなって長い。そんな古いことは知らんとでも言いそうだな」
 ガウェル隊長の言葉は厳しい。
 今の時代に僕たちに頼れるものはない。
 そもそも新興のラザクリフ王国は百年以上前の協定には参加していないだろう。

「ここで撃って出てはいけません」
「メロード中隊長!私は捨て置けません。ブレイディ団長は我々を救ってくださったのです!」
 メロード中隊長の言うことはもっともだが、この場にいる傷をおった者たち。
 彼らはブレイディ団長が斬り込まなければ今頃はあの世にいただろう。
 生きていても今回の公開処刑の対象になっていたはずだ。

 そのブレイディ団長は今敵の手の中にあるはずだ。
 公開処刑の目玉とされていることだろう。

 何とかして救いたい。

「公開処刑の日時を言っていたか?」
「明日の正午とのことでした」
 早い。準備する時間は少ない。
 もう日が沈んで結構な時間が経ったはずだ。

 どうする……。

 どうしたい……。

「フィン閣下、どういたしますか?」
 ガウェル中隊長が訪ねてくる。
 この場にいる全員の視線が僕に集まる。
 正直……きつい。

 どんな決断をしても人が死ぬ。

 父上は言っていた。
 流れ着く先を見据え、利用し、その時必要だと思うことをなせ、と。
 恐れるべきは自らの死ではなく、国の……民の死だと。

 自分の死は恐ろしくない。
 どうせこんなちっぽけな自分だ。
 でも、みんなは助けたい。
 ここで魔導騎士団を失ってはいけない。
 僕は……。

「僕が行く」
「閣下、なりません。ここは……」
「閣下!」
 ガウェル中隊長とメロード中隊長の反応は真っ二つだ。

 僕の予想は真逆だったが……。
 さきほど撃って出るのを反対したメロード中隊長に今回も止められると思ったが、彼は期待した声を出している。
 一方、ガウェル中隊長は反対か。

「ガウェル中隊長、王国軍の本隊が合流するか、私かブレイディ団長が戻るまでは指揮をお任せします」
「しかし……」
「止めるなガウェル中隊長。閣下は決断なさったのだ。我々がすべきは支えることだ」
 止めてくるガウェル中隊長と後押ししてくれるメロード中隊長。
 周りで聞いている魔導騎士団員も固唾を飲んで見守っている。
 
「ここからは行くメンバーで作戦を詰めたい。ガウェル中隊長、相談のうえでメンバー選定をお願いしたい。メロード中隊長は騎士団の士気を保つため、各所を巡回してきてほしい」
「「はっ」」
 反対されることなく指示を聞いてもらえてよかった。
 少し警戒しすぎたかもしれないが、不自然ではないだろう。
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