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いざ安住の地へ

<家> 私は家だ!

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 フィンは明らかにおかしかったな。
 まったく、嘘が下手な奴だ。

 憔悴しきった声、まとまっていない考え、あきらかにピンチなんだろう。
 まったく。
 少しは頼るようになったなと思ったのに、すぐこれだ。

 怒るぞフィンよ。
 困ったら言えと言ったのに。
 周りを頼れと言ったのに。

 ずっと誰かに頼れずに生きてきたんだろう。
 仕方ない。
 そういう境遇だったんだ。

 でも。
 でもさ。
 まだ出会ってそんなに経ってないけどさ。
 いっぱい会話した。
 お互いのことは理解してるはずだ。
 いや……私のことはあんまり話していないな。

 まぁいい。
 私はお前の状況はわかってるのだ。
 その上で困ったら言えと言ったのに。
 拗ねるぞ。

 もういい。
 全部やってやる。
 怒られたらその時だ。

「どうした、家よ」
『お前はまたどうしてこんなタイミングで』
 なんでこいつがこんなに都合よく現れるんだよ。
 怪しいことこの上ない。

「助けがいるのではないかと思ってな」
『怪しさしか感じないんだが』
「何についてだ?使えるものは使えばいいじゃないか」
 その対価が怖いんだよ。

『考えても無駄か。私はフィンを助けに行く』
「そうか。戦場で何かあったという事か。わかった。この土地には囲いを作って工事中と掲げておいてやろう」
 むかつくぐらい助かるよ。
 礼は言わん。
 ここに帰ってくるかどうかわからんしな。

 私は飛び立つ。
 こんな時の風魔法だ。
 久々に飛んだからちょっと揺らぎかけたが、問題ない。
 ついでに風魔法で商人に埃をぶつけておいた。

「まったく……」
 なんか聞こえたけど無視無視。

 フィンのところまでなら1日もかからず飛んでいけるだろう。
 魔導障壁の魔道具を物理的に破壊する必要を考慮して庭の石や木、土も巻き上げて収納袋に入れる。

「囲いで大丈夫かな?大穴になってるんだが……」

 なんでこの距離で呟きが聞こえるんだよ。
 無視無視。

 では行くぞ!!!!

「関係者には説明しておいてやろう」
 むかつくぐらい助かるよ……。


「かまわん……既に対価は受け取ったのだからな」
 なんか言ってるけどここだけ聞こえないのがめっちゃ気になる……なんなんだ。無視無視。



 
 そうして飛行すること半日強。
 鳥の群れに驚かれること4回。
 竜に攻撃されること1回。
 むかつくから首を落としてひきずって血抜きした後収納袋に入れた。

 ようやくたどり着いた。

 
 こいつ、さっきフィンを斬りつけたやつだな。

 私を見上げて唖然としている男に向けて魔法攻撃を放つが、遮られてしまう。
 そうだった。
 魔法障壁の魔道具が展開されているんだった。
 
 その様子にその男は少し気持ちを持ち直したようだ。

「何が出てきたのかと思えば、家の魔道具か?飛んでいるのは珍しいが、魔法攻撃は効かん。全軍攻撃を続けよ!敵を殲滅するのだ!!」
「「おーーー!!」」
 その喚き声のような大声はイライラするな。
 魔道具か……まぁそう思っていればいいさ。

 私のやることは1つだ。

 そう、収納袋からいろいろ取り出して、風魔法で投げつけるだけ。

 あれとあれとあれが魔法障壁の魔道具だな。
 そーーれ!

 家が空中に取り出した収納袋から出てくる大量の石、土、木。
 それらが魔法障壁の魔道具に降り注ぎ……破壊する。
 というか、展開のために周りにいた兵士もみんな生き埋めだ。
 大丈夫だよね?
 魔導騎士団っぽい人はいなかったと思うけど。

 とつぜん展開されたえげつない攻撃に唖然とする両軍。

 そんな中、私は騒々しく降り立つ……。
 下にあった公開処刑台を踏みつぶしながら。

 目の前にはフィンがいる。

『フィン、無事なようだな。よかった』
「家さん……ありがとう」
 私に手があったらかっこよくサムズアップしていただろう。
 フィンの素直な感謝が嬉しい。

『さぁ、これで魔法は使えるはずだ。本領発揮と行くべきだろう?魔導騎士団の諸君!』
「ありがたい!全員攻撃だ!!!」
「「おおーーー」」
 団長が家さんに答え、団員が団長に答える!
 
 ここからの戦いは一方的だった。
 戦場を飛び交う火、水、氷、雷、光、そして家。

 魔法の猛威がラザクリフ軍を蹴散らす。

 
「ようやくちゃんと戦えるな」
「ぐぅ……フィンだと……まさか……」
 そしてハゲが敵の大男に迫る。
 
「わかった……こうさ、ぎゃー」
 降参って言いかけたところを斬り捨てた、やるなぁ。


 そうしてあっさりと決着を迎えたこの戦いは、クロード王国の大勝利だ。

「家さん、来てくれてありがとう!」
『うむ』
 素直な礼が嬉しい。無事でよかった。

『すまないな、名前を隠していたのか?』
「いや、問題ないよ。勝ったんだから。少し怪しいことがあったから隠していたんだけど、あとで説明するよ」
『わかった』
 フィンも内通者に気付いたかな?
 
「フィン閣下、その"家?"は?」
「あっ……えーと、団長、これはですね」
 ハゲ団長が私を気にしているな……。ここは私の出番だろう。 
 
『お前が魔導騎士団の団長か?』
「あぁ……」

『魔道具も、悪くないだろう?』
「……あぁ」

 いよっしゃーーーー!

 
 その後リシャルデに入った私たちを残っていた魔導騎士団と駐留軍が大歓迎してくれた。
 自分たちの失敗のケツを拭いてくれたフィン王子、公開処刑されてしまったと考えていた魔導騎士団の団長と団員達が返ってきたし、そこにラザクリフ軍を撃破したという知らせまでついてきているのだから、大騒ぎになった。

 もちろん私に対する驚きもあっただろうがね。
 乗せたフィンが窓から顔を出していたし、下には魔導騎士団が後進しているから、怪しまれて攻撃されることがなくてホッとしたのは内緒だ。

 
 私自身はこの町の広場に降ろさせてもらって、今日はフィンは私の中だ。
 かなり疲れ切っていたから、飯を食わして体を洗わせてベッドに放り込んだ。
 ん?お前が言うとちっともエロくないだと?
 ふっ……。

 それっぽく笑ってみたけどどうだろうか。
 勘違いとか……ないとか言うな!
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