取り壊し反対!偉そうだけど本当は優しい魔法の家が住人を離さないために奮闘するお話

蒼井星空

文字の大きさ
42 / 46
いざ安住の地へ

<フィン> 選定会議

しおりを挟む
 僕は覚悟を決めて王城の大広間に向かう。
 さぁ、どうなるかな?少なくとも弟ダリアンに決まることだけはないと思うんだが……"ざまぁ"という気持ちはしまっておこう。そして、どうか僕にはなりませんように。

 
 今日は選定会議の日だ。
 僕は結局この日に合わせてリシャルデから帰還した。
 どう考えても僕を王都に帰させない狡い妨害工作だった……。
 ここで選ばれても実際に国王になるのは5年先なんだから、妨害になんの意味があるというのか。


 大広間にはすでに多くの人がいた。
 選定会議への参加義務がある伯爵以上の貴族たちだ。

 僕ら次期国王の候補者たちが大広間に姿を表すと彼らは静まり、入場する僕たちに拍手をしてくれた。たくさんの視線が自分に向いてる気がするのは気のせいだよね?気のせいだと言ってほしい。
 戦争に勝ったことで評価されているのは聞いているが、やめてほしい。僕は王になりたくない。
 
 中央には国王陛下の玉座。
 その前に大きなテーブルが置かれ、周囲にもテーブルやイスが並べられている。
 その中に見たことがあるテーブルがひとつ置いてある気がするが、見間違えかな?

 既にテーブルには国王である父上、そして王妃たち、貴族たちが座っている。
 この会議は次の王を決めるもの。貴族たちはその立会人だ。
 だから王族の入場にも、この日だけは貴族たちは立ち上がらない。

 そうして名札が置かれた席に着く。
 父上の右手側から順番に第4王女アリアーナ、第3王女ソフィア、第2王女ルシア、第3王子ダリアン、僕、そして隣の席は……残念ながら空席だ……。

 兄上は間に合わなかったのかな……。
 大広間の外で期待して待っていたが、入場するよう促されるまでに兄上は姿を見せなかった。
 改めて衝撃を受ける僕。遠いリシャルデからでは兄上の様子を探ることもできず、回復していることを祈っていたが……これはまずい。
 エルメリアさんからは使用し、魔力病を治したという手紙は受け取っていたが、長年にわたって蝕まれた体の回復に時間がかかっているのかな。
 いまだに兄上は病室に籠ったままらしい。
 まさかダリアンたちがなにかしたとかじゃないよな……。

 僕はレオノーラ様の方を見るが、彼女はまっすぐ前を見つめて座っており、その視線の先は僕の隣……空席に注がれていた。

「静粛に」
 そうして選定会議が始まってしまう。待ってくれ兄上がまだ、とも言えず、黙って座っているしかない。

 この会議は多分に儀式的なもので、手順が決まっている。なんとか逃れられないかと思って何度も規則を読み直したから覚えてしまった。
 まず最初に父上がこの選定会議の議長を任命する。その言葉は堅く、重い……。

「この国の柱たるロドガルム公爵よ。
 貴公のこの国を思う心は深く、その重責と使命に我は敬意を表す。

 (長いのでカット)

 どうかこの歴史的な任務に神の祝福があらんことを」


 国王である父上が選定会議を任せたのはロドガルム公爵。父上の従兄弟にあたる方だ。議長と言っても進行役に近いものだが、貴族たちの不用意な発言を抑える役目がある。
 一応、選定会議が紛糾した際に最終決定する権限があるが、使われたことは一度もないという。僕の人生最大最後のお願いだから、ミカエル王子が次の国王だ、っていきなり宣言してくれないかな?

 僕の期待とは裏腹に、ロドガルム公爵は粛々と選定会議の開催を宣言する。
 当然か……。この場にいる貴族たちは僕が国王になりたいと思っているだろう。

「諸君、この偉大なる玉座のもとに集いし貴族たちよ~~~。
 
 (めっちゃ長いのでカット)
 
 さあ、未来への扉を開こう」
 
 

 父上もロドガルム公爵も繰り返しの多い硬い文章を読んでいるかのようだがこれは様式美……。文句がほぼ決まっているので仕方ない。選ばれたくない僕は現実逃避でそんなことを考えている……。

「では推薦を行う。まずはベオルバッハ侯爵」
 ロドガルム公爵の進行でベオルバッハ侯爵が立ち上がる。
 第2妃の兄でダリアンの伯父だ。当然推薦相手はダリアンだ。

「尊敬する国王陛下、そしてこの偉大なる玉座に仕える全ての人々へ。我々が今、この歴史的瞬間に立ち会っていることは、まさに天の導きに他なりません。
 我が国の将来を託すべき、次代の君主を選ぶこの神聖なる責務において、一人の候補者を心から推薦させていただきたく、ここに立ち上がりました。
 その候補者とは、他ならぬダリアン王子でございます。
 ダリアン王子は、生まれながらにしてこの国の土と共に育ち、その心には民の安寧と国の繁栄が深く刻まれています。
 王子の勇敢さ、公正さ、そして何よりも人々を思いやる温かな心は、すでに多くの場面で我々の目の当たりにされてきたことでしょう。
 さらに、ダリアン王子は、この国が直面する数々の試練を、冷静かつ賢明に乗り越えるための才能と慧眼を兼ね備えておられます。
 若き日より、王子は国内外を問わず、多岐にわたる知識を吸収し、その理解を深めてこられました。
 また、王子の外交における洞察力は、我が国を未来に向けてさらなる高みへと導くでしょう。
 このように、ダリアン王子は、国王としての全ての資質を兼ね備えておられます。王子のリーダーシップのもと、我が国は新たな繁栄の時代を迎えることでしょう。
 そこで、心よりの敬意を込めて、ダリアン王子を次代の国王として推薦します」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...