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第一章

第11話 配信 ~阿鼻叫喚~

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「あっはっはっはっはっはっは!!!!!やばい!!!あいつやばい!!!!あっはっはっはっは!」
 ボクが振り回されているのを見て笑いころげる冥神さま。
 このクソおやじめ!!!

 ???:きゃー遊神ちゃんがーー!!!
 ???:何すんだあの悪魔!俺たちの遊神ちゃんを返せーーーーー!!!!!!
 ???:遊神ちゃんかわゆす!
 ???:いやーーーーー!
 ???:あははははは。ウケる!あははははは。
 ???:遊神ちゃんペロペロ(うっとり)
 ???:神獣のところに放り込んだ仕返しなのでは?ゲラゲラゲラゲラ!!
 

「むぅ……」
 ダンジョンに入るところで気合の入ったいい表情を披露するアナトを撮れてよかったと思った矢先だったのに……このボクの化身を武器として振り回して、しかもモンスターに投げつけるなんてどういうことなんだ!?
 はたから見ると確かに面白いのがムカつく。
 なにしてるんだよアナト!!!!

 ???:ペチッて!!!今、ペチッて!!!!!!!!!!
 ???:あははははははははははは!
 ???:死ぬ……あひ~死ぬ~~~
 ???:あぁ我も遊神ちゃん投げつけられたいお!
 ???:きゃっはっはっはっは!!!
 ???:おほほほ……ダメですわ。笑っては可哀そうですわ!おほほほ……
 ???:配信なんだからむしろ面白かったら笑った方がっはっはっはっは!!!!!!


 いろんな人に笑われるのが悲しかったと言っていたアナトの気持ちが少しわかる……いや、ないない。
 ボクは画面に映るアナトを見つめ、思い直す。
 あいつめ!!!(怒)

「あっはっはっはっはっはっは!!!!!」
『くっくっくっくっくっくっくっくっく』
「ふふ……」
 そしてコイツら!(怒)

 配信側なのにただ笑い続けてるってどうなんだよ!ちゃんと仕事しなよ!!!

 見てるみんなも笑ってるだけで誰も投げ銭しないし!!!(怒)


 しかしそんな笑いは一転して阿鼻叫喚に変わる。

 ???:なっなんだよあれ!?
 ???:マジか?演出だよな?冥神様!演出だと言ってくれ!!!!
 ???:バカ!演出であんなの出せるかよ!
 ???:やべ~あの黒い炎の玉やばすぎる!!!!
 ???:逃げて!あの男はどうでもいいけど遊神ちゃん逃げて~~~~~~!!!!!

 
「なんで古代の神獣殿があそこに……?」
 って、なんで冥神さまが驚いてるんだよ。
 えっ?本当に?仕込みじゃないの?マズくない?
 
 やばい……。
 あそこにいるのは化身だから仮に吹っ飛ばされても影響はないけど、それだとアナトはジ・エンドだ……。


 っく、アナトめ。ここにいもしないのに痔とか言って笑わすのやめろよ!


 ???:マジかよ!遊神ちゃんの一撃で無傷だと?
 ???:まずいだろあれ!遊神ちゃん気絶してるじゃね~か!!!
 ???:一応説明で化身ですって表示されてるから遊神ちゃんは無事なんじゃねぇのか?
 ???:あぁ、欲しい。あの人形が欲しい……。
 ???:うるせぇぞ!この配信終わったらあれは俺が貰うんだ!!!

 あげないよ!というか危ないやつばっかりかよ!!

 しかし本当にまずい。
 化身とはいえ、かなりの力を使った攻撃だったのに。

 ボクは冥神を見るが、このおっさんはダメだ。
 ただ茫然と画面を見ている。

『さすがにまずいのではないか?どういう経緯であの方があそこにいたのかわからないが、全て吹っ飛ばされるぞ?』
 火神さまが険しい表情で喋っている。
 いつも寝ている火神さまが起きて画面を注視している姿が余計に今の状況のヤバさを表している。

「いや~うん。そうだな。まさかな。あっはっはっは……どうしよう?」
 そして笑ってごまかそうとしているこのおやじ使えねー!!!!

 アナトと同じようなことを心の中で叫んでしまった。大丈夫だよね?ちゃんと心で留めたよね?


 画面の中ではアナトがボクの化身を抱っこして必死に逃げ回っている。
 そんなのはいいから逃げろって言いたかったけど、ここの声はアナトには届かない。
 
 あいつ……あんな状態でボクを抱えて……。

「遊神……幸せそうな顔をしている場合では……ありません」
「はっ!?」

『遊神よ。惹かれるのはわかるが、今は』
「ないないないないないない!な~~~~~い!!!ボクがアナトに惹かれるなんてないから!」

 ???:遊神ちゃんかわゆす!
 ???:どういうことだ?やっぱりあれは何かの仕掛けなのか?
 ???:あの人間。あの状況でも遊神様を離さず抱えて逃げる根性は褒めてやりたい。
 ???:たしかに。で、遊神様には吊り橋効果がかかると……。
 ???:おい!ちょっと時空を渡れるからってこの世界にない概念を引っ張ってくるんじゃない!


「うるさ~~~~~~い!ピンチなんだよ!アナトやばいんだよ!どうしよ~~~~~」

 ???:えっ?やっぱりやばいの?
 ???:俺達なにすれば?
 ???:え~と、アレだ!応援だ!応援すればいいんだ!
 ???:がんばれアナト!!!!
 ???:がっ、がんばれ~!

 
「違うだろ!なんで配信にコメント出してるだけなんだ!?配信の応援と言ったらなんだ!!!?」

 ???:あっ、そうか!
 ???:よし、応援っと!
 ???:いけ~~~~!!!!

 いきなり真面目な顔になって叫びやがったクソ親父の声に反応して途端に入りだす投げ銭……つまりお金。
 アナトピンチなのになにやってるんだよ!?
 

 なお、アナトの封印されたスキルを解放する機能はまだついていない。
 早くして火神さま!
 
 しかし当然そんな神様の世界の事情を知らないアナトは"高エネルギー結晶"を使った!
 ボクの化身を抱きしめながら……。
 

「ふぅ、助かった~」
 偶然にも聖属性のエネルギーが充填されていた"高エネルギー結晶"によって古代の神獣は浄化されて意識を取り戻した。
 ついでにボクの化身も回復した。

 ???:いや、ふぅじゃないから、遊神ちゃん!
 ???:遊神ちゃんペロペロ(うっとり)


「なんだよ~助かったんだから、今は喜んでよ。良かった、アナト」
 まじでやばいと思ったんだからね。
 
 まぁ、助けてくれてありがとう♡

 
「……アナトという男に惚れた……遊神であった……」
「なっ!?」

 ???:いや~~~~~~~~~~~!!!!
 ???:だめだだめだだめだだめだだめだ!!!!
 ???:いやだ~俺の遊神ちゃんが~~~~!!!!!

「何を言い出すんだよ戯神!!!」
「……違うのですか?……」
 いや、嫌いではないけども!!!
 
 画面には倒れていない古代の神獣に慌てたアナトが再びボク(の化身)を抱えて逃げようとしている姿が映し出されていた。







 やっぱり置いていかないんだね……♡


 

「なんとかなったな!では続きをお楽しみに!」
 このおやじ……慌ててただけじゃないか!しかも投げ銭の総額を見て喜んでるなんて……。

「良かったよね。貰った投げ銭はボクが預かっておくからね!必要になったらアナトに渡すよん♪」
「ぐっ」
 クソおやじにもの凄い睨まれた……。
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