義妹が婚約破棄された。その方が幸せになることを知っているので流したが、それ以上はさせないぜ!?

蒼井星空

文字の大きさ
2 / 46

第2話 義妹が婚約破棄されて帰ってきて悲しんでいるから優しく抱きしめて慰めた件(クラム視点)

しおりを挟む
□エルダーウィズ公爵邸(クラム・エルダーウィズ)

義妹が帰って来た。

「おかえり、エフィ」
「お兄様。ただいま帰りました……」

予想通り婚約破棄をされたようで落ち込んでいる。

義妹の寂しそうな顔を見るのが切ない。辛い。でも大丈夫だ。これからきっと俺が幸せにしてやるからな。
あんなクソ王子に嫁がなくてよかった。そう思わせてやるからな。


俺はクラム・エルダーウィズ。公爵家の嫡男だ。
義妹はエフィ・エルダーウィズ。義妹と呼んでいることからわかってもらえると思うが、彼女は養女だ。
養女とは言っても、縁もゆかりもない娘ではなく、俺の曽祖父の妹の娘だ。
世代が離れすぎていることに驚く人もいるだろうけど事実だから仕方がない。

そのお婆さんは王国史上最高の魔法使いと呼ばれた人で、かなり長い間若い姿を保っていたから、そういうこともあるんだろう。

それでも15年ほど前に亡くなってしまったので、エフィはうちにやってきた。
ちなみにこれはエフィも、弟のロイドも知らない。

なぜ俺が知っているのかというと、それは俺が特殊スキル持ちのレアな人材だから。
俺のスキルは"人物史"。
かなり大量に魔力を使うから多用できないが、特定の人の過去、そして未来をまるで歴史の年表のような形で見ることができるというものだ。
なんでこんなスキルが生えてきたのかはわからないが、きっと俺が昔からこそこそと周囲の人を調べていたからだろう。
理由は言わないぜ?


「すみません、お兄様」
帰って来たエフィが落ち込んでいるのが可哀そうで、ついついもう大きくなったというのに隣に座らせて頭をなでてやっていると、固い決意でもしたような表情でエフィが喋り出した。

「どうした? まぁ落ち着け。これでも飲んで」
そう言いながら執事が用意してくれた紅茶をエフィに薦める。

悪いが何があったかは全部知ってる。
俺は、可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて仕方がない義妹のエフィにあるとき"人物史"を使ったんだ。

そしたら見えた。

いずれ婚約破棄されることが。さらにそのことについて両親や弟から責められ、彼女は出奔してしまう。さらに王都に現れる悪霊に襲われて亡くなってしまうと。

俺は発狂しそうになるのを抑え、心を落ち着かせて考えた。
これはチャンスじゃないかと。

こんなに可愛いエフィをあのクソ王子に渡さなくて済むんじゃないかと。
ついでにアホな弟は折檻できるし、優しいけど権力に弱く優柔不断な父にも喝を入れられる。
そして何より、俺がエフィと一緒に未来を生きることもできる。なぜなら義妹とは結婚できるんだから。

そうと決めたら、俺は努力した。
やるべきことは3つ。
婚約破棄を言い渡されるまでエフィを安全な場所にいさせること、婚約破棄の混乱からエフィを守ること、悪霊からエフィを守ることだ。


というようなことがあったからな。
既にかなりの努力をした後だ。

それでこうやって落ち着いてエフィの相手ができるというわけだ。
今からやるべきことはエフィを落ち着かせることだ。

優しく受け止め、慰める。
今この家には俺たち2人だけ。あとは使用人たちだけだ。

両親と末の妹には家族旅行をプレゼントしている。
事前に全ての仕事をしれっと片付け、来年学院に入る妹の最後の自由な時間に旅行して思い出を作ってくるように伝えた。
婚約破棄をされたことを知った日、両親は慌てながら無遠慮にエフィを傷つけてしまうことはわかっている。末の妹はもっと酷く、エフィに使えない無能とか、王子に相応しくないとか言い放ってしまう。

ただし、彼らはエフィが死んだあと後悔の念にかられ、亡くなったエフィに謝ることは"人物史"でわかっているので、距離を取らせればいいと考えた結果こうなった。
道中、俺とエフィからの贈り物という名目で素敵なプレゼントや美味しい料理が振る舞われるから、きっと今を乗り越えれば未来は上手くいくだろう。


そんな感じで準備万端だ。
だからそんなに悲しそうな顔をせずに話してごらん。

大丈夫だから。

「ありがとうございます、お兄様」
「あぁ、落ち着いたかい?」
「はい。でも、すみません」
やっぱり暗い顔をしているエフィ。そんな顔は君には似合わない。
今すぐにでも抱きしめてやりたい衝動にかられるが、ここは我慢だ。
しっかり話さないとエフィも落ち着かないだろうから。

「私……ギード王子に婚約を破棄されてしまいました」
「そうか……」

よしよし。よく言えたな。辛かったな。何も問題ないからな。

俺は無言でエフィの頭を撫でる。
小さい頃からこの子はこれが好きだった。落ち着くみたいでな。

だから優しくなでてやる。


「怒らないのですか?」
「怒る? なんでだ?」
「だって……私……恥さらしだって」
「誰に言われた?」
「ロイドに……」
ロイド……君はやっぱりダメダメだったな。
別の理由で既に切り捨てることは確定していたがな。


「気にするな。エフィが恥さらしじゃないことを俺は知ってる」
「お兄様……」
うん、頑張ったな……俺。よく耐えた。もういいだろ?
エフィにこんな顔をさせて、俺の心が暴れまくってる。

俺は優しくエフィを抱きしめる。

「お兄様」
「何も気にすることはないさ。大丈夫。大丈夫だからな」
「はい……」
泣いているようだ。俺の腕の中で。

すまんな、エフィ。

これからは良い未来を歩ませてやるからな。だから今日、婚約破棄を放置したことだけは許してくれ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...