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第22話 王子は愛人も部下も見捨てて頑張って走った結果が〇〇だった件
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「まっ、待ってください!私の足が!王子!助けて!」
走り出した俺にオルフェが泣き叫ぶ。
どうやらまだ完全にがれきの山から抜け出せていないらしい。
一瞬振り返ってみると、足が埋まったままだ。もしかしたらケガをしているのかもしれない。
ふん。許せオルフェ。
お前を気にしている余裕はないのはわかるだろ?
まだ距離があるが、魔狼が足を踏み出し、踏みつぶされる瓦礫の音が響いてくる。
あれに追い付かれたら終わりだ。
あの巨大な口に咥えられ、牙で噛み千切られ、咀嚼されて終わりだ。
もう何人喰われた?
一向に喰うのをやめる気配はない。
当然だろう。何百年封印されていたんだ?
その間、ずっと何も与えられずに閉じ込められていたんだろう。
あの魔狼は『すべて滅ぼしてくれるわ!!!!!!!』などと叫んでいた。
強い恨みを持っている証拠だ。
一刻も早く逃げるしか手はない。
そもそもなぜ王太子である俺が助けなければならない?
お前たちが俺の助けになるべきだろ?
お前らがちゃんと魔石を守護結界に入れていれば、こんなことにはならなかったというのに、まだ失態を繰り広げるのか。
周囲は酷い惨状だ。
これでは埋まってしまった父上はダメだろう。
もしかしたら大臣も。
自分のために確保していた魔石で咄嗟に守護を唱えたおかげで俺は助かったし、近くにいたオルフェたちも辛うじて生き残ったようだがな。
俺は気にせず走る。
「なっ、王子! お願いです! お助けください! あんなに私のことを愛していると言って下さったではありませんか! いや~~ギード王子! お願い!!!」
もはや何の痛痒も感じないんだ。
愛は平時にあってこそなんだ。
もちろん穏やかな夜のベッドの中、安心できる密室の中、暖かく危険のない風呂の中。
そんな場所であれば俺は当然お前を愛すだろう。
しかし見てみろ。
あの魔狼を。
今は愛を語るべき時ではない。
一刻も早く俺を逃がすべき時だ。
なのに足止めしようとは、なんと不届きものなのだ!?
お前は結局そういう自己中心的な女だったということだろう。
どうせ俺の見ていないところで、他に何人もの男に抱かれ、傅かせ、優越感に浸ってきたのだろう。
自らを愛すものだからな。
知っているぞ?
お茶会と称して父上にも抱かれただろ?
嫌がりもせず、むしろ自ら積極的に。
まったく、御しがたい女だ。
美しい。それは間違いない。
しかし、魔狼を前にして考えれば、全てを捨てるほどの価値など感じない。
もしかしてお前……"魅了"持ちだったのか?
お前の力を上回る恐怖のせいで打ち消されたのかもしれないな。
だとしたら、仕方ないだろ?
さよならだ。
せいぜい俺のために足止めをするんだな。
今まで良い思いをしてきたんだから、その礼と感謝を俺に返せよ。
「王子!頼む!助け……ぎゃ~~------……」
後ろでロイドの声が消える。
一瞬振り返ると、覆いかぶさるようにしている魔狼。
いつの間にそこまで来た……。
さっきまでは南端の尖塔と思われる建物が崩れた跡の上にいただろ?
なぜこんなに短い間に、音もなく中央まで移動してるんだ?
それほどまでに素早い魔物だというのか?
俺はさらに速度を上げて走る。
瓦礫の山は走りにくい。
しかし気にしている余裕などない。
ロイドはもうダメだ。
たぶん食われた。
くそっ、鎧くらい着てろよな。
そうすれば少しでも長く時間を稼げるだろうに。
なんで学院の制服なんだよ。
防御力ゼロじゃねぇか!
「いや……いや‘---、いや~~----!!!!……」
さらに聞こえてくるのはオルフェの声だ。
何度も聞いた叫び声だからよくわかる。
せいぜい時間を稼げ。俺はがれきの上から飛ぶ。城があったであろう場所から出て、庭があった場所を抜け、城下に降りる道へ向かって走る。
ようやく俺の姿が少しは隠れてくれるだろう。
あの気持ち悪い狼の視線から逃れたい。
あの射貫くような目。
俺が王だとわかっているのか?
そんなはずはないだろう。
あれはただの魔物だ。
ただただ暴れ、喰らう魔物だ。
俺さえ逃げのびれば何とかなる。
俺が王になる。
俺が国だ。
周りで倒れていたり、朦朧としている兵士たちを無視して走る。
ここまで来ると、生き延びた人間が増えてくる。
俺に気付くものも出てくる。
が、俺は相手にしない。
全員その場で待機してろ。
お前らが喰われる間に俺が逃げるから。
全員餌になってくれ。
抵抗はすればいい。
どうせ無駄だが、抵抗はしろ!
そうやって一人一人が目いっぱい足掻いて時間を稼げ。
そうすれば俺が助かる可能性があがる。
王を救うんだ!
輝かしい未来を築いてやる。
その石垣になるんだ。お前たちは。
喜べ!
その死は無駄だじゃない!
この国の人柱として、誇りを胸に喰われてくれ。
俺のために。
それがお前たちの家族のためになる。
それがこの国の未来のためになる。
お前たちは身を犠牲にしてくれればいい。餌になってくれれば。そうすれば国が助かるんだ。
ぐしゃ……。
「なっ……」
俺の足……なんで……?
足を失い振り返った俺の目が捕らえたのは巨大な口だった……。
走り出した俺にオルフェが泣き叫ぶ。
どうやらまだ完全にがれきの山から抜け出せていないらしい。
一瞬振り返ってみると、足が埋まったままだ。もしかしたらケガをしているのかもしれない。
ふん。許せオルフェ。
お前を気にしている余裕はないのはわかるだろ?
まだ距離があるが、魔狼が足を踏み出し、踏みつぶされる瓦礫の音が響いてくる。
あれに追い付かれたら終わりだ。
あの巨大な口に咥えられ、牙で噛み千切られ、咀嚼されて終わりだ。
もう何人喰われた?
一向に喰うのをやめる気配はない。
当然だろう。何百年封印されていたんだ?
その間、ずっと何も与えられずに閉じ込められていたんだろう。
あの魔狼は『すべて滅ぼしてくれるわ!!!!!!!』などと叫んでいた。
強い恨みを持っている証拠だ。
一刻も早く逃げるしか手はない。
そもそもなぜ王太子である俺が助けなければならない?
お前たちが俺の助けになるべきだろ?
お前らがちゃんと魔石を守護結界に入れていれば、こんなことにはならなかったというのに、まだ失態を繰り広げるのか。
周囲は酷い惨状だ。
これでは埋まってしまった父上はダメだろう。
もしかしたら大臣も。
自分のために確保していた魔石で咄嗟に守護を唱えたおかげで俺は助かったし、近くにいたオルフェたちも辛うじて生き残ったようだがな。
俺は気にせず走る。
「なっ、王子! お願いです! お助けください! あんなに私のことを愛していると言って下さったではありませんか! いや~~ギード王子! お願い!!!」
もはや何の痛痒も感じないんだ。
愛は平時にあってこそなんだ。
もちろん穏やかな夜のベッドの中、安心できる密室の中、暖かく危険のない風呂の中。
そんな場所であれば俺は当然お前を愛すだろう。
しかし見てみろ。
あの魔狼を。
今は愛を語るべき時ではない。
一刻も早く俺を逃がすべき時だ。
なのに足止めしようとは、なんと不届きものなのだ!?
お前は結局そういう自己中心的な女だったということだろう。
どうせ俺の見ていないところで、他に何人もの男に抱かれ、傅かせ、優越感に浸ってきたのだろう。
自らを愛すものだからな。
知っているぞ?
お茶会と称して父上にも抱かれただろ?
嫌がりもせず、むしろ自ら積極的に。
まったく、御しがたい女だ。
美しい。それは間違いない。
しかし、魔狼を前にして考えれば、全てを捨てるほどの価値など感じない。
もしかしてお前……"魅了"持ちだったのか?
お前の力を上回る恐怖のせいで打ち消されたのかもしれないな。
だとしたら、仕方ないだろ?
さよならだ。
せいぜい俺のために足止めをするんだな。
今まで良い思いをしてきたんだから、その礼と感謝を俺に返せよ。
「王子!頼む!助け……ぎゃ~~------……」
後ろでロイドの声が消える。
一瞬振り返ると、覆いかぶさるようにしている魔狼。
いつの間にそこまで来た……。
さっきまでは南端の尖塔と思われる建物が崩れた跡の上にいただろ?
なぜこんなに短い間に、音もなく中央まで移動してるんだ?
それほどまでに素早い魔物だというのか?
俺はさらに速度を上げて走る。
瓦礫の山は走りにくい。
しかし気にしている余裕などない。
ロイドはもうダメだ。
たぶん食われた。
くそっ、鎧くらい着てろよな。
そうすれば少しでも長く時間を稼げるだろうに。
なんで学院の制服なんだよ。
防御力ゼロじゃねぇか!
「いや……いや‘---、いや~~----!!!!……」
さらに聞こえてくるのはオルフェの声だ。
何度も聞いた叫び声だからよくわかる。
せいぜい時間を稼げ。俺はがれきの上から飛ぶ。城があったであろう場所から出て、庭があった場所を抜け、城下に降りる道へ向かって走る。
ようやく俺の姿が少しは隠れてくれるだろう。
あの気持ち悪い狼の視線から逃れたい。
あの射貫くような目。
俺が王だとわかっているのか?
そんなはずはないだろう。
あれはただの魔物だ。
ただただ暴れ、喰らう魔物だ。
俺さえ逃げのびれば何とかなる。
俺が王になる。
俺が国だ。
周りで倒れていたり、朦朧としている兵士たちを無視して走る。
ここまで来ると、生き延びた人間が増えてくる。
俺に気付くものも出てくる。
が、俺は相手にしない。
全員その場で待機してろ。
お前らが喰われる間に俺が逃げるから。
全員餌になってくれ。
抵抗はすればいい。
どうせ無駄だが、抵抗はしろ!
そうやって一人一人が目いっぱい足掻いて時間を稼げ。
そうすれば俺が助かる可能性があがる。
王を救うんだ!
輝かしい未来を築いてやる。
その石垣になるんだ。お前たちは。
喜べ!
その死は無駄だじゃない!
この国の人柱として、誇りを胸に喰われてくれ。
俺のために。
それがお前たちの家族のためになる。
それがこの国の未来のためになる。
お前たちは身を犠牲にしてくれればいい。餌になってくれれば。そうすれば国が助かるんだ。
ぐしゃ……。
「なっ……」
俺の足……なんで……?
足を失い振り返った俺の目が捕らえたのは巨大な口だった……。
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