27 / 46
第27話 家族でもケジメは必要だと思って両頬を差し出したら後ろから妹に刺された件
しおりを挟む
□エルダーウィズ公爵邸にて (クラム)
「父さん、ミトラ様、ロイドを救えなかったことは謝ります。すみません」
ようやく状況も、そして2人の感情も落ち着いてきたころ、俺はその言葉を吐いた。
我ながら酷い。ただただ許してほしいという逃避に近い行動だと思う。
もし僕が父さんだったら一発くらい殴ると思う。
もちろん、どうやったとしてもロイドは死んでいた。
その死に方の中では最もましなものになったはずだ。
まぁ、齧られて咀嚼されるというのはましな死に方ではないが、一瞬で死ねただろうから痛みや苦しみは少なかっただろう。
騙されて処刑されるとか、非合法の魔道具につながれて永久に魔力供給のタンクにされるとか、生きながらゆっくり削られていくとか、好きになった相手が俺に求愛するのを傍観させられるのよりはましなはずだ。
最後のは特に問題ないんじゃないかって?
えっ? 聞きたい?
エフィが死んだ世界線の話なんだけど、俺が怒って出国し、隣国で出世したらしいんだよ。
それで戦争でこの国を倒し、高位貴族を全員捕えてさ。
で、王女様をはじめ女の子達には散々な未来が待ってるわけだけど、女の子たちが助かりたい一心で俺に求愛するけど散々な行為が展開され、さらにその姿を縛り付けられて全部見せられた後、男どもも全員処刑するらしくてさ……これ以上はやめておこう。
まぁどの未来も酷いわけ。
呪われてるんじゃないかってくらいにな。
だからまぁ、そもそも本人の言動が気に入らないから助ける気もなかったけど、父さんとミトラ様のためにも何とかしようとはしてみたわけ。
でもダメだった。
それでも3発くらい殴られる覚悟はしてる。
どんなやつでも子供は子供。誰かに当たらないと気持ちも収まらないでしょ?
ならいっそ、諦めて一番手軽な隔離を選び、その間にロイドは死んでしまってました、なんて状況を作った俺に当たってくれ。
エフィに当たられるより何倍もましだよ。
そう思って両頬を差し出したんだが、張り手も、パンチも、魔法も、罵声も飛んでこなかった。
「クラム……」
「クラム殿、方々に気を使った立ち回りに感謝する。また、私たちを助けてくれてありがとう」
むしろお礼を言われた。
なんでだよ。
当たっていいんだよ?
当たってくれよ。
俺が……楽な選択肢を選んだ俺が後悔するだろ?
「あと、殴られるために顔を前に出すのはやめなさい。あなたが私たちのためにしてくれたことはもうわかっているのだから。さっき見せてくれた"人物史”の結果。あれだけじゃないんでしょ? まったく。魔力消費の激しい魔法なのに、何回使ったの? あんなに自然に見せてくれていたけど、それ以外にもいっぱいあるんでしょ?」
「……はい」
「それくらいわかるわよ。ロイドがどれだけ酷いことをしても、あなたはずっと見てくれていたのを知ってるの。もちろん、エフィと比べるべくもないけど、そんなの弟と妹では違うし、ましてやあなたのことを敵視していた弟よ。今の結果は私とハミルの責任であって、あなたのせいじゃないわ」
わかった……。
わかったからもうやめてくれ。
そんな優しさ。欲望にまみれた俺に向ける必要ないんだ。
「ごめんなさい。クラム殿。そしてありがとうございます。もうハミルなんか引退させるか、死ぬまでこき使っていいから、あなたの自由にしていいのよ」
俺はミトラ様に抱きしめられた。
理由は知らないけど、この方はずっと俺を子供として扱ってくれた。
泥棒猫の子供みたいなもんだと思うんだが、何かしら事情があるのかもしれないが……抱擁が優しく、暖かかったのは事実だ。
「お父様、お母様……って、どうしたの?」
「アリア……」
「なんでお兄様が泣いてるの? まさかロイドのこと? 二人ともやめてよね。ロイドが死んだことでお兄様を責めるなら筋違いもいいとこよ? あのクズ。何回言っても聞かないんだから」
いや、お前に諭されたり慰められるとかないから。
「なによその失礼な表情は。私だってお兄様の優しさと、ロイドがクズだったことくらいわかるわよ」
「アリア、私たちはクラムを責めていたわけではないぞ」
「そう。ならいいわ。でもそれでお兄様がそんな表情してるってことは、原因があるでしょ?」
「アリア。やめなさい」
「お兄様が言うならやめるわ。でも気にしないでね。お兄様はもっと好きなようにしたらいいと思うわ」
いいのか? 今でも十分好きにやってるつもりだが。
「なんで私を撫でるのよ!」
好きにしたらいいと言うから、一応こいつも可愛い妹だし撫でたら真っ赤になって怒られた。なんでだ?
「もう、何しに来たのか忘れたじゃない……あぁ、思い出した。お兄様、これ、お土産。重いものは馬車に乗せてたからお父様とお母様にもう渡したのか聞こうと思ったんだけど」
どういうことだ。これが本当にあのわがまま放題だった末の妹なのだろうか?
『お土産買ってきたわよ、代金頂戴。3倍ね』とか平気で言うあの生意気なメスガキはどこに行った???
「『お土産買ってきたわよ、代金頂戴。3倍ね』とか平気で言うあの生意気なメスガキはどこに行った???」
「ちょっとお兄様! それ心の声だと思うけど、全部出てるわよ!」
「えぇ???」
すまん、つい口に出すべきだとか思ってしまった。
「まったく。そんなんだからモテなくていつまでも独身なのよ」
「急に抉るのやめれ!」
「それにどうなったの? もうエフィに求婚した?」
「ばっ……」
なんでお前がそれを?
しかも父さんとミトラ様がいる前で言うか???
「クラム殿? もしかして知っているのか?」
「ナニヲデスカ?」
「父さん、ミトラ様、ロイドを救えなかったことは謝ります。すみません」
ようやく状況も、そして2人の感情も落ち着いてきたころ、俺はその言葉を吐いた。
我ながら酷い。ただただ許してほしいという逃避に近い行動だと思う。
もし僕が父さんだったら一発くらい殴ると思う。
もちろん、どうやったとしてもロイドは死んでいた。
その死に方の中では最もましなものになったはずだ。
まぁ、齧られて咀嚼されるというのはましな死に方ではないが、一瞬で死ねただろうから痛みや苦しみは少なかっただろう。
騙されて処刑されるとか、非合法の魔道具につながれて永久に魔力供給のタンクにされるとか、生きながらゆっくり削られていくとか、好きになった相手が俺に求愛するのを傍観させられるのよりはましなはずだ。
最後のは特に問題ないんじゃないかって?
えっ? 聞きたい?
エフィが死んだ世界線の話なんだけど、俺が怒って出国し、隣国で出世したらしいんだよ。
それで戦争でこの国を倒し、高位貴族を全員捕えてさ。
で、王女様をはじめ女の子達には散々な未来が待ってるわけだけど、女の子たちが助かりたい一心で俺に求愛するけど散々な行為が展開され、さらにその姿を縛り付けられて全部見せられた後、男どもも全員処刑するらしくてさ……これ以上はやめておこう。
まぁどの未来も酷いわけ。
呪われてるんじゃないかってくらいにな。
だからまぁ、そもそも本人の言動が気に入らないから助ける気もなかったけど、父さんとミトラ様のためにも何とかしようとはしてみたわけ。
でもダメだった。
それでも3発くらい殴られる覚悟はしてる。
どんなやつでも子供は子供。誰かに当たらないと気持ちも収まらないでしょ?
ならいっそ、諦めて一番手軽な隔離を選び、その間にロイドは死んでしまってました、なんて状況を作った俺に当たってくれ。
エフィに当たられるより何倍もましだよ。
そう思って両頬を差し出したんだが、張り手も、パンチも、魔法も、罵声も飛んでこなかった。
「クラム……」
「クラム殿、方々に気を使った立ち回りに感謝する。また、私たちを助けてくれてありがとう」
むしろお礼を言われた。
なんでだよ。
当たっていいんだよ?
当たってくれよ。
俺が……楽な選択肢を選んだ俺が後悔するだろ?
「あと、殴られるために顔を前に出すのはやめなさい。あなたが私たちのためにしてくれたことはもうわかっているのだから。さっき見せてくれた"人物史”の結果。あれだけじゃないんでしょ? まったく。魔力消費の激しい魔法なのに、何回使ったの? あんなに自然に見せてくれていたけど、それ以外にもいっぱいあるんでしょ?」
「……はい」
「それくらいわかるわよ。ロイドがどれだけ酷いことをしても、あなたはずっと見てくれていたのを知ってるの。もちろん、エフィと比べるべくもないけど、そんなの弟と妹では違うし、ましてやあなたのことを敵視していた弟よ。今の結果は私とハミルの責任であって、あなたのせいじゃないわ」
わかった……。
わかったからもうやめてくれ。
そんな優しさ。欲望にまみれた俺に向ける必要ないんだ。
「ごめんなさい。クラム殿。そしてありがとうございます。もうハミルなんか引退させるか、死ぬまでこき使っていいから、あなたの自由にしていいのよ」
俺はミトラ様に抱きしめられた。
理由は知らないけど、この方はずっと俺を子供として扱ってくれた。
泥棒猫の子供みたいなもんだと思うんだが、何かしら事情があるのかもしれないが……抱擁が優しく、暖かかったのは事実だ。
「お父様、お母様……って、どうしたの?」
「アリア……」
「なんでお兄様が泣いてるの? まさかロイドのこと? 二人ともやめてよね。ロイドが死んだことでお兄様を責めるなら筋違いもいいとこよ? あのクズ。何回言っても聞かないんだから」
いや、お前に諭されたり慰められるとかないから。
「なによその失礼な表情は。私だってお兄様の優しさと、ロイドがクズだったことくらいわかるわよ」
「アリア、私たちはクラムを責めていたわけではないぞ」
「そう。ならいいわ。でもそれでお兄様がそんな表情してるってことは、原因があるでしょ?」
「アリア。やめなさい」
「お兄様が言うならやめるわ。でも気にしないでね。お兄様はもっと好きなようにしたらいいと思うわ」
いいのか? 今でも十分好きにやってるつもりだが。
「なんで私を撫でるのよ!」
好きにしたらいいと言うから、一応こいつも可愛い妹だし撫でたら真っ赤になって怒られた。なんでだ?
「もう、何しに来たのか忘れたじゃない……あぁ、思い出した。お兄様、これ、お土産。重いものは馬車に乗せてたからお父様とお母様にもう渡したのか聞こうと思ったんだけど」
どういうことだ。これが本当にあのわがまま放題だった末の妹なのだろうか?
『お土産買ってきたわよ、代金頂戴。3倍ね』とか平気で言うあの生意気なメスガキはどこに行った???
「『お土産買ってきたわよ、代金頂戴。3倍ね』とか平気で言うあの生意気なメスガキはどこに行った???」
「ちょっとお兄様! それ心の声だと思うけど、全部出てるわよ!」
「えぇ???」
すまん、つい口に出すべきだとか思ってしまった。
「まったく。そんなんだからモテなくていつまでも独身なのよ」
「急に抉るのやめれ!」
「それにどうなったの? もうエフィに求婚した?」
「ばっ……」
なんでお前がそれを?
しかも父さんとミトラ様がいる前で言うか???
「クラム殿? もしかして知っているのか?」
「ナニヲデスカ?」
180
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜
白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。
私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。
けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?
関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。
竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。
『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』
❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。
*乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。
*表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。
*いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。
*他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
やり直し悪女は転生者のヒロインと敵対する
光子
恋愛
ああ、どうしてこんなことになってしまったんだろう……
断頭台を登る足が震える。こんなところで死にたくないと、心の中で叫んでいる。
「《シルラ》、君は皇妃に相応しくない! その罪を悔い、死で償え!」
私に無情にも死を告げるのは、私の夫である《キッサリナ帝国》の皇帝陛下 《グラレゴン》で、その隣にいるのは、私の代わりに皇妃の座に収まった、《美里(みさと)》と呼ばれる、異世界から来た転生者だった。
「さようならシルラ、また、来世で会えたら会いましょうね。その時には、仲良くしてくれたら嬉しいな!」
純粋無垢な笑顔を浮かべ、私にお別れを告げる美里。
今の人生、後悔しかない。
もしやり直せるなら……今度こそ間違えない! 私は、私を大切に思う人達と、自分の幸せのために生きる! だから、お願いです女神様、私の人生、もう一度やり直させて……! 転生者という、未来が分かる美里に対抗して、抗ってみせるから! 幸せになってみせるから! 大切な人を、今度こそ間違えたりしないから!
私の一度目の人生は幕を閉じ――――
――――次に目を覚ました時には、私は生家の自分の部屋にいた。女神様の気まぐれか、女神様は、私の願いを叶えて下さったのだ。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。魔物もいます。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる