義妹が婚約破棄された。その方が幸せになることを知っているので流したが、それ以上はさせないぜ!?

蒼井星空

文字の大きさ
35 / 46

第35話 強引に問い詰めても良いことはないどころか自爆して盛大な土下座を披露することになった件

しおりを挟む
□学院のヴェルト教授の研究室にて

「で、私のところに来たと」
俺が急いで部下を研究室に派遣したところ、『ヴェルト教授は慌てたご様子でせめて午後からにしてほしい。それまでには準備を整えておくから!』と回答があった。
だから、少しだけ時間を潰した。
 
何をして時間を潰したのかは内緒だけど、カーシャが賑やかだった……。
 

そうして言われた通りの時間に研究室を訪ねた。
普段とは違って、ちょっとくたびれた白衣に疲れた顔をした教授が出迎えてくれた。
着ているものもいつもの煽情的な服じゃなくて、平凡で飾り気のない部屋着みたいな服だった。

正直こっちの方が何倍もいいな。
もともと綺麗な人だし、スタイルも良いのはわかるから、あんな下品でエロい服なんか着る必要ないのにな。
何かを隠しているかのような……。まぁいいか。今はエマ・ヴェルトについて聞くのが先決だ。

「なにが『で』なのかわからないけど、エマ・ヴェルトという女性の痕跡を追ってここに辿り着いたのは確かだ」
「えっ?」
俺は注意深く観察しながら反応を窺ったが、そんな必要ないくらい露骨に驚いた表情をした。
さあ言ってごらん? なにを隠しているのかな?

「人違いだと言ったらわかってくれるか?」
いやいや、教授がエマ・ヴェルトだなんて思っていない。そもそもあなたは俺が学院にいた時から変態研究者だったし、名前もエマじゃないし、"人物史"で国王と接点がないことはわかっている。

「知ってることがあれば教えて欲しいんだ。頼む」
「結婚してくれるなら……」
なんでだよ。どうして人探しで質問にやって来て結婚しなきゃいけないんだよ。
そういうのは人生最大の起死回生の幸運を求めるどこかの可哀そうな学生さんにでもしてあげたら喜んでくれるんじゃないか?
それに俺はもうエフィとの結婚を決めたので、別の人を狙って欲しい。

「お邪魔したな」
「ちょっとは考えて! 私は何か知ってるのかもしれないだろ!?」
「……」
「なんでそんなに胡乱な目を……くっ、ドキドキする……」
「なにを言い出すんだよ!」
って、この人は何を言ってるんだ。疲れてるのか? そうか。そうだろう。明らかに目の下に隈がある。きっと何かの研究に没頭して徹夜でもしたんだろう。
だから錯乱してるんだな。よしわかった。


「だって……」
「だってじゃない! とっとと吐け!」
「……わかったわ。結婚は諦める。だから愛人で!……愛人でいいから!!!」
「なんでだよ!? ダメに決まってんだろ!?」
意味わからんわ!
なんでそんなに俺に全力で縋りつくんだよ!?

頑張ってその変態さんなところを夜の寝室の仲だけに押しとどめたらワンチャンひっかかる貴族だっているだろ?
そっちに賭けろよ!
俺はもうエフィに売れちゃったから空いてないんだよ!
俺の隣は右も左もエフィのものなの!
 
「でも……」
「でもじゃない。なにかを隠してるのはもうわかってるんだ。エフィを匿って優しくしてくれた恩があるから悪いようにするつもりはないけど、そんなに秘密にしようとするなら"人物史"を使えばいいのか!? あぁん!?」
普通にやったら見えなくても、条件変えてみることはできる。あなたのもとで研究したエフィーが消費魔力を減らしてくれたから、なんなら何回でもかけれるぜ?
こうなったら条件を変えながら丸裸にしてやるぜ!
覚悟しろ!

「やめてください!」
「ん?」
そこに割り込んできたのは教授の甥っ子くん。たしかアルスくんだ。いや、そんな風に俺と教授の間に飛び込まれると教授に使った"人物史"が……うん、当たっちゃったね。

「教授を虐めるのをやめてください!」
俺を睨みながら叫ぶアルスくんだったが、俺は"人物史"が見せた記録に驚きでいっぱいになった。
 
「君だったのか……」
「えっ?」
「クラム殿、頼む。やめてくれ。彼は関係ない!」
悲痛な表情で俺に諭すように呟くヴェルト教授。
なんでそんな悲しそうな顔をしている?
何か問題があるのか?

「なんでそんなに恐れてるんだ? 名乗り出ればいいだろう」
「そんなことはできない。そんなことをしたら……」
これは何か情報の行き違いがあるような気がする……。もしかしてエマ・ヴェルトはこの2人に事情を話していないのか?
もしかしたら誰の子なのかもわかっていない? いや、それなら怖がるのもおかしな話だ。

ただ、こんなやり取りをしていたらマズい気がしてきた。
なぜなら俺の愛しい人が近づいてきている気配がする。

俺を睨む甥っ子くんと、うつむく教授。
どう見ても女を襲った悪い男と、それから庇う健気な男の子の図だ……。
 
この流れはヤバい気がする。もしこんなところをエフィに見られたら……。
まずいまずいまずいまずい……。


 
ぎぃ~……。


あっ……。
 
「お兄様? なにを?」

きょとんとした顔から、驚きの顔に変わり、その後で訝しむ顔に変わったエフィが、睨むように俺を見つめながらぼそりと呟いた。
うん、これは俺の人生最大の失敗な気がするよ……。



俺は大人しくその場でどこぞの異国での最大級の謝罪方法だという土下座をしたのだった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...