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第37話 実は王子だった子に国王になるように迫った件
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「僕が新しい国王ですか……???」
当然ながらアルスくんは戸惑った。
落ち着かない様子で首を傾げている。
そりゃそうだよな。庶民として何も知らずに生きてたんだもんな。
ある日突然、たとえ尊敬する人だったとしても押しかけて来た男が『君は国王の息子だ。魔物が引き起こした事件によって国王が亡くなり、君しか王子は生きていない。王族は軒並み絶えてしまった。だから新たな国王に即位してくれ』なんて言われたら驚く。そして不安になるだろう。
だけど心配する必要はない。
その尊敬する男が全力で支えてやるからな。
えっ? 誰が尊敬する人だって? 俺に決まってるだろ? ぶっ飛ばすぞ!?
「心配することはない。俺が全力で支えるから」
「クラム様……」
「クラム殿……」
アルスくんは素直な目だが、ヴェルト教授はダメだな。目が濁っている。きっと俺の思惑でも考えてるんだろうが、なにも正解など読み取れないだろう。
何せ俺の頭の中は適当に領地を治めて残りはエフィと全力で楽しく暮らすことしか考えてないんだから。
素晴らしく仕事ができる公爵家嫡男がまさかそんなに怠惰でどうしようもないやつだなんて思いもしないだろ?
だから俺は王城では何の役職も獲得しないように動いているわけだし。
かわりに父さんは領地管理を俺に託してなんらかの大臣になることが確定している。
だからこそ、俺は畳みかける。
アルスくんに狙いを絞って。
「アルスくん。いや、アルス様。今は国の危機なのです。魔狼は無事、あなたの叔母である偉大なヴェルト教授が倒しましたが、悲しいことに王家が全滅してしまっています」
「なにか"偉大な"という言葉がむず痒いんだが、クラム殿。それにあれはみんなの実績にしたはずだ」
無視無視。
「そんな時に、この国を救うため、私は持てる力の全てを使ってあなたを探し出しました。そう! この国の希望であるあなたを!!!」
「仰々しすぎて引いてしまうんだが……急すぎるし、無理やりすぎないだろうか?」
無視無視。
「もちろん、あなたの境遇には同情するし、前国王には怒りを禁じえない。わかった。大丈夫だ。あれの骨を真黒に炭化させて棺に叩き付けて粉々にするくらいならこっそり俺の権限で許可するから!」
「いや、さすがに死人に対しての冒涜が過ぎると思うんだが……」
無視無視。
「もちろん、俺の(王国に振り分けてもいいかなと思う力の)全てを使ってあなたを支援します! ここにいるエフィも。そしてもちろんヴェルト教授も協力してくれると思います」
「なにかクラム殿の"全て"の前に物凄く含むものがあったような気がしたんだが、気のせいだろうか」
「(気のせいだから黙れ)」
「!?!?」
いかん……無視無視。
「ちょっと急すぎて混乱してしまいますが、本当に僕でいいんでしょうか? そのクラム様が探ってくださったのなら国王様の子どもなのは確かなんだと思うんですが、母は平民です。その……貴族の方々は僕なんかが国王になることに反対はしないのでしょうか?」
「そんな奴がいたら俺が全身全霊で誰にも気づかれないように秘密裏に処刑します……じゃなかった、全員の賛成を得ることは確かに不可能だと思います。でもそれはどんな人が王になろうともあり得ることです。大事なのは何かをなそうとすること、その気持ちです。アルス様は"医大なる"ヴェルト教授のもとで学ばれており、魔法にも魔道具にも明るい。普段は政権を組む内政や外交、経済に明るいものたちが政治を行いますので、ご心配なく。徐々に知見を増やしながら、望まれる方向に進むように指示を出せばいいのです。そしていざ戦闘などが発生すれば、俺……私が一網打尽にしてやります」
「物凄く力の入った説得だが、クラム殿の仕事が最後の戦争時だけのような気が……」
無視無視。
まったく。俺は国の未来を想って、まともな王様になってもらおうと崇高な思想を胸に説得を試みているというのに。
「アルス。これは重大な決断になる。国王になるにしても、辞退するにしても」
辞退の方が難しいような気もするが、今そんなことを言わなくていいよな。
アルスくんの真面目な表情は一生懸命考えてくれているように思う。
なにせ変態教授と魔法全振りのエフィをずっと世話してくれていた子だ。
忍耐力、真面目さ、人好きのする笑顔に、包容力、生活力があるのは間違いない。それに頭もよさそうだ。
はっきり言って、彼が担がれてくれるなら上手くやる自信が俺にはある。
「クラム様……その、支えてくれるというのは本当ですか?」
「もちろんです。望まれる通りにするつもりです。魔狼によって王族がほぼ絶え、高位貴族の何人もが代替わりした今の時点では派閥などを気にする必要もないです。だからこそ予算も少ないですが……でも、そのおかげで暫定政権で父と私は自由に動いているわけです。魔石鉱山がありますので、魔道具や資金面での援助もできます」
「わかりました。叔母さん……いえ。ヴェルト教授。僕は国王になります。クラム様、どうぞよろしくお願いいたします」
いよっしゃ~~~~~!!!!!!!!!!!!!!
当然ながらアルスくんは戸惑った。
落ち着かない様子で首を傾げている。
そりゃそうだよな。庶民として何も知らずに生きてたんだもんな。
ある日突然、たとえ尊敬する人だったとしても押しかけて来た男が『君は国王の息子だ。魔物が引き起こした事件によって国王が亡くなり、君しか王子は生きていない。王族は軒並み絶えてしまった。だから新たな国王に即位してくれ』なんて言われたら驚く。そして不安になるだろう。
だけど心配する必要はない。
その尊敬する男が全力で支えてやるからな。
えっ? 誰が尊敬する人だって? 俺に決まってるだろ? ぶっ飛ばすぞ!?
「心配することはない。俺が全力で支えるから」
「クラム様……」
「クラム殿……」
アルスくんは素直な目だが、ヴェルト教授はダメだな。目が濁っている。きっと俺の思惑でも考えてるんだろうが、なにも正解など読み取れないだろう。
何せ俺の頭の中は適当に領地を治めて残りはエフィと全力で楽しく暮らすことしか考えてないんだから。
素晴らしく仕事ができる公爵家嫡男がまさかそんなに怠惰でどうしようもないやつだなんて思いもしないだろ?
だから俺は王城では何の役職も獲得しないように動いているわけだし。
かわりに父さんは領地管理を俺に託してなんらかの大臣になることが確定している。
だからこそ、俺は畳みかける。
アルスくんに狙いを絞って。
「アルスくん。いや、アルス様。今は国の危機なのです。魔狼は無事、あなたの叔母である偉大なヴェルト教授が倒しましたが、悲しいことに王家が全滅してしまっています」
「なにか"偉大な"という言葉がむず痒いんだが、クラム殿。それにあれはみんなの実績にしたはずだ」
無視無視。
「そんな時に、この国を救うため、私は持てる力の全てを使ってあなたを探し出しました。そう! この国の希望であるあなたを!!!」
「仰々しすぎて引いてしまうんだが……急すぎるし、無理やりすぎないだろうか?」
無視無視。
「もちろん、あなたの境遇には同情するし、前国王には怒りを禁じえない。わかった。大丈夫だ。あれの骨を真黒に炭化させて棺に叩き付けて粉々にするくらいならこっそり俺の権限で許可するから!」
「いや、さすがに死人に対しての冒涜が過ぎると思うんだが……」
無視無視。
「もちろん、俺の(王国に振り分けてもいいかなと思う力の)全てを使ってあなたを支援します! ここにいるエフィも。そしてもちろんヴェルト教授も協力してくれると思います」
「なにかクラム殿の"全て"の前に物凄く含むものがあったような気がしたんだが、気のせいだろうか」
「(気のせいだから黙れ)」
「!?!?」
いかん……無視無視。
「ちょっと急すぎて混乱してしまいますが、本当に僕でいいんでしょうか? そのクラム様が探ってくださったのなら国王様の子どもなのは確かなんだと思うんですが、母は平民です。その……貴族の方々は僕なんかが国王になることに反対はしないのでしょうか?」
「そんな奴がいたら俺が全身全霊で誰にも気づかれないように秘密裏に処刑します……じゃなかった、全員の賛成を得ることは確かに不可能だと思います。でもそれはどんな人が王になろうともあり得ることです。大事なのは何かをなそうとすること、その気持ちです。アルス様は"医大なる"ヴェルト教授のもとで学ばれており、魔法にも魔道具にも明るい。普段は政権を組む内政や外交、経済に明るいものたちが政治を行いますので、ご心配なく。徐々に知見を増やしながら、望まれる方向に進むように指示を出せばいいのです。そしていざ戦闘などが発生すれば、俺……私が一網打尽にしてやります」
「物凄く力の入った説得だが、クラム殿の仕事が最後の戦争時だけのような気が……」
無視無視。
まったく。俺は国の未来を想って、まともな王様になってもらおうと崇高な思想を胸に説得を試みているというのに。
「アルス。これは重大な決断になる。国王になるにしても、辞退するにしても」
辞退の方が難しいような気もするが、今そんなことを言わなくていいよな。
アルスくんの真面目な表情は一生懸命考えてくれているように思う。
なにせ変態教授と魔法全振りのエフィをずっと世話してくれていた子だ。
忍耐力、真面目さ、人好きのする笑顔に、包容力、生活力があるのは間違いない。それに頭もよさそうだ。
はっきり言って、彼が担がれてくれるなら上手くやる自信が俺にはある。
「クラム様……その、支えてくれるというのは本当ですか?」
「もちろんです。望まれる通りにするつもりです。魔狼によって王族がほぼ絶え、高位貴族の何人もが代替わりした今の時点では派閥などを気にする必要もないです。だからこそ予算も少ないですが……でも、そのおかげで暫定政権で父と私は自由に動いているわけです。魔石鉱山がありますので、魔道具や資金面での援助もできます」
「わかりました。叔母さん……いえ。ヴェルト教授。僕は国王になります。クラム様、どうぞよろしくお願いいたします」
いよっしゃ~~~~~!!!!!!!!!!!!!!
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