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第1章 なんで私が追放なのよ!
第6話 理想の彼氏への第一歩
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side 精霊術師エメリア
ギルド職員から協力を求めている人がいると聞いて、断ってこの場を去ろうとしたのですが……
あろうことか、この不愛想で明らかに粗野な雰囲気を出す男は私の腕を掴みました。
無礼な……。
私はギルド職員を睨みました。
紹介しようとしたのはこの男のことでしょう。
ありえません。
この私にこんな……。
「どうか、聞いてほしい」
しかし、この男は私の腕を取ったまま言葉を続けます。
力を尽くしたパーティーに捨てられた私にはこんな男が相応しいとでも言うのでしょうか?
「すみません、エメリア様。レオメルド様も落ち着いてください。女性にそのように迫っては嫌われますよ?」
ギルド職員は申し訳なさそうな顔で謝ってきますが、いいから早く解放してほしいです。
「……すまない。どうしても話を聞いてほしくて……いや、言い訳だな。申し訳ない。女性に対する接し方ではなかった」
しかし、ギルド職員の言葉を聞いたこの男は、今にもこの場にいる全ての人を切り殺しそうな雰囲気を出しているにもかかわらず、素直に謝ってきました。
ギルドが配慮している相手で、抜身の剣みたいな人なのに、自己反省と謝罪ができる男……。
もしかすると思ったより酷い人ではないのかもしれませんね。
アホ勇者よりはましな気がしてきました。
それであれば、感傷に引きずられたまま話も聞かずに立ち去るのは失礼でしょうか。
「いえ、こちらこそ話も聞かずにその……逃げようとしてすみませんでした」
私もひとまず謝っておく。
「いや、間違いなく怖がらせただろうから……すまない」
謝罪に謝罪を返されてしまいました……。
この方は明らかに戦いに身を置く方ですね。
きっと会話に慣れていないのでしょう。
「それで、話を聞いてもらえるだろうか?」
「あなたが勇者パーティーを追放された私を笑いに来たということでないのであれば、お聞きします」
「なっ……決してそんなことはしない!……というか追放だと?」
どうやら私の事情はご存じなかったようです。
この男は目を見開いて驚いています。
意地悪な発言になってしまいました。
私は少し申し訳なさを感じながらギルド職員が用意してくれた部屋に入りました。
「……ということがあって、私は今無所属なのです」
「そうだったのか。それは知らぬこととはいえ、失礼を。そんな大変なときに強引に声をかけて、しかも腕を取ってしまった。本当に申し訳ない」
改めて謝罪されました。
雰囲気は怖いですが真摯だし、謝罪もできる……良い人に思えてきました。
「では、お話というのは?」
彼は話してくれました。
あまり話慣れていないのか、少し長かったので要約します。
彼はロデリグ大陸にかつてあったラオべルグラッド王国の王族で、ロデリグ大陸において魔族と戦い続けてきた剣士。
今回私たちがルーディア大陸を解放し、ロデリグ大陸との間を行き来できる転移の魔道具を解放したため、それを使ってこちらに仲間を募りに来たそうです。
そして、ギルドで話を聞き、私に声をかけてきた。
ギルド職員がパーティー離脱を聞いてきたのは、紹介可能かどうかを確認していたのだろう。
彼に協力するのであれば、転移の魔道具の許可が維持できるようです。
これは天啓かもしれませんね。
私はすでにロデリグ大陸での攻略の失敗を克服しています。
再びロデリグ大陸に渡って救いを求める人を助けたいという想いは私の中で燃え続けています。
それに、彼はよく見ると整った顔立ちだし、ナチュラルに癖のある髪の毛を整えればきっとカッコいい。
……野性味あふれる髭だけは邪魔ですが......剃ってくれるでしょうか?
さらに、ずっと村のために戦ってきた点はアホ勇者と違って超好印象だし、少し怖かったのは最初だけで、今は丁寧だし。
共に戦う相手として悪くないですね。
アホ勇者たちに目にものを見せてやるにはちょうどいいかもしれない。
私は、弟を魔族に殺されました。
当時の私はまだ6歳でしたが、その悔しさ、悲しさは決して忘れていません。
魔族を滅ぼそうなどとは、滅ぼせるなどとは考えていません。
相手にも事情も家族も仲間もあるでしょう。
これは種族間の縄張り争いだということは既に学びました。
その中で私はできることをしますし、仲間や家族は助けたいのです。
この方と共に行けば、私はきっと戦えます。
利己的でも自分勝手でも強欲でもない方でしょうから。
「わかりました」
「えっ?」
私が答えると、彼は驚いた顔で私を見ます。
なぜ驚くのでしょうか。あなたが助けを求めたのですよ?
「正直、断られると思っていた。あっ、いや……ダメ元でお願いしたのは、申し訳ないけど……」
また眉をしょげさせながら謝っています。
「レオメルドさんは私が一緒に行っても嬉しくないですか?」
「そっ、そんなことは。嬉しい……嬉しいぞ……」
粗野な人だと思ったけれど、戸惑う姿は可愛いですね。
「なら、嬉しい、ありがとうと言ってもらった方が、私は嬉しいですよ?」
「……あぁ、すまな……いや、ありがとう。エメリアさん」
ふふふ。
笑った顔はなかなか良いですね……。
「では決まりです。これからは仲間なのですからさん付けはやめましょう」
「本当に……いや、わかった。ありがとう。その……エメリア、よろしく」
「えぇ、こちらこそ、レオメルド」
「……」
本当に可愛い人ですね。
剣呑な雰囲気のまま戸惑っているというのはある意味器用で面白いです。
「ついでに、お髭を剃ってもらえたら嬉しいです」
「わかった……」
やりました!!!!
※※※※
ここまでお読みいただきありがとうございます!
次回からまた勇者ざまぁしていきます。
よろしくお願いします。
もし面白いと思っていただけたらお気に入り登録や応援、コメントを頂けると作者が舞い上がります。よろしくお願いします!
ギルド職員から協力を求めている人がいると聞いて、断ってこの場を去ろうとしたのですが……
あろうことか、この不愛想で明らかに粗野な雰囲気を出す男は私の腕を掴みました。
無礼な……。
私はギルド職員を睨みました。
紹介しようとしたのはこの男のことでしょう。
ありえません。
この私にこんな……。
「どうか、聞いてほしい」
しかし、この男は私の腕を取ったまま言葉を続けます。
力を尽くしたパーティーに捨てられた私にはこんな男が相応しいとでも言うのでしょうか?
「すみません、エメリア様。レオメルド様も落ち着いてください。女性にそのように迫っては嫌われますよ?」
ギルド職員は申し訳なさそうな顔で謝ってきますが、いいから早く解放してほしいです。
「……すまない。どうしても話を聞いてほしくて……いや、言い訳だな。申し訳ない。女性に対する接し方ではなかった」
しかし、ギルド職員の言葉を聞いたこの男は、今にもこの場にいる全ての人を切り殺しそうな雰囲気を出しているにもかかわらず、素直に謝ってきました。
ギルドが配慮している相手で、抜身の剣みたいな人なのに、自己反省と謝罪ができる男……。
もしかすると思ったより酷い人ではないのかもしれませんね。
アホ勇者よりはましな気がしてきました。
それであれば、感傷に引きずられたまま話も聞かずに立ち去るのは失礼でしょうか。
「いえ、こちらこそ話も聞かずにその……逃げようとしてすみませんでした」
私もひとまず謝っておく。
「いや、間違いなく怖がらせただろうから……すまない」
謝罪に謝罪を返されてしまいました……。
この方は明らかに戦いに身を置く方ですね。
きっと会話に慣れていないのでしょう。
「それで、話を聞いてもらえるだろうか?」
「あなたが勇者パーティーを追放された私を笑いに来たということでないのであれば、お聞きします」
「なっ……決してそんなことはしない!……というか追放だと?」
どうやら私の事情はご存じなかったようです。
この男は目を見開いて驚いています。
意地悪な発言になってしまいました。
私は少し申し訳なさを感じながらギルド職員が用意してくれた部屋に入りました。
「……ということがあって、私は今無所属なのです」
「そうだったのか。それは知らぬこととはいえ、失礼を。そんな大変なときに強引に声をかけて、しかも腕を取ってしまった。本当に申し訳ない」
改めて謝罪されました。
雰囲気は怖いですが真摯だし、謝罪もできる……良い人に思えてきました。
「では、お話というのは?」
彼は話してくれました。
あまり話慣れていないのか、少し長かったので要約します。
彼はロデリグ大陸にかつてあったラオべルグラッド王国の王族で、ロデリグ大陸において魔族と戦い続けてきた剣士。
今回私たちがルーディア大陸を解放し、ロデリグ大陸との間を行き来できる転移の魔道具を解放したため、それを使ってこちらに仲間を募りに来たそうです。
そして、ギルドで話を聞き、私に声をかけてきた。
ギルド職員がパーティー離脱を聞いてきたのは、紹介可能かどうかを確認していたのだろう。
彼に協力するのであれば、転移の魔道具の許可が維持できるようです。
これは天啓かもしれませんね。
私はすでにロデリグ大陸での攻略の失敗を克服しています。
再びロデリグ大陸に渡って救いを求める人を助けたいという想いは私の中で燃え続けています。
それに、彼はよく見ると整った顔立ちだし、ナチュラルに癖のある髪の毛を整えればきっとカッコいい。
……野性味あふれる髭だけは邪魔ですが......剃ってくれるでしょうか?
さらに、ずっと村のために戦ってきた点はアホ勇者と違って超好印象だし、少し怖かったのは最初だけで、今は丁寧だし。
共に戦う相手として悪くないですね。
アホ勇者たちに目にものを見せてやるにはちょうどいいかもしれない。
私は、弟を魔族に殺されました。
当時の私はまだ6歳でしたが、その悔しさ、悲しさは決して忘れていません。
魔族を滅ぼそうなどとは、滅ぼせるなどとは考えていません。
相手にも事情も家族も仲間もあるでしょう。
これは種族間の縄張り争いだということは既に学びました。
その中で私はできることをしますし、仲間や家族は助けたいのです。
この方と共に行けば、私はきっと戦えます。
利己的でも自分勝手でも強欲でもない方でしょうから。
「わかりました」
「えっ?」
私が答えると、彼は驚いた顔で私を見ます。
なぜ驚くのでしょうか。あなたが助けを求めたのですよ?
「正直、断られると思っていた。あっ、いや……ダメ元でお願いしたのは、申し訳ないけど……」
また眉をしょげさせながら謝っています。
「レオメルドさんは私が一緒に行っても嬉しくないですか?」
「そっ、そんなことは。嬉しい……嬉しいぞ……」
粗野な人だと思ったけれど、戸惑う姿は可愛いですね。
「なら、嬉しい、ありがとうと言ってもらった方が、私は嬉しいですよ?」
「……あぁ、すまな……いや、ありがとう。エメリアさん」
ふふふ。
笑った顔はなかなか良いですね……。
「では決まりです。これからは仲間なのですからさん付けはやめましょう」
「本当に……いや、わかった。ありがとう。その……エメリア、よろしく」
「えぇ、こちらこそ、レオメルド」
「……」
本当に可愛い人ですね。
剣呑な雰囲気のまま戸惑っているというのはある意味器用で面白いです。
「ついでに、お髭を剃ってもらえたら嬉しいです」
「わかった……」
やりました!!!!
※※※※
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