なんで私が追放なのよ!はぁもういいわ。私は助けを求めてきた剣士様と、私を守ってくれる精霊たちと一緒に行くから、勇者様 あなたはどうぞご自由に

蒼井星空

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第1章 なんで私が追放なのよ!

第11話 勇者ざまぁ⑤誰が戻るかアホォ!!!……すみません、取り乱しました

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side 精霊術師エメリア

「お前!王子でもあり勇者でもある僕が戻ってきても良いと言っているんだぞ!そうか……婚約破棄になったことをひがんでいるのか?だとしたら、それも戻してやる。それならいいだろう?」
 えーと、このアホ勇者の頭をカチ割ってもよろしいでしょうか?
 
 このアホ勇者はなにをどうしたら私が婚約破棄をひがむなどという考えになるのでしょうか?

「だが、お前はやりすぎだ。父上も公爵にも確認のしようがないからと言って、あのアークウルフを倒したなんて言う嘘をつくとは」
「は?」
 したり顔で語る勇者……。
 嘘?なぜ私が嘘をつく必要があるのでしょうか?

「それもこれも僕への当てつけなんだろ?アークウルフを倒すことができず、仲間を犠牲にして戻った僕への」
「は?」
 目を閉じて悲壮な雰囲気を漂わせ始めましたね。
 しかし、あれが倒せなかったのですか?そして仲間の犠牲とは?

「そんなおまえにチャンスを与えてやろう。お前だって嘘がバレるのは避けたいはずだ。パーティーに戻って再びあのアークウルフと戦えば、今度こそ倒せるだろう。そうしたら僕もお前の嘘は黙っておいてやる」
「は?」
 目を見開いてアホそうな笑いを浮かべるアホ勇者。
 本当に蹴り出していいでしょうか?

 そもそもアークウルフなど全く苦戦もせず倒しましたし、その上位種でありあの地域のボスだったと思われるロードウルフすらあっさり倒しているのです。
 まぁ、ロードウルフを消し飛ばしたのはルクシオン様ですが。

「横で大人しく聞いていれば、あなたは何様のつもりなのですか?こんなにライエル様が言って下さっているのですから、感動の涙を流しながらパーティーに戻るべきです!」
「は?」
 アホ勇者の隣で私のことを親の仇か何かのように睨みながらも無言で聞いていたスーメリアが突然叫びました。

 今日は私の厄日なのでしょうか。
 なぜお父様に呼ばれて仕方なく帰ってきて報告を終わらせた私がこんな目にあわなければならないのでしょうか。
 一応体面もあるので蹴りだすわけにはいかないのがまた面倒です。

「いいな!お前は僕のパーティーに戻れ。2日準備に使った後は、またロデリグ大陸に飛んで……」
「お断りします!」
 アホ勇者に最後まで言わせる必要を感じませんので、途中で遮ったら口をパクパクさせています。
 誰か魚の餌でも放り込んでくださらないでしょうか?

「あなた!本当に何様のつもりですか!?」
「話は終わったのでお帰り下さい」
 スーメリアがブチ切れたようだが、私の知ったことではない。

「お前!!!」
「そもそもライエル様。あなたは私を不要だと言ってパーティーを追放されました。婚約も解消したいと。私もあなたのパーティーにいる気はありませんし、浮気ばかりのあなたと結婚するなんて考えたくもありませんでしたので、すでに父を通じて陛下にお願いして婚約は解消済みです。パーティーからの離脱も承認を得ております。そして新たにレオメルド・ラオベルグラッド様とパーティーを組んでおりますので、戻ることなど考えられません。ですので、お引き取り下さい」
 一刻も早くこの場を後にしたい私は息も切らずに説明した。

「ラオベルグラッドだと?」
「なら、ライエル様。そのレオメルド・ラオベルグラッド様もパーティーに誘えばよいのではないですか?そうすれば問題はありません」
「なるほど……」
 誰かこのバカップルを蹴りだしてくださいませんか?

「まさか僕の頼みを断ろうとしたことは噴飯ものだが、僕のパーティーに強力な剣士が入るのはありだな。しかし、その男大丈夫か?もし僕のスーメリアに色目を使ったらいくら温厚な僕でも許さないぞ?」
「まぁ、ライエル様ったら♡」
 ……この頭の中がお花畑なバカップルはレオのことまで貶めるつもりでしょうか……。
 許しませんよ……
 誰が戻るかアホォ!!!

「誰が……」 
「これは王子。いらしていたのですか?」
 私の心の声が出始めたそこへ飄々とした様子でお父様が入ってきました。

 危なかったです。
 未来の旦那様には見せられないような仕草と声音で目の前のアホ勇者カップルを口汚く罵ってしまうところでした。

 
「……これはノーザント公爵閣下。突然失礼したが、このエメリアに用があってな」
 少し気まずそうな表情を浮かべたもののすぐにそれを消して、アホ勇者は父と向かい合います。

「そうでしたか。しかし、それはさすがにやめて頂きたい。エメリアは既に正式にあなたの婚約相手ではなくなったのです。今後はまず私に相談いただきたいものですな」
 いいぞお父様。もっと言って!

「僕が公爵にわざわざ許しを得ないといけないのか?」
 しかしこのアホ勇者はやっぱりアホでした。
 お父様が丁寧にお話したにもかかわらずなにも理解していないようです。
 お父様はもうあなたに娘であるエメリア……私に関わるなと言ったのです。
 
「そう申しておりますが?」
 さすがのお父様も怒りから威圧を放ちながら答えます。

「くっ……しかし、エメリアは僕のパーティーに戻り、ともに探索をする……」
「それはお断りしました。既に正式に国王陛下の名前のもとで婚約解消とパーティー離脱がなされ、私はすでに別のかたとパーティーを組んでいると言ったはずです。そして、私もレオメルド様もあなたのパーティーに加わることはありません。」
「くっ……」
 アホ勇者が私をパーティーに戻すなどとまた言い出したので、全てを言わさず否定しておきます。

「断られたからと言って、ラオベルグラッドの王族の方も一緒にご自身のパーティーに加われと仰ったのですか?」
「ぐっ……なにが問題なのだ。あのロデリグ大陸を2人で攻略しようなどと、夢物語だぞ!それにアークウルフを倒したなんて言う嘘を黙っていてやるんだ。だったら……」
 慌てて先ほどまでのやり取りを取り乱しながら話すアホ勇者。
 お父様に睨まれて竦んでいるようです。
 
「嘘?嘘と仰ったのか?」
 そんな様子を気にせず追い込むお父様。

「そうだ!あのような強力な魔物をたった2人で倒せるものか!?」
 そして、世界は彼の頭の中で回っている……はずがないのです。
 現実を受け止めれていないようです。

「討伐履歴はギルドカードに記録されることをまさかご存じないはずがないですよね?」
「なっ……それを隠せば……」
「……」
 このアホ勇者はどれだけアホなのでしょうか。
 ギルドカードの履歴も出さずに攻略報告をするはずがないのに。

「ちなみにエメリアのギルドカードの履歴にはダイアウルフ、エルダーウフル、アークウルフにくわえてロードウルフという魔物の名前もありましたが、これについてはどうお考えになられますかな?」
 お父様がニヤニヤしながら最後の言葉を告げた。



 アホ勇者とスーメリアは帰って行きました。
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