8 / 28
第8話 発見されたダンジョンの調査
しおりを挟む
エリーゼたちがキーザの街で魔神崇拝者たちを倒してから1か月が経過した頃……
「ふぅ~ん。新しいダンジョンね。これで4か所目かしら?」
「そうでございますな。ロガルディエ、フレーヴェア、リセスに次いで今回のパルメアで4か所目でございます」
紅茶を頂きながら執務室で新聞を読んでいた私の呟きに、執事のセバスチャンがきっちりと回答してくれた。
「お嬢様。少々お行儀が……」
「いいじゃない、誰も見てないわよ」
そして片手でカップを持って、もう片方の手で新聞を抱えている私に苦言を呈してくる。
「王国は景気がいいわね。まぁ、未知のダンジョンなんて何が出てくるかわからないし、そんな怖いところに行きたくはないけれど」
私はそんなセバスチャンを無視して新聞を読み続ける。
新しいダンジョンが見つかると探索のために人が集まるし、ドロップアイテムが取れだすと市場もにぎわう。
いいことづくめだ。
「そのダンジョンの調査指令が来ていますよ」
ぷぅーーーーー
「おっ、お嬢様っ」
「また嫌がらせね!ムキーーーーーー!!!!!!!!!!」
私は口に含んでいた紅茶を全て新聞に向けて発射した後、王宮のクソどもを思い浮かべて精一杯頭の中で罵り、ナイフを刺し、ぐちゃぐちゃにした。
セバスチャンは封筒から出した指令書を私に見せようとしていたようだが、紅茶を発射した私を見て焦ったようね。
あら失礼。
つい怒りと恨みが許容範囲を超えてしまいましたわ。
おほほほほほほ。
「落ち着かれましたかな?では、今回の依頼の確認から行いましょう」
あの後新聞から垂れた紅茶で服を汚してしまったので着替えた私は再び執務室でセバスチャンとソファーで向き合っている。
テーブルには指令書を置いている。
封筒?破って切り刻んで燃やしたわ。
「指令内容はダンジョンの5層までの調査ね」
この世界にはたまにダンジョンが発見される。
誰が作ったのかはわかならいけど、ある日忽然とそこに存在しているとても奇妙なもの。
出現する時には神殿に神託が降りるから、恐らく神様達が作ってるんだろうけど目的はわからない。
どんな敵が出るのかとか、どんなアイテムが手に入るのかとか、そもそも何層あるのかとか、出現した時には全く分からない。
「神託の内容を確認させましたが低ランクとのことでしたので、怪しい点はないかと」
「そう……」
てっきり王宮が報酬をケチって探索階層を少なくしてきたのだと思ったのだけど、違うみたいね。
ダンジョンには高、中、低のランクがあって、それぞれたいてい20層、10層、5層の構造になっている。
まぁ、低ランクなら特に危険はないでしょう。
でも、怪しい。
依頼の書類に特に怪しいところはない。
それが、怪しい。
「今回はライラとダリウスとエレノアでよろしいでしょうか?」
「カリナとグレゴールは別件対応中だものね。ただ、警戒はしておきたいわ」
あの王太子のことだから、きっとなにかあるはず。
さすがに神託を偽るような力はないはずだけど。
そもそも真っ当な依頼を"王宮の犬"と蔑んでいる相手に渡す必要はないのよね。
そんなものはいくらでも受けたい人たちがいるはず。
わざわざ私たちのところに回したということは、絶対に何かある。
「その他となると、今はほとんどで払っておりますので、不肖、このセバス……」
「アッシュに頼むわ」
「わかりました」
なんであなたが腕まくりしてたのかしら?あなたがここにいないと依頼の授受も伝達も家のことも何もかもが滞るからダメよ。
前から言ってる後進を育ててくれたら考えるわ。
「アッシュ、助けて」
なんて言えば来てくれるわよね、きっと間違いなく……
「どうした?エリー」
「……」
えっ、もう来たんですけど、この人怖い……。
なんでゆったりとソファーに座ってるの?
「そうか。ダンジョンか。エリーについて行けばいいんだな?」
「……」
私は驚いたの。アッシュが平然と私の紅茶を勝手に飲んだからじゃないわ。
今さら間接キスを気にするほど乙女でもないし、彼が私の肩に手を回していることでもないわ。それはもう慣れたの。
私が驚いたのは、依頼の内容を確認するや否や出撃して行って気付いた時には完了してるなんて無茶苦茶なことをせずにこの場で自制して座っていたことによ。
人は成長するものなのね。
ただ、お説教は確定。
まずは状況を確認しなくては。
「アッシュ?私、この前のキーザの件のときに人の頭は覗くなって言ったわよね?」
「あぁ。今回はエリーのは覗いてないぞ?」
なんですって?ここも自制してる?
もしかしてテーブルに置いてある指令書を読んだだけ?
明日、魔法の嵐でも降ってくるんじゃないでしょうね!?
「ん?私のは?」
「あぁ。そこのおじさんのを覗いたんだ」
「わっ、わたしのですか???いつの間に????」
「覗いてるじゃないの!!!」
「えぇ、エリー以外もダメなのか?いや、しかしそれは……」
何をぶつぶつ言っているの?
現在進行形で誰かの頭を覗いてるとか言わないわよね?
もう、怖いからもういいわ!
「あと、存在感知だっけ?あれはやらないでって」
「あぁ、ちゃんと存在感知は切ったぞ?」
「じゃあ今のは何なの?なんで呟いただけでやってこれるのよ」
「それは愛の力だな。なんか呼ばれる声が聞こえたんだ」
「……」
なおさら悪いわ!
どういうこと?
想いが強まりすぎてってこと?怖いし重いわ!
これからもう一切アッシュって呟けないじゃないのよ!
もう、誰か助けて……。
いや、ダメよね。
指令をこなさなくちゃ。
「アッシュに手伝ってほしいのよ♡」
「まかせろ!」
「ふぅ~ん。新しいダンジョンね。これで4か所目かしら?」
「そうでございますな。ロガルディエ、フレーヴェア、リセスに次いで今回のパルメアで4か所目でございます」
紅茶を頂きながら執務室で新聞を読んでいた私の呟きに、執事のセバスチャンがきっちりと回答してくれた。
「お嬢様。少々お行儀が……」
「いいじゃない、誰も見てないわよ」
そして片手でカップを持って、もう片方の手で新聞を抱えている私に苦言を呈してくる。
「王国は景気がいいわね。まぁ、未知のダンジョンなんて何が出てくるかわからないし、そんな怖いところに行きたくはないけれど」
私はそんなセバスチャンを無視して新聞を読み続ける。
新しいダンジョンが見つかると探索のために人が集まるし、ドロップアイテムが取れだすと市場もにぎわう。
いいことづくめだ。
「そのダンジョンの調査指令が来ていますよ」
ぷぅーーーーー
「おっ、お嬢様っ」
「また嫌がらせね!ムキーーーーーー!!!!!!!!!!」
私は口に含んでいた紅茶を全て新聞に向けて発射した後、王宮のクソどもを思い浮かべて精一杯頭の中で罵り、ナイフを刺し、ぐちゃぐちゃにした。
セバスチャンは封筒から出した指令書を私に見せようとしていたようだが、紅茶を発射した私を見て焦ったようね。
あら失礼。
つい怒りと恨みが許容範囲を超えてしまいましたわ。
おほほほほほほ。
「落ち着かれましたかな?では、今回の依頼の確認から行いましょう」
あの後新聞から垂れた紅茶で服を汚してしまったので着替えた私は再び執務室でセバスチャンとソファーで向き合っている。
テーブルには指令書を置いている。
封筒?破って切り刻んで燃やしたわ。
「指令内容はダンジョンの5層までの調査ね」
この世界にはたまにダンジョンが発見される。
誰が作ったのかはわかならいけど、ある日忽然とそこに存在しているとても奇妙なもの。
出現する時には神殿に神託が降りるから、恐らく神様達が作ってるんだろうけど目的はわからない。
どんな敵が出るのかとか、どんなアイテムが手に入るのかとか、そもそも何層あるのかとか、出現した時には全く分からない。
「神託の内容を確認させましたが低ランクとのことでしたので、怪しい点はないかと」
「そう……」
てっきり王宮が報酬をケチって探索階層を少なくしてきたのだと思ったのだけど、違うみたいね。
ダンジョンには高、中、低のランクがあって、それぞれたいてい20層、10層、5層の構造になっている。
まぁ、低ランクなら特に危険はないでしょう。
でも、怪しい。
依頼の書類に特に怪しいところはない。
それが、怪しい。
「今回はライラとダリウスとエレノアでよろしいでしょうか?」
「カリナとグレゴールは別件対応中だものね。ただ、警戒はしておきたいわ」
あの王太子のことだから、きっとなにかあるはず。
さすがに神託を偽るような力はないはずだけど。
そもそも真っ当な依頼を"王宮の犬"と蔑んでいる相手に渡す必要はないのよね。
そんなものはいくらでも受けたい人たちがいるはず。
わざわざ私たちのところに回したということは、絶対に何かある。
「その他となると、今はほとんどで払っておりますので、不肖、このセバス……」
「アッシュに頼むわ」
「わかりました」
なんであなたが腕まくりしてたのかしら?あなたがここにいないと依頼の授受も伝達も家のことも何もかもが滞るからダメよ。
前から言ってる後進を育ててくれたら考えるわ。
「アッシュ、助けて」
なんて言えば来てくれるわよね、きっと間違いなく……
「どうした?エリー」
「……」
えっ、もう来たんですけど、この人怖い……。
なんでゆったりとソファーに座ってるの?
「そうか。ダンジョンか。エリーについて行けばいいんだな?」
「……」
私は驚いたの。アッシュが平然と私の紅茶を勝手に飲んだからじゃないわ。
今さら間接キスを気にするほど乙女でもないし、彼が私の肩に手を回していることでもないわ。それはもう慣れたの。
私が驚いたのは、依頼の内容を確認するや否や出撃して行って気付いた時には完了してるなんて無茶苦茶なことをせずにこの場で自制して座っていたことによ。
人は成長するものなのね。
ただ、お説教は確定。
まずは状況を確認しなくては。
「アッシュ?私、この前のキーザの件のときに人の頭は覗くなって言ったわよね?」
「あぁ。今回はエリーのは覗いてないぞ?」
なんですって?ここも自制してる?
もしかしてテーブルに置いてある指令書を読んだだけ?
明日、魔法の嵐でも降ってくるんじゃないでしょうね!?
「ん?私のは?」
「あぁ。そこのおじさんのを覗いたんだ」
「わっ、わたしのですか???いつの間に????」
「覗いてるじゃないの!!!」
「えぇ、エリー以外もダメなのか?いや、しかしそれは……」
何をぶつぶつ言っているの?
現在進行形で誰かの頭を覗いてるとか言わないわよね?
もう、怖いからもういいわ!
「あと、存在感知だっけ?あれはやらないでって」
「あぁ、ちゃんと存在感知は切ったぞ?」
「じゃあ今のは何なの?なんで呟いただけでやってこれるのよ」
「それは愛の力だな。なんか呼ばれる声が聞こえたんだ」
「……」
なおさら悪いわ!
どういうこと?
想いが強まりすぎてってこと?怖いし重いわ!
これからもう一切アッシュって呟けないじゃないのよ!
もう、誰か助けて……。
いや、ダメよね。
指令をこなさなくちゃ。
「アッシュに手伝ってほしいのよ♡」
「まかせろ!」
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。
継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。
しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。
彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。
2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる