25 / 28
第25話 ざまぁの時間①真相究明
しおりを挟む
「帝国への訪問ご苦労だった」
「はっ……」
私は今、クリストファー王子とともに王宮の謁見の間で国王陛下に帝国訪問完了の報告を行っている。
王子が先触れで帝国騎士から襲撃を受けたこと、そしてそれを撃退して1,000名以上の帝国騎士を倒したことを報告していた。
その報によって王宮は大騒ぎになったらしい。
王子に喝さいを送ったのは宰相をはじめとするクリス王子の支援者たちで、苦虫を嚙み潰したような顔で軽挙を非難したのはアホ王太子や王宮魔術師長たちだった。
なのになぜかこの場にはそんな両陣営に所属する王族、貴族たちが集められていた。
「帝国騎士を打ち破り、クリストファー王子を守り抜いた騎士たちと、ルイン伯爵家にも褒美を与える。よくやった」
「はっ!」
「あい。ありがとうございます」
そしてなぜか私たちは宰相閣下から褒められている。
えっ?なにこの状況……。
「宰相!異議を申し立てる。帝国は王国との諍いを不幸な情報伝達の誤りによる事故と発表しております。にもかかわらず帝国騎士に打ち勝ったことを褒めるのはいかがなものでしょうか!?」
そしてアホ王太子が予想外にはっきりと非難の言葉を発した。
「そうですとも。力を増す帝国との争いは避けるべきですぞ!?」
「今はまだ間に国がありますが、いずれ国境を接するようになる可能性もあります。軽挙はつつしまれるべきでは?」
その王太子の発言をきっかけに、王太子派の貴族たちが口々に声を挙げる。
その帝国の力を少しでも削いだのだから、問題があるとは思えない。
むしろあなたたちの言う帝国の脅威を蹴散らしたのよ?
「沈まれ!」
「「「……」」」
そんな王太子と貴族たちに向かって国王が険しい表情で叫ぶ。
貴族たちは普段温和な国王が厳しい態度を取っていることに驚きつつ、口を閉じた。
「では、アレクサンダー王太子はこの度の件をどのように治めるのがいいと考えているのか?」
静まり返った謁見の間で、宰相が王太子に問うた。
「はい。この度の件は誤解のもとで起こったものだったのですから、先方の被害に対し幾ばくかの賠償を行い、話を流すのがいいでしょう」
「!?」
私は思わず声を挙げそうになったが、横にいるクリストファー王子に腕を掴まれて止められてしまった。
これを怒らずにいられますか、王子?
私たちは殺されるところだったのですよ?
それなのになぜ、相手に賠償しなければならないのでしょうか?
という思いを込めた視線を王子に送ったけど、大人しくしていろと言わんばかりに見つめ返されて終わった。
もしかしてあまり大事にするとアッシュのことがバレるとかそう言った話なのかしら?
「ふむ……それでどうする?」
今度は国王陛下が王太子に問うた。
「はい。今回のことは完全に帝国の落ち度ですが、それを許してやったことで今後の交渉を有利にできるでしょう。私としては帝国と王国の間には緩衝の役割を果たす国家を残すのが良いと思っています。その緩衝国家となる国を選び方で優位に立つために、今回の相手の失態を利用できればと考えています」
王太子は全く王太子らしくないそれっぽい意見をしたり顔で言い切った。
きっと誰かの入れ知恵でしょう。
そもそも緩衝国家など設けても帝国が力で取り払ったら意味がないのですよ???
私は王子に視線を向けますが、彼は泰然としていて特に何か声を挙げる気はないようです。
「では、そなたに与えている予算から支払う額を検討して実施せよ」
「な?」
「なぜ驚くのだ?いくら金を支払うと言っても王宮から出してしまっては立ち位置がおかしなことになるだろう。王宮としては事故とはいえ第二王子を殺されかけたのだから、甘い対応は不可能だ。それでも将来を見越して関係を築くということであれば、外務費用から出すのが当然で、それはそなたの管轄だろう」
……謁見の間の空気が変わったわね。
きっとその予算ってもう使ってしまってない、とかなんでしょうね。
これは俗に言う、ざまぁということでしょうか?
これがあるから王子は黙っていろという態度をしていたのね……。
「では、帝国との話はこれで対応は決まった」
国王陛下は焦る王太子を横目にそう宣言した。
しかし宣言はそれで終わりではなかった。
「続いて王国内部の話だ」
話しが終わったと、近しい人物に挨拶して帰ろうと考え始めていた貴族たちが一斉に国王陛下の方を向く。
どういうことだ?と。
王国内部の話とは?そんな予定は聞いていない、と。
アホ王太子は……焦ったままね。
そんなにお金がないのかしら?
また無茶な指令を出されそうで嫌だわ。
「陛下。王国内部の話とは?」
彼も話を事前に聞いていなかったのか、宰相が国王に尋ねた。
「今から話すのは壮大な企みについてだ。悪い方にな。余は国王としてこれを明るみに出し、断罪せねばならん。のう……王宮魔術師長。レゼシア公爵よ」
「なっ???」
えっ?どういうこと?
「はっ……」
私は今、クリストファー王子とともに王宮の謁見の間で国王陛下に帝国訪問完了の報告を行っている。
王子が先触れで帝国騎士から襲撃を受けたこと、そしてそれを撃退して1,000名以上の帝国騎士を倒したことを報告していた。
その報によって王宮は大騒ぎになったらしい。
王子に喝さいを送ったのは宰相をはじめとするクリス王子の支援者たちで、苦虫を嚙み潰したような顔で軽挙を非難したのはアホ王太子や王宮魔術師長たちだった。
なのになぜかこの場にはそんな両陣営に所属する王族、貴族たちが集められていた。
「帝国騎士を打ち破り、クリストファー王子を守り抜いた騎士たちと、ルイン伯爵家にも褒美を与える。よくやった」
「はっ!」
「あい。ありがとうございます」
そしてなぜか私たちは宰相閣下から褒められている。
えっ?なにこの状況……。
「宰相!異議を申し立てる。帝国は王国との諍いを不幸な情報伝達の誤りによる事故と発表しております。にもかかわらず帝国騎士に打ち勝ったことを褒めるのはいかがなものでしょうか!?」
そしてアホ王太子が予想外にはっきりと非難の言葉を発した。
「そうですとも。力を増す帝国との争いは避けるべきですぞ!?」
「今はまだ間に国がありますが、いずれ国境を接するようになる可能性もあります。軽挙はつつしまれるべきでは?」
その王太子の発言をきっかけに、王太子派の貴族たちが口々に声を挙げる。
その帝国の力を少しでも削いだのだから、問題があるとは思えない。
むしろあなたたちの言う帝国の脅威を蹴散らしたのよ?
「沈まれ!」
「「「……」」」
そんな王太子と貴族たちに向かって国王が険しい表情で叫ぶ。
貴族たちは普段温和な国王が厳しい態度を取っていることに驚きつつ、口を閉じた。
「では、アレクサンダー王太子はこの度の件をどのように治めるのがいいと考えているのか?」
静まり返った謁見の間で、宰相が王太子に問うた。
「はい。この度の件は誤解のもとで起こったものだったのですから、先方の被害に対し幾ばくかの賠償を行い、話を流すのがいいでしょう」
「!?」
私は思わず声を挙げそうになったが、横にいるクリストファー王子に腕を掴まれて止められてしまった。
これを怒らずにいられますか、王子?
私たちは殺されるところだったのですよ?
それなのになぜ、相手に賠償しなければならないのでしょうか?
という思いを込めた視線を王子に送ったけど、大人しくしていろと言わんばかりに見つめ返されて終わった。
もしかしてあまり大事にするとアッシュのことがバレるとかそう言った話なのかしら?
「ふむ……それでどうする?」
今度は国王陛下が王太子に問うた。
「はい。今回のことは完全に帝国の落ち度ですが、それを許してやったことで今後の交渉を有利にできるでしょう。私としては帝国と王国の間には緩衝の役割を果たす国家を残すのが良いと思っています。その緩衝国家となる国を選び方で優位に立つために、今回の相手の失態を利用できればと考えています」
王太子は全く王太子らしくないそれっぽい意見をしたり顔で言い切った。
きっと誰かの入れ知恵でしょう。
そもそも緩衝国家など設けても帝国が力で取り払ったら意味がないのですよ???
私は王子に視線を向けますが、彼は泰然としていて特に何か声を挙げる気はないようです。
「では、そなたに与えている予算から支払う額を検討して実施せよ」
「な?」
「なぜ驚くのだ?いくら金を支払うと言っても王宮から出してしまっては立ち位置がおかしなことになるだろう。王宮としては事故とはいえ第二王子を殺されかけたのだから、甘い対応は不可能だ。それでも将来を見越して関係を築くということであれば、外務費用から出すのが当然で、それはそなたの管轄だろう」
……謁見の間の空気が変わったわね。
きっとその予算ってもう使ってしまってない、とかなんでしょうね。
これは俗に言う、ざまぁということでしょうか?
これがあるから王子は黙っていろという態度をしていたのね……。
「では、帝国との話はこれで対応は決まった」
国王陛下は焦る王太子を横目にそう宣言した。
しかし宣言はそれで終わりではなかった。
「続いて王国内部の話だ」
話しが終わったと、近しい人物に挨拶して帰ろうと考え始めていた貴族たちが一斉に国王陛下の方を向く。
どういうことだ?と。
王国内部の話とは?そんな予定は聞いていない、と。
アホ王太子は……焦ったままね。
そんなにお金がないのかしら?
また無茶な指令を出されそうで嫌だわ。
「陛下。王国内部の話とは?」
彼も話を事前に聞いていなかったのか、宰相が国王に尋ねた。
「今から話すのは壮大な企みについてだ。悪い方にな。余は国王としてこれを明るみに出し、断罪せねばならん。のう……王宮魔術師長。レゼシア公爵よ」
「なっ???」
えっ?どういうこと?
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。
継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。
しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。
彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。
2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる