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第28話 アッシュとの時間
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私はそんなアッシュをルイン伯爵家に呼んで、一緒に食事をしたの。
ただの自己満足だけど頭の片隅にある実現はしなかった私の企みを話しておきたいと思って。
ええそうよ。怖かったのよ。
でも、アッシュはなぜか有頂天で、もし彼に尻尾があったらブンブン回転させているであろうくらいのテンションで来訪した。
そして私にハグして抱っこしてきた。
アッシュは相変わらずアッシュだったわ。
いろいろと心配してたのに、なによ。イラっとしたからキスは躱したわ。
「もう、何度言ったらわかるのかしら……」
それでも笑みを隠せなくて、ため息をつきながらそう言ったのに、なんでそんなに嬉しそうなのよ。
「どうしてそんなに私に拘るの?あなた過去の罪も晴れたんだから、公爵家に戻ったらまたやんごとなきお姫様と結婚できるんじゃない?」
ちょっとくらい凹ませてやろうかと思ってつい意地悪なことを聞いてしまった。
「キレイだし、優しいし、こんな俺のことを気遣ってくれるし、家族や仲間思いだし、一族のために戦う姿は素敵だし、みんなを笑顔にしてくれるし、一緒にいて楽しいし、話していて楽だし……」
「長いわよ」
なのにいつもの豆腐メンタルではなくなったアッシュが語りだしたせいで、私が赤くなってしまった。
「そんなに話したら酔いが醒めるわよ」
せっかく無事に解決したんだから、のんびり飲もう。
それがいいわ。
「プロポーズまで行きたかったのに……」
アッシュはちょっと残念そうに呟く。
な、な、な、なにを言い出すのよ!?
そんな流れじゃないでしょ?
確かに無事に問題は解決したけど……いや、あれ?ありなのかな?
でもまだ一族の安住の地を見つけたわけでも、甥に家督を譲ったわけでもない……。
まだ駄目よ。
「今はまだ結婚はしないわ。甥に家督を譲るまではね。それに、魔族の安住の地を見つけるまで、まだやるべきことがあるわ」
改めて私はアッシュに宣言する。
これは私の覚悟なんだから。
「俺も協力する」
なのになぜかアッシュは真剣な表情で頷き、宣言した。
いや、違うでしょ?
ちょっと寂しいけど別の道を行こうって言ってるのよ。
立場が違うの。
あなたが私の役目を背負う必要はないのよ。
そう言いたいのに言葉が出ない。
「盗賊だろうが、宗教だろうが、モンスターだろうが、国だろうが、俺ならぶっ飛ばせる」
「それはそうね……」
やりすぎなくらいだけど、もう怖いものなしね。
いつの間にこんなに入ってこられたのかしら。
私の心の中に。
出会った頃のように簡単にアッシュを突き放すことができなくなっている自分に気付いてしまう。
「私はあなたを利用するわよ?……お願い、そんなことをさせないで?」
私は私の目標を諦めることはない。
それなのにアッシュがついて来てしまったら、きっと私はアッシュを使ってしまう。
そして自己嫌悪するのよ。
「俺だって、お前が欲しいという打算的な考えだ」
なのにアッシュは引いてくれない。
むしろ前かがみだ。
なんでよ。
どこに欲情してんのよ。
「物好きね……」
「あぁ……」
「あっ……」
ねぇ、なんで今キスなのよ?
何度も言うけどそんな流れじゃないでしょ?
私は非難してるのよ!
もぅ……。
適当に用意してもらった食事と倉庫に眠っていたワインの組み合わせだったが、これまでの食事よりも何倍も美味しかった。
「あなた。私のこと、好きすぎるのよ……」
隣で眠る寝顔に文句を言ってしまうのも仕方ないわよね?
くそぅ……幸せそうな顔をして……。
ただの自己満足だけど頭の片隅にある実現はしなかった私の企みを話しておきたいと思って。
ええそうよ。怖かったのよ。
でも、アッシュはなぜか有頂天で、もし彼に尻尾があったらブンブン回転させているであろうくらいのテンションで来訪した。
そして私にハグして抱っこしてきた。
アッシュは相変わらずアッシュだったわ。
いろいろと心配してたのに、なによ。イラっとしたからキスは躱したわ。
「もう、何度言ったらわかるのかしら……」
それでも笑みを隠せなくて、ため息をつきながらそう言ったのに、なんでそんなに嬉しそうなのよ。
「どうしてそんなに私に拘るの?あなた過去の罪も晴れたんだから、公爵家に戻ったらまたやんごとなきお姫様と結婚できるんじゃない?」
ちょっとくらい凹ませてやろうかと思ってつい意地悪なことを聞いてしまった。
「キレイだし、優しいし、こんな俺のことを気遣ってくれるし、家族や仲間思いだし、一族のために戦う姿は素敵だし、みんなを笑顔にしてくれるし、一緒にいて楽しいし、話していて楽だし……」
「長いわよ」
なのにいつもの豆腐メンタルではなくなったアッシュが語りだしたせいで、私が赤くなってしまった。
「そんなに話したら酔いが醒めるわよ」
せっかく無事に解決したんだから、のんびり飲もう。
それがいいわ。
「プロポーズまで行きたかったのに……」
アッシュはちょっと残念そうに呟く。
な、な、な、なにを言い出すのよ!?
そんな流れじゃないでしょ?
確かに無事に問題は解決したけど……いや、あれ?ありなのかな?
でもまだ一族の安住の地を見つけたわけでも、甥に家督を譲ったわけでもない……。
まだ駄目よ。
「今はまだ結婚はしないわ。甥に家督を譲るまではね。それに、魔族の安住の地を見つけるまで、まだやるべきことがあるわ」
改めて私はアッシュに宣言する。
これは私の覚悟なんだから。
「俺も協力する」
なのになぜかアッシュは真剣な表情で頷き、宣言した。
いや、違うでしょ?
ちょっと寂しいけど別の道を行こうって言ってるのよ。
立場が違うの。
あなたが私の役目を背負う必要はないのよ。
そう言いたいのに言葉が出ない。
「盗賊だろうが、宗教だろうが、モンスターだろうが、国だろうが、俺ならぶっ飛ばせる」
「それはそうね……」
やりすぎなくらいだけど、もう怖いものなしね。
いつの間にこんなに入ってこられたのかしら。
私の心の中に。
出会った頃のように簡単にアッシュを突き放すことができなくなっている自分に気付いてしまう。
「私はあなたを利用するわよ?……お願い、そんなことをさせないで?」
私は私の目標を諦めることはない。
それなのにアッシュがついて来てしまったら、きっと私はアッシュを使ってしまう。
そして自己嫌悪するのよ。
「俺だって、お前が欲しいという打算的な考えだ」
なのにアッシュは引いてくれない。
むしろ前かがみだ。
なんでよ。
どこに欲情してんのよ。
「物好きね……」
「あぁ……」
「あっ……」
ねぇ、なんで今キスなのよ?
何度も言うけどそんな流れじゃないでしょ?
私は非難してるのよ!
もぅ……。
適当に用意してもらった食事と倉庫に眠っていたワインの組み合わせだったが、これまでの食事よりも何倍も美味しかった。
「あなた。私のこと、好きすぎるのよ……」
隣で眠る寝顔に文句を言ってしまうのも仕方ないわよね?
くそぅ……幸せそうな顔をして……。
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