27 / 28
第27話 ざまぁの時③魔力暴走の真相
しおりを挟む
*--
「いよいよ期待の若手の魔力開通の儀式ですわね」
「はい……。王国はじまって以来の魔力量を誇るカイゼル公爵のご子息の儀式です」
会話しているのは……ずいぶんと若い頃の王宮魔術師長と、もう1人は誰かわからないが女性ね。
けれど、会話内容でどれくらい前の記録なのかはすぐに分かった。
10年ちょっと前。
間違いなくアッシュのことを話している。
「鼻高々でしょうね。国王陛下からの期待も一身に受け、娘と婚約した男のことが」
ずいぶんと妬みがこもった発言だ。
そして記憶のオーブの映像にその女性の姿が映る……。この場の貴族たちが息を飲んだのがわかる。
「いいわね。魔力発現の際に……」
「わかっております。お任せください」
「全てはこの国のため。お家騒動など起こしている場合ではないのですわ。次の王はアレクサンダーです」
「はい……」
言いたいことを言い終わったのか去って行く女性の方を見つめる王宮魔術師長。
そこで映像は終わった。
*--
まさか……。
王宮魔術師長はさっきよりもさらに肩を落として震えている。
王太子は何のことかわからないようだった。
「申し開きはあるか?メイレーン」
そんな中で国王陛下は女性に問いかけた。
彼の妃である女性に……。
「申し開きとはなんでしょうか?今の記録ではわたくしは雑談に供していただけですわね?」
国王陛下に尋ねられた王妃メイレーンは、全く悪びれもせず答えた。
「『魔力発現の際に……』なんと言おうとしたのだ?」
「嫌ですわ、陛下。あんなことが起こったから、陛下は誤解されているだけですわ」
問い詰められても誤魔化す王妃……。
確かに確定的なことは言っていない。
これは彼女たちの常とう手段だ。
証拠になるようなことは何も残さず、何も言わず、それでいて望むものを得ていくやり方。
今回の件も、自らの発言を勝手に勘違いして王宮魔術師長が行動したという風に持っていこうとしているのは明白だ。
「では、レゼシア公爵に問う。これに申し開きはあるか?」
「……何のことでしょうか?」
しかし王妃様の意向とは違ってレゼシア公爵も白を切る方向に舵を取ったらしい。
王妃が一瞬もの凄い視線をレゼシア公爵に向けた。
「余はこれまで記憶のオーブを見ずにいたのだ。ラフィリアは良い子だった。その死を振り返るのを避けた。許してほしい。だがもう断ち切ろう。企みはもう十分だ」
一方で国王陛下は悲痛な面持ちで呟く。
まさか魔力暴走の場も撮っていたのでしょうか?
撮っていたのでしょうね……公爵家の嫡男の儀式なら。
*--
「では儀式を始めましょう。あぁ、ラフィリア様もフィリス様もそのままで結構ですよ」
普通、魔力開通の儀式を行う際には万が一のことを考えて人は遠ざける。近くにいるのは介助する魔術師だけのはずだった。
「うん、そう。魔力を通して……」
そうして王宮魔術師長はアッシュに魔力を放出させる。
「なっ……なにを?」
しかし慌て始めるアッシュ。彼の腹部に触れている王宮魔術師長がなにかしたのは明らかだ。
記録映像で彼の魔力がアッシュに入るのが見えた。
私の出番ということ。
これがアッシュの言っていたことの違和感の正体だったのね。
魔力暴走は引き起こされたものだった。
*--
「王宮魔術師長は、魔力を通すアッシュ様の腹部に自らの魔力を注いでいます。映像を見返してもらえばわかると思いますが、彼がアッシュ様の腹部に手を添えた瞬間から周囲に魔力が溢れ出しています。使った魔法はパラノイズでしょう」
その魔法は、魔術師による魔法の行使を阻害する魔法だ。
これを受けると熟練の魔術師でも魔法を暴発させるか、行使に失敗する。
はじめての魔力放出の際にこんな魔法をかけられたら、魔力の放出を止めることができなくなる。
私は落ち着いて冷静に語った。
「王妃様からの命令に基づき、私がアッシュ様の魔力開通に介入して暴走を引き起こしました。敵対する側室のルフェナ様およびクリス王子にもダメージを与えるためです。クリス王子派からカイゼル公爵を離反させるための策でした」
観念したのか、王宮魔術師長は自白した。
王太子と王妃は何かを叫んでいるようだが、王宮騎士に扮したアッシュの魔法によって彼らの声は周囲に届かない。
***
全ての断罪が終わり、王太子と王宮魔術師長は"黒き魔の森"へ幽閉された。
王族殺しの実行犯だから処刑でもよかったんだと思うけど、あえてアッシュと同じ措置が取られたようね。
アッシュは抜けれたけど、彼らが抜けられることはないわ。
王妃様は神殿に入り、王妃としての身分を失った。
代わりにクリストファー王子が王太子となり、ルフェナ様が正妃となった。
カイゼル公爵はクリストファー王子の強力な支持者の1人として派閥に戻った。
しかし、アッシュはカイゼル公爵家には戻らなかった。
なお、記憶のオーブは実はアッシュが作っていたらしい。
王妃様や王太子、王宮魔術師長の頭を勝手に探って映像を取り出したとか、怖すぎるのよ。
身に覚えがないことは取り出せないよ?とかきょとんとして言い張るアッシュに戦慄を覚えた……。
「いよいよ期待の若手の魔力開通の儀式ですわね」
「はい……。王国はじまって以来の魔力量を誇るカイゼル公爵のご子息の儀式です」
会話しているのは……ずいぶんと若い頃の王宮魔術師長と、もう1人は誰かわからないが女性ね。
けれど、会話内容でどれくらい前の記録なのかはすぐに分かった。
10年ちょっと前。
間違いなくアッシュのことを話している。
「鼻高々でしょうね。国王陛下からの期待も一身に受け、娘と婚約した男のことが」
ずいぶんと妬みがこもった発言だ。
そして記憶のオーブの映像にその女性の姿が映る……。この場の貴族たちが息を飲んだのがわかる。
「いいわね。魔力発現の際に……」
「わかっております。お任せください」
「全てはこの国のため。お家騒動など起こしている場合ではないのですわ。次の王はアレクサンダーです」
「はい……」
言いたいことを言い終わったのか去って行く女性の方を見つめる王宮魔術師長。
そこで映像は終わった。
*--
まさか……。
王宮魔術師長はさっきよりもさらに肩を落として震えている。
王太子は何のことかわからないようだった。
「申し開きはあるか?メイレーン」
そんな中で国王陛下は女性に問いかけた。
彼の妃である女性に……。
「申し開きとはなんでしょうか?今の記録ではわたくしは雑談に供していただけですわね?」
国王陛下に尋ねられた王妃メイレーンは、全く悪びれもせず答えた。
「『魔力発現の際に……』なんと言おうとしたのだ?」
「嫌ですわ、陛下。あんなことが起こったから、陛下は誤解されているだけですわ」
問い詰められても誤魔化す王妃……。
確かに確定的なことは言っていない。
これは彼女たちの常とう手段だ。
証拠になるようなことは何も残さず、何も言わず、それでいて望むものを得ていくやり方。
今回の件も、自らの発言を勝手に勘違いして王宮魔術師長が行動したという風に持っていこうとしているのは明白だ。
「では、レゼシア公爵に問う。これに申し開きはあるか?」
「……何のことでしょうか?」
しかし王妃様の意向とは違ってレゼシア公爵も白を切る方向に舵を取ったらしい。
王妃が一瞬もの凄い視線をレゼシア公爵に向けた。
「余はこれまで記憶のオーブを見ずにいたのだ。ラフィリアは良い子だった。その死を振り返るのを避けた。許してほしい。だがもう断ち切ろう。企みはもう十分だ」
一方で国王陛下は悲痛な面持ちで呟く。
まさか魔力暴走の場も撮っていたのでしょうか?
撮っていたのでしょうね……公爵家の嫡男の儀式なら。
*--
「では儀式を始めましょう。あぁ、ラフィリア様もフィリス様もそのままで結構ですよ」
普通、魔力開通の儀式を行う際には万が一のことを考えて人は遠ざける。近くにいるのは介助する魔術師だけのはずだった。
「うん、そう。魔力を通して……」
そうして王宮魔術師長はアッシュに魔力を放出させる。
「なっ……なにを?」
しかし慌て始めるアッシュ。彼の腹部に触れている王宮魔術師長がなにかしたのは明らかだ。
記録映像で彼の魔力がアッシュに入るのが見えた。
私の出番ということ。
これがアッシュの言っていたことの違和感の正体だったのね。
魔力暴走は引き起こされたものだった。
*--
「王宮魔術師長は、魔力を通すアッシュ様の腹部に自らの魔力を注いでいます。映像を見返してもらえばわかると思いますが、彼がアッシュ様の腹部に手を添えた瞬間から周囲に魔力が溢れ出しています。使った魔法はパラノイズでしょう」
その魔法は、魔術師による魔法の行使を阻害する魔法だ。
これを受けると熟練の魔術師でも魔法を暴発させるか、行使に失敗する。
はじめての魔力放出の際にこんな魔法をかけられたら、魔力の放出を止めることができなくなる。
私は落ち着いて冷静に語った。
「王妃様からの命令に基づき、私がアッシュ様の魔力開通に介入して暴走を引き起こしました。敵対する側室のルフェナ様およびクリス王子にもダメージを与えるためです。クリス王子派からカイゼル公爵を離反させるための策でした」
観念したのか、王宮魔術師長は自白した。
王太子と王妃は何かを叫んでいるようだが、王宮騎士に扮したアッシュの魔法によって彼らの声は周囲に届かない。
***
全ての断罪が終わり、王太子と王宮魔術師長は"黒き魔の森"へ幽閉された。
王族殺しの実行犯だから処刑でもよかったんだと思うけど、あえてアッシュと同じ措置が取られたようね。
アッシュは抜けれたけど、彼らが抜けられることはないわ。
王妃様は神殿に入り、王妃としての身分を失った。
代わりにクリストファー王子が王太子となり、ルフェナ様が正妃となった。
カイゼル公爵はクリストファー王子の強力な支持者の1人として派閥に戻った。
しかし、アッシュはカイゼル公爵家には戻らなかった。
なお、記憶のオーブは実はアッシュが作っていたらしい。
王妃様や王太子、王宮魔術師長の頭を勝手に探って映像を取り出したとか、怖すぎるのよ。
身に覚えがないことは取り出せないよ?とかきょとんとして言い張るアッシュに戦慄を覚えた……。
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる