むやみ やたらにかわいいと言うな!

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第2話 本気監禁は準備が命らしい

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昨日から矢鱈が妙に静かだ。

いや、付きまといはしてくるし、昼休みは隣に座るし、廊下では壁ドンまでしてくるんだけど——
その後すぐ、何かを考え込むように黙る。
……これ、ヤバいやつじゃない?

「なぁ日和……今夜、空いてる?」

「空いてるけど。なんで?」

「いや、ちょっと……試してみたいことがあって」

「人体実験系?それとも監禁系?」

「……監禁系」

「やっぱりか~!かわい~!」

ここまで堂々と言われると逆に清々しい。
でも、なんで今日なんだ?

―――

放課後、僕は風紀委員長に捕まった。

「日和、お前、今日絶対に夢早見の誘いに乗るなよ」

「もう乗るけど?」

「お前……俺の忠告を一度でも聞いたことあるか?」

「横に並ばないんだね。やっぱ恥ずかしいの?かわい~!」

「……っく……それ、やめろって……」

(ほんと、この人も反応がわかりやすいな)

結局、委員長は最後まで尾行してきた。
でも曲がり角で撒かれたあたり、矢鱈の地元スキルが異様に高い。

―――

矢鱈の家に着くと、玄関からして違和感があった。
靴箱の上には新品の南京錠、ドアの隅にはカメラらしき小型レンズ。
そして——

「日和、こっち」

「お、おぉ……」

通されたのは畳の部屋。
そこには布団、机、棚……そして窓には鉄格子。しかも二重。
部屋の隅には冷蔵庫と大量の水のペットボトル。
え、これ完全に長期戦仕様じゃん。

「……すごいね。ここまで準備する人、初めて見た」

「だろ?食料も一ヶ月分ある」

「後先考えてなかった?いや、考えすぎか……かわい~!」

「……なぁ日和」

「ん?」

「お前……本当に、俺が何しようとしてるかわかってる?」

「監禁でしょ?」

「……普通、怖がるとか、怒るとかするんじゃないのか?」

「え~?だって君、僕に手出しはしないじゃん」

「……まぁ、それは……」

矢鱈は視線を逸らし、耳を赤くした。
この反応、完全に“自覚あるけど認めたくない”タイプだ。

「ほら、かわい~!」

「……やめろって……」

言いながらも口元は緩んでいる。
——やっぱり、こいつも“かわいい”に弱いんだ。

―――

その後、僕は堂々とその部屋で漫画を読み、冷蔵庫のプリンを勝手に食べた。
矢鱈は隅で体育座りしながら僕を眺めている。
……あれ、これ普通に居心地いいな。

川合 日和、16歳。
本気監禁をラウンジ感覚で満喫した春の夕暮れである。
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