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第24話 「新婚割引いりません!」
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ギルドでの寸劇大会から数日後。
胃もたれも落ち着いた頃、セシルと一緒に市場へ買い出しに出かけた。
「今日こそは普通に買い物するからな!」
「……油断するな」
「いや、買い物で何に油断すんだよ」
しかし、その考えは甘かった。
―――
最初の八百屋で。
店主がにこにこしながら叫んだ。
「おう、新婚さん! トマト一袋サービスだ!」
「違う! 俺たち新婚じゃ――」
「遠慮するな、愛の証だ!」
強引に袋を突っ込まれる。
隣でセシルは無言で受け取っている。
「おまえも黙って受け取るな!」
―――
肉屋でも。
「今日は夫婦割引で二割引!」
魚屋でも。
「お祝いに鯛をおまけだ!」
布屋でも。
「新婚さんにはペアのハンカチを!」
「ちょ、待て! なんでどの店も連携してんだ!?」
「……情報共有」
「誰がそんなシステム求めたぁぁぁ!!」
―――
極めつけは雑貨屋だった。
棚から木製のおもちゃや小さな服を持ってきて、店主が笑顔で差し出す。
「そろそろ子ども用品も必要でしょう?」
「必要じゃねぇえええ!!」
しかし周囲の買い物客まで「可愛い!」と拍手し始める。
セシルは無言で小さな靴を手に取り、
「……似合う」
「まだ生まれてねぇえええ!!!」
―――
結局、両手いっぱいに「お祝い品」と「子ども用品」を抱えて帰宅する羽目になった。
「……なぁセシル」
「何」
「俺、絶対市場で“新婚三人子持ち”くらいの噂になってるよな」
「問題ない」
「問題しかねぇよ!!!」
―――
市場から帰ってきた俺たちは、そのままギルドに立ち寄った。
両手いっぱいの荷物を見た瞬間、ギルド仲間の目が光った。
「おお! それは子ども用品じゃねぇか!」
「ついに準備段階か!」
「育児リハーサル大会の始まりだぁぁ!!」
「いや誰も頼んでない!!!」
―――
なぜか酒場スペースのど真ん中に布団が敷かれ、
「赤ちゃん役」をめぐるオーディションが始まった。
「俺がやる! 泣き真似は得意だ!」
「いや私の方が寝返り上手い!」
最終的に――
リード(大男)が布団に寝転がり、
「おぎゃあああああ!!!」
「いや! そのサイズ感おかしいだろ!!」
―――
「さぁまずは抱っこの練習だ!」
ギルド仲間が強引にリード(赤ちゃん役)を俺に押し付ける。
「重っっ!? これ本気で腰やられる!!」
「お母さんがんばれー!」
「お母さん言うなぁぁぁ!!!」
横でセシルは無表情のまま、軽々とリードを抱き上げてあやす。
「……問題ない」
「なんで完璧なんだよ!!」
―――
次はおむつ交換の練習。
「ほらレイリ! 替えてやれ!」
「何を!? いやいやリードのおむつとか嫌だぁぁぁぁ!!!」
リード「おぎゃああ! おしめ替えてぇ!」
「やめろぉぉぉ!! 全力で拒否するわ!!」
―――
「最後は授乳リハーサルだな!」
「やらせるな!!」
俺が必死に抵抗する間に、セシルがさらっとカップを用意。
リードに水を飲ませて、淡々と一言。
「……これでいい」
ギルド全員「おおおおお!!」
俺「いや何でおまえは全部こなせるんだよ!!」
―――
結局、「育児リハーサル大会」は大盛況のうちに幕を閉じた。
ギルドは「完璧なお父さんとがんばるお母さん」の構図で完全固定。
(……俺の否定、もうどこにも届かねぇ……)
胃もたれも落ち着いた頃、セシルと一緒に市場へ買い出しに出かけた。
「今日こそは普通に買い物するからな!」
「……油断するな」
「いや、買い物で何に油断すんだよ」
しかし、その考えは甘かった。
―――
最初の八百屋で。
店主がにこにこしながら叫んだ。
「おう、新婚さん! トマト一袋サービスだ!」
「違う! 俺たち新婚じゃ――」
「遠慮するな、愛の証だ!」
強引に袋を突っ込まれる。
隣でセシルは無言で受け取っている。
「おまえも黙って受け取るな!」
―――
肉屋でも。
「今日は夫婦割引で二割引!」
魚屋でも。
「お祝いに鯛をおまけだ!」
布屋でも。
「新婚さんにはペアのハンカチを!」
「ちょ、待て! なんでどの店も連携してんだ!?」
「……情報共有」
「誰がそんなシステム求めたぁぁぁ!!」
―――
極めつけは雑貨屋だった。
棚から木製のおもちゃや小さな服を持ってきて、店主が笑顔で差し出す。
「そろそろ子ども用品も必要でしょう?」
「必要じゃねぇえええ!!」
しかし周囲の買い物客まで「可愛い!」と拍手し始める。
セシルは無言で小さな靴を手に取り、
「……似合う」
「まだ生まれてねぇえええ!!!」
―――
結局、両手いっぱいに「お祝い品」と「子ども用品」を抱えて帰宅する羽目になった。
「……なぁセシル」
「何」
「俺、絶対市場で“新婚三人子持ち”くらいの噂になってるよな」
「問題ない」
「問題しかねぇよ!!!」
―――
市場から帰ってきた俺たちは、そのままギルドに立ち寄った。
両手いっぱいの荷物を見た瞬間、ギルド仲間の目が光った。
「おお! それは子ども用品じゃねぇか!」
「ついに準備段階か!」
「育児リハーサル大会の始まりだぁぁ!!」
「いや誰も頼んでない!!!」
―――
なぜか酒場スペースのど真ん中に布団が敷かれ、
「赤ちゃん役」をめぐるオーディションが始まった。
「俺がやる! 泣き真似は得意だ!」
「いや私の方が寝返り上手い!」
最終的に――
リード(大男)が布団に寝転がり、
「おぎゃあああああ!!!」
「いや! そのサイズ感おかしいだろ!!」
―――
「さぁまずは抱っこの練習だ!」
ギルド仲間が強引にリード(赤ちゃん役)を俺に押し付ける。
「重っっ!? これ本気で腰やられる!!」
「お母さんがんばれー!」
「お母さん言うなぁぁぁ!!!」
横でセシルは無表情のまま、軽々とリードを抱き上げてあやす。
「……問題ない」
「なんで完璧なんだよ!!」
―――
次はおむつ交換の練習。
「ほらレイリ! 替えてやれ!」
「何を!? いやいやリードのおむつとか嫌だぁぁぁぁ!!!」
リード「おぎゃああ! おしめ替えてぇ!」
「やめろぉぉぉ!! 全力で拒否するわ!!」
―――
「最後は授乳リハーサルだな!」
「やらせるな!!」
俺が必死に抵抗する間に、セシルがさらっとカップを用意。
リードに水を飲ませて、淡々と一言。
「……これでいい」
ギルド全員「おおおおお!!」
俺「いや何でおまえは全部こなせるんだよ!!」
―――
結局、「育児リハーサル大会」は大盛況のうちに幕を閉じた。
ギルドは「完璧なお父さんとがんばるお母さん」の構図で完全固定。
(……俺の否定、もうどこにも届かねぇ……)
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