専属バフ師は相棒一人しか強化できません

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第25話 「新婚役なんて無理です!」

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ある日のギルド。
掲示板に妙な張り紙が追加されていた。

『特別依頼:農村収穫祭 新婚夫婦役の出演』

俺「……なんだこれ」
受付嬢「ご指名ですよ♪」

「ご指名!?」
「はい。セシルさんとレイリさんに!」

「なんで俺が!?」
「夫婦限定依頼なので」
「だから夫婦じゃねぇえええ!!!」

横でセシルは即答。
「受ける」
「おまえは即答すんな!!!」

―――

依頼先の農村では、祭り準備の真っ最中。
出迎えた村長は満面の笑みで。

「おお! 新婚夫婦のお二人! 遠路はるばるありがとう!」

「違いますからね!? 俺はまだ結婚してないんで!!」
「照れなくていいぞ!」

話をまったく聞かずに歓迎モード全開。

―――

どうやら収穫祭の余興で「新婚夫婦の模擬生活」を演じるらしい。

夫:畑を耕し、薪割り。

妻:料理や洗濯、裁縫。

最後に二人でダンス。


「いや完全に俺が妻ポジじゃねぇか!!!」
「……適任」
「セシルまで肯定すんなぁぁぁ!!」

―――

観客(村人総出)の前で、模擬生活スタート。

1. 畑仕事
 セシルが鍬を軽々と振り、村人「おおー!」
 俺は必死に野菜の収穫。
 村人「花嫁さんの働き者っぷり!」
 俺「花嫁じゃねぇええ!!」


2. 料理
 俺が鍋をかき混ぜ、セシルが横で材料を切る。
 村人「いい夫婦だ!」
 俺「だから違う!!!」

―――

そして最後の「夫婦ダンス」の時間が迫る……!
俺の足がすでに震え始めていた。

「なぁセシル、俺踊れないって何回言った?」
「何十回も」
「だったら理解しろよ!!」

セシルは無表情で手を差し伸べた。
「……踊る」

「やっぱりかああああ!!!」

―――

収穫祭の最後を飾る「夫婦ダンス」。
村の広場に設けられた舞台で、音楽が鳴り響く。

「お、俺は無理だって! 踊れないって!!」
「……俺が動かす」
「人形じゃねぇんだぞ俺はぁぁぁ!!!」

だがセシルは俺の手を取り、腰を支えて優雅にステップ。
完全に俺を操って踊らせていた。

―――

村人「まぁ! 見事だ!」
村人「絵になる夫婦だねぇ!」
子どもたち「お母さーん!」

「だから違うってばぁぁぁぁ!!!」

でも観客は誰一人聞いていない。
拍手喝采、歓声の嵐。

―――

曲の最後、俺を抱き寄せたセシルが観客に向かって淡々と告げた。

「俺は――一生、レイリと共に踊る」

「ぎゃあああああああ!!!」

観客「おおおおおおお!!!」
村長「素晴らしい! 永遠の誓いだ!!」
老婆「末永く幸せにねぇ!」

「誓ってねぇ! 踊ってるだけだから!!!」

―――

結局、収穫祭は大盛況。
俺は広場の真ん中で赤面しながら頭を抱え、セシルは真顔で村人と握手を交わしていた。

(……もう完全に“夫婦役”じゃなくて“夫婦”だと思われてる……)

俺の胃痛は、また一段階レベルアップした。
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