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第9話 止まらない日、OKとOKのあいだ
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――ちゅん、ちゅん。
鳥は今日も律義に稼働。
でも、体は二秒遅れで世界にログインした。
腕、重い。腰、ほどよく主張。喉は白湯を要求。
視線を右へ――
「おはようございます、先輩」
迅蛇。
声は安定、目は少しだけとろん。寝不足の人の上手な誠実さ。
ベッドサイドには白湯、経口補水液、やわらかいタオル。準備の鬼。
「……おはよう。えっと、まずは――お疲れさまです」
「お疲れさまです」
ふたりで同時に言って、ふたりで同時にちょっと笑う。
昨夜は、“止まらなかった”。
止まれないではなく、止まらなかった。
合図は飛んだ。進んでいい、の方が。
止める合図は、ちゃんといつでも出せる状態のまま。
それでも、出さなかった。ふたりとも、OKだった夜。
「水、置きます」
「ありがとう。……生きてる」
「生きてます。稼働率は70%」
「それ高いな。俺、55%くらい」
白湯を一口。胃が“おつかれ”って言う。
枕の匂いが少し甘いのは、はちみつレモンのせいだ。
昨夜はアルコールゼロ。白湯会拡張。甘さは合法。
――巻き戻す。金曜、定時後。
外、冷たい風。
社内はリリース前のちょいバタ。八木さんは「ペース守れよー」とランナー顔。杉田さんは「猫がストーブを占拠」と冬支度。渚さんは“湯気音”のFFTを試してる(何)。
僕らは視線で「同伴」。
駅前のベンチで白湯をすすって、コンビニの肉まんを“に”で半分こ。
21:00。ベンチの風が強くなって、帰宅。鍵がカチン。いつもの“おかえり”。
「今日は、話すだけでもいいですよ」
玄関で迅蛇が言った。
その“だけ”に救われる。
けど、同時に、その“だけ”の奥に続く廊下が見えた。
「話して、座って、――抱きしめて、寝よう」
言ってから、喉がむずむずした。
強がりじゃない。欲張りでもない。
生き延びた週の終わりに、ただ、近さが欲しかった。
白湯をもう一杯。
テレビはオフ。音楽もなし。
“居る練習”の態勢。隣同士に座って、背中がソファに半分沈む。
沈黙は、嫌じゃない。
沈黙に毛布をかけるのは、もう何度もやった。
「先輩」
「ん」
「合図を、確認だけ」
「うん。止めは“とんとん”。進めは、俺から手、絡める」
「僕からも“進め”を出したい時は――長押しにしましょう」
「長押し?」
「指を、三秒。これで“本当にいい?”の確認。三秒の間に、いつでも“とんとん”が挟める」
「長押し合図、いい。名前だけゲーム機みたい」
笑って、手をつないだ。
指先は乾いて、体温だけが往復する。
三秒。
“いい”が、互いに落ちた。
そこから先は、言葉が少なかった。
少なかったけれど、合図は多かった。
目の合図。呼吸の合図。間の合図。
そして、ときどき“白湯”の休符。
止まらない夜は、暴走ではなく、合意の連続だった。
――現在地。
鳥はちゃんと鳴く。
部屋の湿度はやや高め。加湿器、よく働いたな、昨夜。
「痛い所、ありますか」
「えっと……筋肉痛の手前、くらい。迅蛇は?」
「同じです。ストレッチはあとで」
「ストレッチって言うな。いや、言っていいけど」
毛布の皺を指でなぞる。
現実にふれて落ち着く。
昨夜の自分を、ちゃんと好きでいたい。
そのために、水を飲む。
「……ありがとうな」
「こちらこそ」
「止まらない夜があってもいい、って思えた。合図があるから」
「合図の発明、良いプロジェクトでした」
「プロジェクトって言うな。恋愛にしとけ」
「恋愛の成功例、ですね」
少し間。
少し笑う。
笑えるの、大事。
「シャワー、どうぞ」
「先に迅蛇どうぞ。俺、朝ごはん考える」
「“回復セット拡張版”にしましょう。たまご雑炊+やわらかい鶏団子スープ。白湯は続投」
「賛成。胃に優しく、心に炭水化物」
迅蛇が立ち上がる。
歩幅はいつもよりゆっくり。
扉の前で振り返って、小さく首を傾げる。
「先輩、“からかわないKPI”は今日は免除でいいですか」
「うん。今日は、お互いお疲れさまデー」
「ありがとうございます」
シャワー音。
湯気の向こうで、昨夜の合図が薄い光みたいに残っている。
止めなかった、けど、止められた。
その安心感が、背中に敷かれた毛布みたいに、まだ熱い。
キッチンに立って、鍋を出す。
米を洗い、だしを温め、卵を割る。
鶏団子は、生姜を少しだけ。塩は控えめ。
包丁の音がやわく響く。
渚さんがいたら“回復音”って呼びそう。
呼ばなくていい。僕の中で勝手に名前をつけておく。
「交代します」
シャワーを浴びる。
湯が肩に当たるだけで体が“よし”と言う。
水滴が頬を滑って、昨夜の断片が、ちょっとだけ恥ずかしくて、でもちゃんと嬉しい。
湯船は使わない。長風呂は今じゃない。
今日は、ふたりともお疲れさま。
戻ると、テーブルに白い湯気。
雑炊の黄色。鶏団子の白。ねぎの緑。
色が静かだ。静かな色は、胃を救う。
「いただきます」
「どうぞ」
ひと口。
体が“帰ってきた”。
椀音がやさしい。
白湯は補助輪。昨夜から続く優しさの連絡線。
「レビュー、しますか」
「やるの? するか。軽く」
迅蛇がメモを開く。
僕はスプーンを持ったまま、会議に参加。
毎度のこの構図、好きだ。
「議題は三点。①止まらない日の条件、②オーバーライド合図の運用、③翌日のケア」
「①。飲酒ゼロか超少。翌朝の予定が軽い。どちらかが“今日は近くにいたい”を口に出す」
「追記。途中で“とんとん”が有効であることをリマインド。いつでも戻せる」
「戻れるの、大事」
「②。オーバーライド合図“長押し三秒”は、双方から実施可。長押しの間、目を見る。ここで“頷き”を要件に追加」
「目を見る、いい。言葉が迷子にならない」
「③。翌朝ケア。白湯、回復セット、ストレッチ五分。水分1.5リットル/日。――それと“からかわないKPI”免除」
「今日だけな。明日からは復帰」
「はい」
雑炊を食べながら、昨夜の“言葉が少なかった”部分を、少しだけ言葉に置き換える。
無理に全部は言わない。
“好きだ”とか、“いる”とか、そういう単語を、恥ずかしさの量に合わせて配膳する。
配膳しすぎると、味がわからなくなるから。
「先輩」
「ん」
「“止まらない日があってもいい”の“いい”は、責任の“いい”だと思います」
「責任?」
「“いい”って言うのは、その結果に対して、翌日の自分たちが面倒を見ることです。だから、今日の雑炊は“いい”の内側」
「迅蛇、たまにめちゃくちゃ良いこと言うよな」
「仕様です」
スプーンを置く。
椀底の米がきれいにいなくなる。
満たされるって、実は静かな作業なんだな。
そんなことを思っていると、迅蛇が小さく息を吸った。
「昨日、合図の“長押し”を僕から先に出した時、先輩の手が少し震えたのを、見ました」
「……緊張した」
「僕もです」
正直の粒が、湯気の中で光る。
それで十分。
“好きだ”を何度も言わなくても、粒は互いに見える。
片づけ。
水音は、規則正しくて眠たくなる。
食器が立てかけられる“コト”の音が心臓の裏で揺れる。
渚さん、これ録りたがるだろうな。やめてくれ。
身支度。
歯磨き。顔。シャツ。
動きがゆっくりでも、時間は前に進む。
玄関で靴。
迅蛇がいつもの手つきで結ぶ。きゅっと、でも優しく。
僕はその手の甲に、合図を重ねる。
“ありがとう”の“とん”。
“半分こ”の“に”。
それから、昨日増えた“長押しOK”の、静かな握り。三秒。
「今日は、歩幅ゆっくりで」
「うん。70%と55%の真ん中で」
「62.5%くらいですね」
「小数点出すな」
外。
雲は薄い。空の青は控えめ。
パン屋の甘い匂いが、雑炊の記憶とやさしく混ざる。
駅までの五分。
今日の話題は、ゆるい。
八木さんのハーフの大会名。杉田さんの猫に新しい首輪。渚さんが“湯気音の波形Tシャツ”を作るかもしれない(やめろ)。
仕事のリリースは来週火曜。
火曜の“居る練習”は控えめに。
水曜は朝ごはん会議。
木曜は買い物。
予定表に“止まらない日”は書かない。
書かないけれど、あっていい。
“あるかもしれない”で十分。
「先輩」
「ん」
「止まらない夜、僕は好きでした」
「俺も。……でも、“止まれる”のほうが先に好きだ」
「同意です」
“止まれる”を先に抱えているから、“止まらない”を怖がらずに選べる。
それが、僕らの答え。
改札前。
人の流れは穏やか。
僕は振り返って、迅蛇を見る。
真面目な目。笑ってないけど、温度は高い。
その奥に昨夜の“OKとOK”が、静かに灯っている。
「ありがとな。……ほんとに、お疲れさまです」
「お疲れさまです。――来週も、ほどよく」
「ほどよく」
指先で、空気に“とん”。
進んでいい合図。
そして、人差し指でゆっくり“に”。
半分こは、肉まんでも、雑炊でも、責任でも。
分ければ軽い。分け合えば、温かい。
佐万里、二十九歳。
止まらない夜の翌朝、白湯と雑炊で“いい”の面倒を見る。
鳥はちゅんちゅん。体は62.5%。
それで十分。
また来週。止まっても、止まらなくても、OKはふたりで。
OKとOKのあいだに、毛布を敷いて。
鳥は今日も律義に稼働。
でも、体は二秒遅れで世界にログインした。
腕、重い。腰、ほどよく主張。喉は白湯を要求。
視線を右へ――
「おはようございます、先輩」
迅蛇。
声は安定、目は少しだけとろん。寝不足の人の上手な誠実さ。
ベッドサイドには白湯、経口補水液、やわらかいタオル。準備の鬼。
「……おはよう。えっと、まずは――お疲れさまです」
「お疲れさまです」
ふたりで同時に言って、ふたりで同時にちょっと笑う。
昨夜は、“止まらなかった”。
止まれないではなく、止まらなかった。
合図は飛んだ。進んでいい、の方が。
止める合図は、ちゃんといつでも出せる状態のまま。
それでも、出さなかった。ふたりとも、OKだった夜。
「水、置きます」
「ありがとう。……生きてる」
「生きてます。稼働率は70%」
「それ高いな。俺、55%くらい」
白湯を一口。胃が“おつかれ”って言う。
枕の匂いが少し甘いのは、はちみつレモンのせいだ。
昨夜はアルコールゼロ。白湯会拡張。甘さは合法。
――巻き戻す。金曜、定時後。
外、冷たい風。
社内はリリース前のちょいバタ。八木さんは「ペース守れよー」とランナー顔。杉田さんは「猫がストーブを占拠」と冬支度。渚さんは“湯気音”のFFTを試してる(何)。
僕らは視線で「同伴」。
駅前のベンチで白湯をすすって、コンビニの肉まんを“に”で半分こ。
21:00。ベンチの風が強くなって、帰宅。鍵がカチン。いつもの“おかえり”。
「今日は、話すだけでもいいですよ」
玄関で迅蛇が言った。
その“だけ”に救われる。
けど、同時に、その“だけ”の奥に続く廊下が見えた。
「話して、座って、――抱きしめて、寝よう」
言ってから、喉がむずむずした。
強がりじゃない。欲張りでもない。
生き延びた週の終わりに、ただ、近さが欲しかった。
白湯をもう一杯。
テレビはオフ。音楽もなし。
“居る練習”の態勢。隣同士に座って、背中がソファに半分沈む。
沈黙は、嫌じゃない。
沈黙に毛布をかけるのは、もう何度もやった。
「先輩」
「ん」
「合図を、確認だけ」
「うん。止めは“とんとん”。進めは、俺から手、絡める」
「僕からも“進め”を出したい時は――長押しにしましょう」
「長押し?」
「指を、三秒。これで“本当にいい?”の確認。三秒の間に、いつでも“とんとん”が挟める」
「長押し合図、いい。名前だけゲーム機みたい」
笑って、手をつないだ。
指先は乾いて、体温だけが往復する。
三秒。
“いい”が、互いに落ちた。
そこから先は、言葉が少なかった。
少なかったけれど、合図は多かった。
目の合図。呼吸の合図。間の合図。
そして、ときどき“白湯”の休符。
止まらない夜は、暴走ではなく、合意の連続だった。
――現在地。
鳥はちゃんと鳴く。
部屋の湿度はやや高め。加湿器、よく働いたな、昨夜。
「痛い所、ありますか」
「えっと……筋肉痛の手前、くらい。迅蛇は?」
「同じです。ストレッチはあとで」
「ストレッチって言うな。いや、言っていいけど」
毛布の皺を指でなぞる。
現実にふれて落ち着く。
昨夜の自分を、ちゃんと好きでいたい。
そのために、水を飲む。
「……ありがとうな」
「こちらこそ」
「止まらない夜があってもいい、って思えた。合図があるから」
「合図の発明、良いプロジェクトでした」
「プロジェクトって言うな。恋愛にしとけ」
「恋愛の成功例、ですね」
少し間。
少し笑う。
笑えるの、大事。
「シャワー、どうぞ」
「先に迅蛇どうぞ。俺、朝ごはん考える」
「“回復セット拡張版”にしましょう。たまご雑炊+やわらかい鶏団子スープ。白湯は続投」
「賛成。胃に優しく、心に炭水化物」
迅蛇が立ち上がる。
歩幅はいつもよりゆっくり。
扉の前で振り返って、小さく首を傾げる。
「先輩、“からかわないKPI”は今日は免除でいいですか」
「うん。今日は、お互いお疲れさまデー」
「ありがとうございます」
シャワー音。
湯気の向こうで、昨夜の合図が薄い光みたいに残っている。
止めなかった、けど、止められた。
その安心感が、背中に敷かれた毛布みたいに、まだ熱い。
キッチンに立って、鍋を出す。
米を洗い、だしを温め、卵を割る。
鶏団子は、生姜を少しだけ。塩は控えめ。
包丁の音がやわく響く。
渚さんがいたら“回復音”って呼びそう。
呼ばなくていい。僕の中で勝手に名前をつけておく。
「交代します」
シャワーを浴びる。
湯が肩に当たるだけで体が“よし”と言う。
水滴が頬を滑って、昨夜の断片が、ちょっとだけ恥ずかしくて、でもちゃんと嬉しい。
湯船は使わない。長風呂は今じゃない。
今日は、ふたりともお疲れさま。
戻ると、テーブルに白い湯気。
雑炊の黄色。鶏団子の白。ねぎの緑。
色が静かだ。静かな色は、胃を救う。
「いただきます」
「どうぞ」
ひと口。
体が“帰ってきた”。
椀音がやさしい。
白湯は補助輪。昨夜から続く優しさの連絡線。
「レビュー、しますか」
「やるの? するか。軽く」
迅蛇がメモを開く。
僕はスプーンを持ったまま、会議に参加。
毎度のこの構図、好きだ。
「議題は三点。①止まらない日の条件、②オーバーライド合図の運用、③翌日のケア」
「①。飲酒ゼロか超少。翌朝の予定が軽い。どちらかが“今日は近くにいたい”を口に出す」
「追記。途中で“とんとん”が有効であることをリマインド。いつでも戻せる」
「戻れるの、大事」
「②。オーバーライド合図“長押し三秒”は、双方から実施可。長押しの間、目を見る。ここで“頷き”を要件に追加」
「目を見る、いい。言葉が迷子にならない」
「③。翌朝ケア。白湯、回復セット、ストレッチ五分。水分1.5リットル/日。――それと“からかわないKPI”免除」
「今日だけな。明日からは復帰」
「はい」
雑炊を食べながら、昨夜の“言葉が少なかった”部分を、少しだけ言葉に置き換える。
無理に全部は言わない。
“好きだ”とか、“いる”とか、そういう単語を、恥ずかしさの量に合わせて配膳する。
配膳しすぎると、味がわからなくなるから。
「先輩」
「ん」
「“止まらない日があってもいい”の“いい”は、責任の“いい”だと思います」
「責任?」
「“いい”って言うのは、その結果に対して、翌日の自分たちが面倒を見ることです。だから、今日の雑炊は“いい”の内側」
「迅蛇、たまにめちゃくちゃ良いこと言うよな」
「仕様です」
スプーンを置く。
椀底の米がきれいにいなくなる。
満たされるって、実は静かな作業なんだな。
そんなことを思っていると、迅蛇が小さく息を吸った。
「昨日、合図の“長押し”を僕から先に出した時、先輩の手が少し震えたのを、見ました」
「……緊張した」
「僕もです」
正直の粒が、湯気の中で光る。
それで十分。
“好きだ”を何度も言わなくても、粒は互いに見える。
片づけ。
水音は、規則正しくて眠たくなる。
食器が立てかけられる“コト”の音が心臓の裏で揺れる。
渚さん、これ録りたがるだろうな。やめてくれ。
身支度。
歯磨き。顔。シャツ。
動きがゆっくりでも、時間は前に進む。
玄関で靴。
迅蛇がいつもの手つきで結ぶ。きゅっと、でも優しく。
僕はその手の甲に、合図を重ねる。
“ありがとう”の“とん”。
“半分こ”の“に”。
それから、昨日増えた“長押しOK”の、静かな握り。三秒。
「今日は、歩幅ゆっくりで」
「うん。70%と55%の真ん中で」
「62.5%くらいですね」
「小数点出すな」
外。
雲は薄い。空の青は控えめ。
パン屋の甘い匂いが、雑炊の記憶とやさしく混ざる。
駅までの五分。
今日の話題は、ゆるい。
八木さんのハーフの大会名。杉田さんの猫に新しい首輪。渚さんが“湯気音の波形Tシャツ”を作るかもしれない(やめろ)。
仕事のリリースは来週火曜。
火曜の“居る練習”は控えめに。
水曜は朝ごはん会議。
木曜は買い物。
予定表に“止まらない日”は書かない。
書かないけれど、あっていい。
“あるかもしれない”で十分。
「先輩」
「ん」
「止まらない夜、僕は好きでした」
「俺も。……でも、“止まれる”のほうが先に好きだ」
「同意です」
“止まれる”を先に抱えているから、“止まらない”を怖がらずに選べる。
それが、僕らの答え。
改札前。
人の流れは穏やか。
僕は振り返って、迅蛇を見る。
真面目な目。笑ってないけど、温度は高い。
その奥に昨夜の“OKとOK”が、静かに灯っている。
「ありがとな。……ほんとに、お疲れさまです」
「お疲れさまです。――来週も、ほどよく」
「ほどよく」
指先で、空気に“とん”。
進んでいい合図。
そして、人差し指でゆっくり“に”。
半分こは、肉まんでも、雑炊でも、責任でも。
分ければ軽い。分け合えば、温かい。
佐万里、二十九歳。
止まらない夜の翌朝、白湯と雑炊で“いい”の面倒を見る。
鳥はちゅんちゅん。体は62.5%。
それで十分。
また来週。止まっても、止まらなくても、OKはふたりで。
OKとOKのあいだに、毛布を敷いて。
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