何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

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第4話:初めての外出に事件は付きものですかそうですか

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「本日は天気も良く、風も穏やか……お散歩日和でございますね、カノン様。」

執事の穏やかな声に、私はうなずくしかなかった。
久々の外出――といっても王城の敷地内ではあるが――に、使用人たちがなぜかやたらと気合いを入れている。

「カノン、ぼくが手を引くよ。転ばないように、しっかり支えるから。」

「……ああ、ありがとう、アレス。」

目を細めて微笑むその顔に、何とも言えぬ不穏さを感じるのはなぜなのか。

まぁ、いい。

今は散歩だ。
空は青く、風はやさしく、庭園には見たことのない花々が咲き乱れている。

「すごい……。」

前世は地方民、現世では王族。庶民感覚が抜けていないせいで、この光景には未だに感動してしまう。

だが、それも束の間のことだった。

「――あっ、ちょっと!そこの坊ちゃま、そっちに行ったら危ないです!」

突然の声に振り返る。
すると、庭園の奥――本来は立ち入り禁止の薬草園に向かって、小さな子供の姿がひとり、ふらふらと駆け出しているのが見えた。

「待って、あれって……リンじゃないか!?」

近隣貴族の子――よく顔を合わせる幼児仲間の一人だ。
どうやら付き添いとはぐれたらしい。

「カノン様、危険です。アレスが行ってまいりますので――」

「いや、俺も行く!」

止めるアレスの手を振り切り、私は咄嗟に駆け出した。
それが、悪かった。

「リン、待って!そこ、毒草とかもあるって聞いて――」

「きゃっ!」

視界の端に、小さな黒い影が飛び出した。
ネズミのようでネズミでない、牙と赤い目を持つ、小型モンスターだった。

「……っ、くそ!」

とっさに庇おうとした瞬間――

「カノン様に、手を出すなァァァァァァ!!!!!!」

轟くような叫び声とともに、アレスが突撃してきた。

小さな体で躊躇なくモンスターに飛びかかり、拾った枝で目にも止まらぬ速さで滅多打ちにする。

「……ぐっ、死ね、死ね、死ねっ……!」

その表情は、幼児とは思えぬ鬼気迫るものだった。
あれだ。乙女ゲームで一部のプレイヤーに「闇アレス」と呼ばれてたバグ顔のやつ。
現実で見ると怖すぎる。

やがて、黒いネズミは動かなくなった。

「カノン様、大丈夫ですか……怪我は……!」

「う、うん、大丈夫だけど……アレス、お前……。」

返り血を浴びた顔のまま、満面の笑みで振り向く彼は、まるで――。

「よかった……。僕が守れました。」

命に代えてでも、なんて言葉が冗談で済まない存在になっている気がした。

リンは泣きながら謝り、後から来た大人たちに連れて行かれた。
私はその後も何も言えず、アレスの手を引かれて屋敷へ戻った。

怖い。
でも、あの時、あれほどまでに必死になってくれたのは――ほんの少しだけ、うれしかったのも、また事実だった。

カノン・ライエル・フィルディア、1歳と11ヶ月。
この日から私は、アレスの「守護対象」から「存在意義」へと昇格した、気がする。
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