7 / 43
第7話:ヒロイン救済、そして騎士の胸に芽生えるざわめき
しおりを挟む
「紹介するわ。今日からこの領に滞在することになった子よ。」
母の紹介で現れたのは、どこか少年のような立ち振る舞いをした少女だった。
短く切り揃えられた黒髪に、真っ直ぐこちらを見つめる金の瞳。
立ち方も服装も、まるで兵士のような端正さ。
「名前はカミラ=エルンハルト。エルンハルト男爵家の次女よ。……いえ、“次男”として育てられているのだけれど。」
なるほど――この子か。
この世界の恋愛ゲームで、隠しヒロイン扱いだったキャラ。
男として扱われ、兄の影に押し込まれ、心を殺して生きてきた少女。
だが、作中で主人公と出会い、本当の“自分”を見つけていく……はずだった。
でも、またもや予定は前倒しになった。
「ねぇ、カミラ。一緒におままごとしない?」
「……は?」
その日、私はリリアとイザヴェラが新しく作ってくれた布のお人形を持っていた。
リドルたちは「おままごととか女の遊びじゃん!」と早々に離脱したが、リンと私は盛り上がっていた。
「君、男の子じゃなかったの?」
「いや、違う。私は女だ。だが……これはその……。」
顔を赤らめながら視線を逸らすカミラ。
本当はやりたい、でも許されない――その葛藤が、見え透いていた。
「だったら、やってみよう。ここでは誰も君を責めたりしないから。」
そう言って差し出した布のスカート。
カミラはしばらく迷ってから、おそるおそるそれを手に取った。
そして、始まった。
「きゃー!おひめさま、おにわにでちゃだめですわ!」
「うふふ、でもどうしてもリンごひいきのパンがたべたかったのよ!」
「そ、それなら僕が代わりに買ってきますわ、お姫様!」
……完全にノリノリである。
あれから、カミラは毎日のように私たちの遊びに混ざるようになった。
花を摘み、スカートをはき、お茶を注ぐ。
最初はぎこちなかった仕草も、今ではすっかり自然になっていた。
そして、その“変化”を見逃さなかった男がいた。
「ぼ、僕、トールっていいます!カミラさんの笑顔がすごく素敵で……あの、よければ僕と婚約を――。」
「はぁ!?」
「……いえ、すみません!! でも気持ちは本気です!!!」
トール=ベッカーマン、近隣の子爵家の次男。
まだ幼いながらに誠実でまっすぐな彼は、カミラの“目覚めた女の子らしさ”にまっすぐに惚れ込んだ。
カミラは悩んだ末、彼の申し出を受け入れた。
「この私を見て、ちゃんと“女の子”って言ってくれたのは……君が初めてだ」と言って。
そしてその光景を、庭の影から見ていた一人の少年がいた。
「……カノン様が、また……。」
アレス=クラヴィス。
ただの騎士候補として――いや、それ以上の存在として、カノンの傍にいることを“当然”だと思っていた彼の心が、ほんの僅かに軋んだ。
「これは……いけないな。」
その呟きは誰にも届かず、ただ秋の風だけがさらりと流れていった。
カノン・ライエル・フィルディア、3歳。
原作二人目のヒロインが幸せを掴んだ日、運命の歯車はまた一つ、確かにズレたのだった。
母の紹介で現れたのは、どこか少年のような立ち振る舞いをした少女だった。
短く切り揃えられた黒髪に、真っ直ぐこちらを見つめる金の瞳。
立ち方も服装も、まるで兵士のような端正さ。
「名前はカミラ=エルンハルト。エルンハルト男爵家の次女よ。……いえ、“次男”として育てられているのだけれど。」
なるほど――この子か。
この世界の恋愛ゲームで、隠しヒロイン扱いだったキャラ。
男として扱われ、兄の影に押し込まれ、心を殺して生きてきた少女。
だが、作中で主人公と出会い、本当の“自分”を見つけていく……はずだった。
でも、またもや予定は前倒しになった。
「ねぇ、カミラ。一緒におままごとしない?」
「……は?」
その日、私はリリアとイザヴェラが新しく作ってくれた布のお人形を持っていた。
リドルたちは「おままごととか女の遊びじゃん!」と早々に離脱したが、リンと私は盛り上がっていた。
「君、男の子じゃなかったの?」
「いや、違う。私は女だ。だが……これはその……。」
顔を赤らめながら視線を逸らすカミラ。
本当はやりたい、でも許されない――その葛藤が、見え透いていた。
「だったら、やってみよう。ここでは誰も君を責めたりしないから。」
そう言って差し出した布のスカート。
カミラはしばらく迷ってから、おそるおそるそれを手に取った。
そして、始まった。
「きゃー!おひめさま、おにわにでちゃだめですわ!」
「うふふ、でもどうしてもリンごひいきのパンがたべたかったのよ!」
「そ、それなら僕が代わりに買ってきますわ、お姫様!」
……完全にノリノリである。
あれから、カミラは毎日のように私たちの遊びに混ざるようになった。
花を摘み、スカートをはき、お茶を注ぐ。
最初はぎこちなかった仕草も、今ではすっかり自然になっていた。
そして、その“変化”を見逃さなかった男がいた。
「ぼ、僕、トールっていいます!カミラさんの笑顔がすごく素敵で……あの、よければ僕と婚約を――。」
「はぁ!?」
「……いえ、すみません!! でも気持ちは本気です!!!」
トール=ベッカーマン、近隣の子爵家の次男。
まだ幼いながらに誠実でまっすぐな彼は、カミラの“目覚めた女の子らしさ”にまっすぐに惚れ込んだ。
カミラは悩んだ末、彼の申し出を受け入れた。
「この私を見て、ちゃんと“女の子”って言ってくれたのは……君が初めてだ」と言って。
そしてその光景を、庭の影から見ていた一人の少年がいた。
「……カノン様が、また……。」
アレス=クラヴィス。
ただの騎士候補として――いや、それ以上の存在として、カノンの傍にいることを“当然”だと思っていた彼の心が、ほんの僅かに軋んだ。
「これは……いけないな。」
その呟きは誰にも届かず、ただ秋の風だけがさらりと流れていった。
カノン・ライエル・フィルディア、3歳。
原作二人目のヒロインが幸せを掴んだ日、運命の歯車はまた一つ、確かにズレたのだった。
70
あなたにおすすめの小説
俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。
黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。
※このお話だけでも読める内容ですが、
同じくアルファポリスさんで公開しております
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
と合わせて読んでいただけると、
10倍くらい楽しんでいただけると思います。
同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。
魔法と剣で戦う世界のお話。
幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、
魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、
家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。
魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、
「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、
二人で剣の特訓を始めたが、
その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・
これは病気か!?
持病があっても騎士団に入団できるのか!?
と不安になるラルフ。
ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!?
ツッコミどころの多い攻めと、
謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの
異世界ラブコメBLです。
健全な全年齢です。笑
マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。
よろしくお願いします!
オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。
黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の
(本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である)
異世界ファンタジーラブコメ。
魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、
「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」
そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。
魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。
ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。
彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、
そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』
と書かれていたので、うっかり
「この先輩、人間嫌いとは思えないな」
と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!?
この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、
同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」
とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑)
キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、
そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。
全年齢対象です。
BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・
ぜひよろしくお願いします!
【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―
綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。
一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。
もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。
ルガルは生まれながらに選ばれし存在。
国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。
最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。
一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。
遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、
最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。
ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。
ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。
ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。
そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、
巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。
その頂点に立つ社長、一条レイ。
冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
ギャルゲー主人公に狙われてます
一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます
春凪アラシ
BL
「君がどうしてもっていうなら、付き合ってあげないこともないけど?」
完璧すぎる僕、ブルーノ。美貌も才能も自信も満点のはずなのに、初めての恋ではまさかの振られ体験!?
誰もが振り返るほどの魅力を持つ猫獣人が、運命の軍人さんに出会い、初恋に落ち、全力で恋を追いかける――奮闘ラブストーリー!
前作の「『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。」と同じ世界線です。このお話だけで読めますが、トアの物語が気になったらこちらも是非よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる