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第21話:君の愛が、僕を壊しそうになった
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それは、ある日の放課後。
学園内の授業を終えた私は、アレスと共に静かな庭園を歩いていた。
「最近、忙しそうですね。……アイリーン様との会話も、増えました。」
「うん。会長としていろいろ教えてもらってるよ。」
「……そうですか。」
アレスの声に、どこか硬さがあったのは気のせいじゃなかった。
そして、その夜――
「アレス? ここ、どこ?」
「王宮の旧書庫の一角です。もう使われていないので、騒がしくもありません。」
「え、ちょっと待って、それって……。」
カチリ。
扉の向こうで、音がした。
「…………おい、今、鍵、かけたよな?」
「はい。」
「…………。」
一拍の沈黙。
私は静かにアレスの前に立った。
「……なあ、アレス。なんでまた俺を閉じ込めようとするんだよ。」
「……理由は、あります。僕がこうしていれば、誰もあなたに触れられない。誰も、あなたを“奪えない”からです。」
「……はあああ!?」
「なぜ、いけないのですか?」
その目は、本当に“問うて”いた。
本気で――理由を、求めていた。
「……だって、それ……。」
言葉が詰まる。
なぜ、と問われて、答えに困った。
(たしかに……アレスがそばにいて、世話をしてくれて、閉じ込められて……。)
(俺自身は困らないかもしれない。)
(でも、それって……。)
「……それだと、俺、人としてダメになる気がする!!」
叫んだ。
「確かに、お前がいてくれたら安心だし、嬉しいし、楽だけどさ! それに甘えて、閉じ込められて『はいどうぞ』ってなったら、俺、絶対ロクな人間にならない!」
アレスはじっとこちらを見ていた。
そして、ぽつりと。
「……やっぱり、カノン様は……すごいですね。」
「いやいやいやいや!褒めるとこじゃないから!」
「……だから、好きなんです。」
「いっ!?!」
「“人として”ダメになってもいいと思えるほどに、僕は……カノン様を手放したくないと思ってしまいました。」
その言葉は、まっすぐに、重たく、優しかった。
私は震える声で言った。
「でも……でもな、アレス。俺、お前が“人としてダメになる”のも……見たくないよ。」
アレスは目を伏せて、小さく笑った。
「……では、努力します。“好き”でいるために、“正しい”方法を、考えます。」
鍵は静かに外され、扉が開いた。
その夜、月明かりの中で向き合った私たちは、
ようやく“本当の距離”を知った気がした。
カノン・ライエル・フィルディア、7歳。
それは、愛と依存の境界線を見つけようとする、最初の夜だった。
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