何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

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第35話:心に手を伸ばせるようになったのは、少しだけ大人になれたから

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王宮に春の風が吹くころ。
私は14歳になっていた。

かつてより背も伸び、声も低くなり、“王子らしさ”を人々が口にするようになった。
会議の席でも意見を求められ、視察には護衛もつかず、一人で出向くことが増えた。

王子としての自覚。
責任。
そして、“他人の感情に向き合う”だけの余裕――

それがようやく、少しだけ持てるようになってきた。

(だから、今なら……。)

私は、ずっと避けてきた問いに、正面から目を向けようとしていた。

(アレスの想い。あれは、“恋”だ。)



彼は何も言わなかった。
あれからずっと、口にしないまま、傍にいてくれた。

でも、わかっていた。

気づいていた。

(あれは、護衛の視線じゃない。
 親友の笑顔じゃない。
 騎士の忠誠じゃない。)

“愛”だった。



ある夜、私は彼を部屋に呼んだ。

「アレス。」

「はい、なんでしょう。お休み前にお茶でも――。」

「……俺、お前のこと、“好き”って言われてるって、気づいてる。」

アレスは、止まった。

「でも、ずっと子供だったから、俺、そういうの考える余裕もなかった。」

「……そうですね。それは、当然のことです。」

「でも、俺……やっと、自分の“答え”を考える準備ができた。」

「……それは。」

「すぐに答えられるとは限らない。でも、“向き合う”って決めた。」

「お前の気持ちから逃げない、もし俺が“好きになれたら”って、考えることから、逃げない。」

アレスの瞳が、大きく揺れた。

「……僕は、それだけで、十分です。」

「……嘘つけ。お前、もっと欲張っていいんだぞ?」

「……いえ。今は、あなたが“逃げずに向き合ってくれる”だけで、初めて報われた気がするんです。」

「……そっか。」

私は笑った。

アレスが、泣きそうな顔で笑った。

それは、今まで見た中で、いちばん“人間らしい”アレスの顔だった。

カノン・ライエル・フィルディア、14歳。
ようやく、自分が誰かに愛されていたことを“ちゃんと受け止められるようになった”春の夜だった。
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