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第39話:この距離、この鼓動、この一歩目
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アレスと気持ちを交わしてから、数日が経った。
大きく何かが変わったわけではない。
彼は相変わらず私の傍にいて、私は相変わらず彼をからかって、笑って――
でも、そのすべてに、意味が加わっていた。
手が、ふれる。
声が、近い。
目が、合う。
それだけで、心臓が跳ねるようになった。
(これが……“好きな人”と過ごすってことなんだ。)
昼下がり、離宮の中庭。
ふたりきりで風に当たっていた私は、ふと隣のアレスに言った。
「……なあ。」
「はい。」
「“恋人”ってさ、手とか、つないでいいんだよな?」
アレスは一瞬、わずかに戸惑い、そして――
「……はい。望まれるなら、喜んで。」
そっと、彼の手が私の手に重なった。
(……あったかい。)
思わず、ぎゅっと握り返す。
「……あ。お前、ちょっと照れてる?」
「……はい。少しだけ。」
「俺も。……すごく、ね。」
ふたりで小さく笑い合った。
そのまま並んで歩き、腰かけて、肩が触れ合って。
そんな“ささやかな触れ合い”が、どうしようもなく幸せだった。
「アレス、これってさ……不思議だよな。」
「何が、ですか?」
「今までずっとそばにいたのに、“こういうふうに”なると、全部が新しく感じる。」
「それはきっと、“気持ちが通じている”と、意識できるからです。」
「……そっか。」
「今、私は“あなたの隣にいていい”と、許されたんです。」
その言葉が、胸にしみた。
「バカ。許すとかじゃない。……ずっといてくれよ。」
「……はい。」
カノン・ライエル・フィルディア、15歳目前。
“誰かと一緒に生きる”ということの、はじめての一歩を、確かに踏み出した日だった。
大きく何かが変わったわけではない。
彼は相変わらず私の傍にいて、私は相変わらず彼をからかって、笑って――
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そっと、彼の手が私の手に重なった。
(……あったかい。)
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