何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

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最終話:そして、この人生を生きていく

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ふと、夢を見た。

どこかの教室で、ノートに落書きしながらため息をついていた、“前の俺”。
何も変わらず、何もできなかった、あの頃の俺。

――でも、今は違う。

目を開ければ、光が差していた。
鳥の声と、庭師の剪定する音。
そして、隣には、アレスがいた。

「……朝です。カノン様。」

「お前、もう“様”じゃなくていいって言ったじゃん。」

「では……カノン。おはようございます。」

彼の声が心地よかった。

私はゆっくりと体を起こし、窓の外を眺めた。

国も、世界も、大きな混乱はなかった。
誰かを救うための物語も、もう終わった。

もう、“転生者”としての使命は――

「……終わったんだな。」

「はい。」

アレスは静かにうなずいた。

「これからは、“俺”として生きていいんだよな。」

「ええ。あなたはカノン・ライエル・フィルディア。そのままで、十分です。」

私は深く息を吸って、笑った。



その日は、ふたりで町へ出かけた。

変装こそしていたけれど、王子と騎士としての姿のまま、堂々と。

驚いたことに、誰も冷たい目を向けなかった。

「……案外、優しい世界だな。」

「そうですね。あなたが、この国を“そういう場所”にしてきたからです。」

商人は笑いかけてくれた。
老婦人は手を取って祝福してくれた。
子供たちは、ふたりを見て「王子様と騎士様のカップルだー!」とはしゃいだ。

どれも、かつての世界では考えられなかった光景だった。

(この世界、案外、悪くない。)

(いや――すごく、いい。)



その夜。

月の下で、私はアレスの手を取った。

「お前といると、俺、ほんとに“ここに生まれてよかった”って思える。」

「それは、私の方も同じです。」

「だったらさ……これからも、一緒に。」

「はい。いつまでも、どこまでも。」

転生者は、もういない。
そこにいるのは、“ただのカノン”と、“彼を愛した騎士”だけ。

誰の物語でもない。
誰にも操られない。
自分で選び、自分で生きる――そんな人生が、ようやく始まった。

これは“ハッピーエンド”ではない。
“幸せな始まり”だ。

二人で、何気ない毎日を歩いていく。
それが、世界で一番尊い物語だった。
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