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たまらんのですよ
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ユズルさんは、ガサガサした声をしている。
「しょっちゅうひっくり返るし、変な声をしてるだろ」
「そんなことないねー、ユズルさんの中の人は良い声だねー……ちょっと素人臭いのがたまらんのですよ」
「棒演技で悪かったな」
ユズルさんは怒っている時以外は、ぶっきらぼうで平坦な喋り方だ。クセになるというのも本当だ。ユズルさんの家の床で寝ていると、朝はいつも「起きろ、遅刻する」とダルそうな声で起こして貰える。起床直後の棒演技はかえって、脳と耳に優しい。ユズルさんに体を揺すられる度に、ユズルさんのCVがユズルさんだというキャスティングに感動しては、飛び起きた。
だから、ちょっとしたふざけ合いだったとしても、中国語でユズルさんに「大好きです」「エッチしたい」と言って貰えて、めちゃくちゃムラっとした。正直言ってアニメでは絶対使えないような演技だし、一声以外の発音は全部間違えていたけど、俺はユズルさんが大好きだから「これは、抗えないねー……」と鼓膜が蕩けてしまいそうだった。
それで、つい調子に乗りすぎたのがいけなかった。「俺のユズルさんへの思いは誰にも負けないねー! 大好き、愛してます! ユズルさんのためなら、この身をいつでも捧げます!」という思いを切実に訴えたつもりが、奥手で硬派なユズルさんにはまだ早かったのか、ものすごく怒らせてしまった。
「ユズルさん、待って……!」
押し倒されて何度もキスをした後、腕を、ぐ、と強く掴まれた。それから、ユズルさんはすごく真剣な顔で俺の体を無理やり引き起こした。てっきりこのままアパートの外へ引き摺り出されてしまうのだと思って、ごめんなさい、って何度も謝っていたら「床じゃ体が痛いだろうがっ!」って怒鳴られた。
「えっ……!?」
「こっちに来い」
普段は「やめろ、狭い、重い」と一緒に横になることをすごーく嫌がられるのに、今日はユズルさんのベッドに入れてくれた。寝心地は全然良くないベッドだけど、今までは入れて貰えなかった特別な場所だから、すごく嬉しかった。
「ユズルさん、ユズルさん、大好き、愛してます……」
「……うん」
「ユズルさんは? ユズルさん、俺、キスはユズルさんが初めて……」
「……ぜってー嘘だろ」
「……日本の人とは初めて」
「はあ……お前は、ホントに……」
デッカイため息をつくだけで、ユズルさんはなんにも答えなかった。代わりにもう一度俺の上に覆いかぶさってキスをしてくれた。俺の足がモゾモゾ動くたびに、ユズルさんの腰が揺れる。ユズルさんの背中に腕を回すと、広くて逞しくて、それでいて温かい。
「ん、んんっ……ユズルさん、好き」
「……俺も」
俺も。
好きだって言われたわけじゃないけど、ユズルさんは硬派だから、これくらいがちょうどいい。俺も、俺も、俺も、俺も……百回以上頭の中で復唱しながら、ユズルさんの唇に夢中で自分の唇を合わせた。
ユズルさんの手が、俺の服の裾を掴んだ時はビックリしたけど、そう感じていることを少しでも悟られたらいけないような気がした。ユズルさんはきっと、「やっぱり、なんでもない。悪かった」って急に冷静になって逃げて行ってしまうかもしれないからだ。だから、腹や胸をゴツゴツした手で撫でられている間、体中に力を入れて、おとなしくしていた。
「あっ……、うう……」
「リィ」
ユズルさんはすごく恥ずかしそうにしながら「服を脱ごう」と提案してくれた。「OK」と着ていたグッチのTシャツを自分で脱いで放り投げたら、ユズルさんは大慌てでそれを拾いに行った。
そしてなんと、お前は着ているものをもっと大事にしろって、下はユズルさんが脱がせてくれた。
「……お前、パンツもブランドものなのかよ!?」
俺が履いているヴェルサーチのパンツを見て、ユズルさんはすごくビックリしたみたいだった。たったの一枚二万円、と伝えたらユズルさんは「……パンツが?」と目を丸くしていた。
「これも、脱がないと……」
「……今?」
「うん」
俺だけを裸にして辱しめようとするなんて、ユズルさんってばそういう趣味を持っていたんだって、ちょっと意外だった。パンツのウエスト部分に手をかけたユズルさんは、「ヤバイ、もう濡れてる」と呟いた。
「ユズルさん、そういうこと言うのやめて欲しいねー……」
「あ……? こんな高いパンツを汚すとか、絶対ヤバイだろ」
「ユズルさんってば……」
パンツが濡れたのはユズルさんが膝でグリグリしてきたからなのに、とぼけるうえに「こんなに汚して大丈夫なのかよ」「しょうがねーから、後で俺が洗ってやる」なんて世話を焼きながら言葉責めまでしてくるのだから性質が悪い。セックスでこんなふうに責められるのは初めてなのと、ユズルさんは意外と上級者で高度なプレイが好みなんだってことに興奮しすぎて、パンツから足を片方ずつ引き抜かれている間、ペニスは痛いくらいに勃起してしまっていた。
「あっ……」
全裸にされてしまった後、また先走りが滲んだ。ユズルさんにも脱いでほしいのに「いいから。おとなしくしてろ」ってまた抑えつけられてしまった。
「しょっちゅうひっくり返るし、変な声をしてるだろ」
「そんなことないねー、ユズルさんの中の人は良い声だねー……ちょっと素人臭いのがたまらんのですよ」
「棒演技で悪かったな」
ユズルさんは怒っている時以外は、ぶっきらぼうで平坦な喋り方だ。クセになるというのも本当だ。ユズルさんの家の床で寝ていると、朝はいつも「起きろ、遅刻する」とダルそうな声で起こして貰える。起床直後の棒演技はかえって、脳と耳に優しい。ユズルさんに体を揺すられる度に、ユズルさんのCVがユズルさんだというキャスティングに感動しては、飛び起きた。
だから、ちょっとしたふざけ合いだったとしても、中国語でユズルさんに「大好きです」「エッチしたい」と言って貰えて、めちゃくちゃムラっとした。正直言ってアニメでは絶対使えないような演技だし、一声以外の発音は全部間違えていたけど、俺はユズルさんが大好きだから「これは、抗えないねー……」と鼓膜が蕩けてしまいそうだった。
それで、つい調子に乗りすぎたのがいけなかった。「俺のユズルさんへの思いは誰にも負けないねー! 大好き、愛してます! ユズルさんのためなら、この身をいつでも捧げます!」という思いを切実に訴えたつもりが、奥手で硬派なユズルさんにはまだ早かったのか、ものすごく怒らせてしまった。
「ユズルさん、待って……!」
押し倒されて何度もキスをした後、腕を、ぐ、と強く掴まれた。それから、ユズルさんはすごく真剣な顔で俺の体を無理やり引き起こした。てっきりこのままアパートの外へ引き摺り出されてしまうのだと思って、ごめんなさい、って何度も謝っていたら「床じゃ体が痛いだろうがっ!」って怒鳴られた。
「えっ……!?」
「こっちに来い」
普段は「やめろ、狭い、重い」と一緒に横になることをすごーく嫌がられるのに、今日はユズルさんのベッドに入れてくれた。寝心地は全然良くないベッドだけど、今までは入れて貰えなかった特別な場所だから、すごく嬉しかった。
「ユズルさん、ユズルさん、大好き、愛してます……」
「……うん」
「ユズルさんは? ユズルさん、俺、キスはユズルさんが初めて……」
「……ぜってー嘘だろ」
「……日本の人とは初めて」
「はあ……お前は、ホントに……」
デッカイため息をつくだけで、ユズルさんはなんにも答えなかった。代わりにもう一度俺の上に覆いかぶさってキスをしてくれた。俺の足がモゾモゾ動くたびに、ユズルさんの腰が揺れる。ユズルさんの背中に腕を回すと、広くて逞しくて、それでいて温かい。
「ん、んんっ……ユズルさん、好き」
「……俺も」
俺も。
好きだって言われたわけじゃないけど、ユズルさんは硬派だから、これくらいがちょうどいい。俺も、俺も、俺も、俺も……百回以上頭の中で復唱しながら、ユズルさんの唇に夢中で自分の唇を合わせた。
ユズルさんの手が、俺の服の裾を掴んだ時はビックリしたけど、そう感じていることを少しでも悟られたらいけないような気がした。ユズルさんはきっと、「やっぱり、なんでもない。悪かった」って急に冷静になって逃げて行ってしまうかもしれないからだ。だから、腹や胸をゴツゴツした手で撫でられている間、体中に力を入れて、おとなしくしていた。
「あっ……、うう……」
「リィ」
ユズルさんはすごく恥ずかしそうにしながら「服を脱ごう」と提案してくれた。「OK」と着ていたグッチのTシャツを自分で脱いで放り投げたら、ユズルさんは大慌てでそれを拾いに行った。
そしてなんと、お前は着ているものをもっと大事にしろって、下はユズルさんが脱がせてくれた。
「……お前、パンツもブランドものなのかよ!?」
俺が履いているヴェルサーチのパンツを見て、ユズルさんはすごくビックリしたみたいだった。たったの一枚二万円、と伝えたらユズルさんは「……パンツが?」と目を丸くしていた。
「これも、脱がないと……」
「……今?」
「うん」
俺だけを裸にして辱しめようとするなんて、ユズルさんってばそういう趣味を持っていたんだって、ちょっと意外だった。パンツのウエスト部分に手をかけたユズルさんは、「ヤバイ、もう濡れてる」と呟いた。
「ユズルさん、そういうこと言うのやめて欲しいねー……」
「あ……? こんな高いパンツを汚すとか、絶対ヤバイだろ」
「ユズルさんってば……」
パンツが濡れたのはユズルさんが膝でグリグリしてきたからなのに、とぼけるうえに「こんなに汚して大丈夫なのかよ」「しょうがねーから、後で俺が洗ってやる」なんて世話を焼きながら言葉責めまでしてくるのだから性質が悪い。セックスでこんなふうに責められるのは初めてなのと、ユズルさんは意外と上級者で高度なプレイが好みなんだってことに興奮しすぎて、パンツから足を片方ずつ引き抜かれている間、ペニスは痛いくらいに勃起してしまっていた。
「あっ……」
全裸にされてしまった後、また先走りが滲んだ。ユズルさんにも脱いでほしいのに「いいから。おとなしくしてろ」ってまた抑えつけられてしまった。
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