お隣さんがパンツを見せろと言うからプロ意識を持ってそれに応える

サトー

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鈴井さんは腕の中(2)


「触りあったり、あの、俺が、生田さんのをフェラするのは、どうかなって……」

 真っ赤になって下を向いている鈴井さんは、どうかしたらこのまま小さく萎んでしまいそうだった。こんなにピュアで素直な青年にしゃぶってもらったということが、未だに自分でも信じられないでいる。
 体調が悪いようだと気づいて家に帰したあの日以来、明らかに鈴井さんの様子が変わった。あの時の罪悪感によるものなのだろうけど、すごく頑張ってサービスをしようとしてくるし、それにそれに……なんというか可愛さがものすごい勢いでパワーアップしているような気がする。
 
「うーん、そうだな……。やりたいことが決まっていないから一先ず添い寝をお願い出来るかな。ゆっくりしながら考えようかと思って」

 がっついていない雰囲気を必死で作りながら鈴井さんをベッドへ連れていく。本心は「着ているものを全部剥ぎ取って、可愛い可愛いと鈴井さんの全身をペロペロ舐め回したい。ちっちゃな乳首を片方は吸って、もう片方は指で触っている時に『俺のおっぱい好き? たくさん舐めてね♡』と囁きながら頭を撫でてヨシヨシして欲しい。その後は、キスしながらお互いを触りあって、終わってからも『気持ちよかった♡』と可愛く甘えて欲しい。そうしたら朝まで鈴井さんは帰れなくなっちゃうか……。んふ、んふ……」だが、もちろんそれを伝えるわけにはいかない。

「キモイけど、嫌だって言ったらちゃんとやめてくれそうだし、体調が悪い時は家に帰してくれるから密室で二人きりになっても大丈夫だよね」という印象を維持しなければ。

 幸い鈴井さんはとても素直なので「はい」と素直にベッドまで着いてきてくれる。遠慮しながら寝転んだ後に、「何かしたいことを思いついたら、生田さんの好きなようにして大丈夫ですよ」という無防備さは心配になるが、嫌がられていないのであればそれでいい。
 ベッドの上でそっと抱き寄せた鈴井さんの身体からは石鹸のいい香りがした。事前にシャワーを浴びてきたのだろう。やっぱり「いつでも警戒していなきゃ、怖い」という気持ちがあるのか鈴井さんはぎゅっと目を閉じて身体を硬くしている。
 伝わるかはわからないが、大丈夫、何もしないよという意味を込めて背中を擦ってやると強張っていた鈴井さんの身体からふっと力が抜けていく。

「温かいです」

 ふにゃ、と笑う鈴井さんの柔らかそうな頬があまりにも可愛くて見とれてしまった。優しいから、どんな時でもなるべく笑顔を絶やさないようにしているのだろう。

「何か話してくれる?」
「はい! えーっと、俺の友達が最近車を買ったって自慢してくるんですけど……」

 なんでもいいから話して欲しいという無茶な要望にも鈴井さんは応えてくれる。初めてそう頼まれた時はどう見ても困っていたが、だいぶ慣れてきたのか今ではスラスラといろいろなことを話してくれるのだから鈴井さんはすごい。払った金額以上に一生懸命やってもらっている気がして、申し訳ないと感じる程だ。

「友達が……車で行ける所まで行ってみようって言うんです」
「へえ……どこまで行くの?」
「うーん……京都か九州? それか北海道?」
「えっ……」

 若さが溢れる友達との大雑把な計画を話しながら鈴井さん自身も「えへへ……」と笑っている。さらっとした頬ときゅっと上がる口角に視線が釘付けになったものの、不用意に見つめすぎると警戒されるためなんとか目を逸らした。
 鈴井さんは他にも、今年は本当に面白い軽自動車が多い大豊作の年だと感じていること、子供の頃にお父さんに連れられて中古車屋を巡ったことをポツポツと話してくれた。

 聞いていて心地いい鈴井さんの可愛い声。一応、添い寝をお願いしていたため、身体をぴったりとくっつけているのに、ぎゅっと腕を掴んでいてくれる。本当に可愛いな、こんな子が恋人だったらきっとさぞかし幸せだろうと思う。


「……鈴井さんは自炊はするの?」
「ご飯を炊いたり、麺を茹でたりするのが、自炊に含まれるんなら、やってるんだと思います……」

 だんだんと鈴井さんの話すペースがゆったりとしてきて、声も小さくなっている。気がつかれないように様子を窺うと大きな目を数秒閉じた後、目蓋を開くを繰り返している。鈴井さんが今にも眠ってしまいそうなのだとわかった瞬間に、自分の鼓動が大きく速くなっていくのを感じた。

「食べ物は何が好き? 何が食べたい?」
「う、ん……、肉と、カレーと、寿司……」
「そうか。じゃあ機会があったらたくさん食べよう。……出来れば一緒に」
「ん……」

 すう、と小さな寝息が聞こえてきた。
 鈴井さんが眠ってしまっている。学校やアルバイトでだいぶ疲れてしまっているのだろう。それでも、頭のどこかで眠ってしまっても大丈夫だと判断してくれたのだろうかと思うと喜びが込み上げてくる。

 鈴井さんの身体を心配する気持ちと、自分の腕の中で鈴井さんが気持ち良さそうに眠っていることへの嬉しさが混ざり合うという複雑な感情をどう処理したらいいのかがわからない。油断して少しでも口を開けば「ああ……」と感嘆の声が漏れてしまいそうだった。唇を硬く結んだまま、鈴井さんの寝息に耳を傾ける。幸福で温かい瞬間だった。

「んぅ……」

 小さく身動ぎした後、鈴井さんがますます身体を密着させてくる。たぶん、自分の家で枕か何かを抱いて寝ていると勘違いをしているのだろう。
 ……少しだけ迷ってから、ほんの一瞬だけ鈴井さんの額に唇で触れた。鈴井さんは前髪を下ろしているため、肌に直接触れたわけではない。それでも、罪悪感と緊張でしばらくの間は息を殺した状態で鈴井さんの寝顔をじっと見つめていた。

 鈴井さんからは、キスはいいともダメとも言われていないため、未だにしたことがない。単純に性器に触れて射精へ導くよりもずっと、キスは愛情表現という意味合いが強いと感じる。だからこそ頼めないし、「それはちょっと無理です」と鈴井さんから言われるかもしれない行為だ。金のやり取りで繋がっている関係を越えて、愛情という求めてはいけないものを鈴井さんに求めてしまいたくなる自分がただただ恐ろしかった。

 柔らかい髪をゆっくり撫でてから、目を閉じる。このままずっと鈴井さんのことを見つめていたら、我慢が出来なくなって欲求のままに行動してしまいそうだったからだ。
 眠ってしまっていて何も知らない鈴井さんにそんな事は出来ない。ただ、若くて可愛い存在に触れられれば満たされると思っていたのに、満足するどころか、絶対に手に入らないものを欲しいと望んでしまっているような気がする。


「ん……、……んえ、えっ……? 俺、寝てた……? えっ? えっ!?」
「……鈴井さん、大丈夫だよ。ほんの短い時間うとうとしていただけだから。そんなに慌てないで」

 本人は「ごめんなさい! 普通に寝てました! 本当にごめんなさい!」とパニック状態になっていたが、ハッと目を開けた後にオロオロと狼狽えている姿は一生懸命で、見ているだけで心が和んだ。
 ただ、ここでしっかりフォローをしておかないと、真面目な鈴井さんは眠ってしまっていたから返金するとか、次回は無料にするとか、そういったことを言い出しかねない。今にも飛び起きてペコペコと頭を下げてきそうな身体をしっかり捕まえていないといけなかった。

「大丈夫だよ。……その、一緒に眠ったことで俺の疲れもとれたよ。鈴井さんは体温が高いから温かかったし」
「本当に……? でも、すみません……、俺も温かくて気持ちよくて、つい……」

 無意識なのか計算してやっているのかはわからないが、しょんぼりと落ち込んでいる鈴井さんに上目遣いでじっと見つめられる。……添い寝の延長で腕枕をしているからそうなるのは仕方がないことなのだろうけど、甘えられているような気分になってくる。小さな可愛い唇や潤んでいる大きな瞳は無防備で、「誘われている?」と勘違いしそうになってしまう。

「……べつに眠い時は寝てもいいんだよ。俺はこうしてくっついているだけでも癒されるから」
「でも……」

 もう少し鈴井さんに元気が出るまでこうしていよう。なるべく埋め合わせとか、お詫びという話にならないようにしないといけない。肩でも揉んでもらえば、鈴井さんの中の「お金を貰っているのに眠ってしまった……!」という気持ちも薄れるだろうか。そんなことを考えていると、鈴井さんがおずおずと身体に腕を回してきた。

「……ん?」
「俺、生田さんともっと話したいし、ちゃんと起きている状態でこうしていたいんです。だから、眠りたくないのに……」

 ぎゅーっと心臓を直接鷲掴みにされるような一言だった。この言葉はきっと鈴井さんからのサービスだ。きっと、もう少し鈴井さんの可愛さに慣れれば何もかもを金と性欲でバッサリと割り切れるようになる。未来の自分にそれは託そう。だから、今夜は「ありがとう」と素直に優しさを受け取ることにして、くたりと力が抜けたままの身体を思いきり抱き締めた。
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