元お隣さんとエッチな暮らし

サトー

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ユウイチさんの心の闇(2)


「今日もユウイチさんの部屋で寝てもいい?」

 ドアが開いていたから、ノックもしないで部屋の中を覗き込んだ。ベッドをコロコロで掃除していたユウイチさんは、すぐに「いいよ」って俺を部屋に入れてくれた。……新しい家に引っ越してきて三日が経つけど、俺はまだ一度も自分の部屋で寝たことがない。

「片付け苦戦してる?」
「うん……。大事なものを探そうとして片っ端から段ボールを開けてたら、今は使わないものがいっぱ出てきて、それで片付くどころか余計に部屋が散らかっちゃった……」

 一つの段ボールに入るだけ物を詰め込んだせいで、大事な物やすぐに使いたい物とそうじゃない物が混ざって、なかなか片付けが進まない。仕事から帰ってきてからやればいいんだろうけど、疲れていて、それで結局は「……次の定休日に頑張ればいいや」って、ついついサボってしまう。
 ユウイチさんも引っ越してきた日の翌日からは普通に仕事へ行っているけど、荷造りの段階で「服」「仕事」「即開封」「重要」というふうに、中身をマジックで段ボールに大きく書いていたから、俺みたいに「どこに何があるかわからない! どうしよう!」と慌てることもなく、すでに快適な部屋を完成させてしまっている。

 せっかくユウイチさんに部屋を用意して貰ったのに俺ってダメだな、次の休みの日にはちゃんと片付けを終わらせよう。だから、しばらくの間はごめんなさい……と心の中で謝りながらユウイチさんのベッドに潜り込んだ。



「ユウイチさん、何見てるの?」
「……なんでもないよ。ただのニュースだよ」
「俺も見たいです。一緒に見せてください」

 ダメだよって笑った後、ユウイチさんがコソコソとスマートフォンを隠そうとするのがおかしくて俺も笑った。
 ……少し前から俺とユウイチさんの中でお決まりになっている、じゃれ合いというか、遊びというか……二人でいると時々そういうものが出来上がる。

 寝る前になると、ユウイチさんはスマートフォンで明日の予定や天気を確認した後、ニュースサイトをチェックする。それが全部終わると俺からは絶対に見えないような角度で、何かを一生懸命調べ始めることが多い。すごく真剣な顔で、時々「なるほど」と呟いたり「はー……」と感心したようなため息を漏らしたりしながら、じーっとスマホの画面を眺めている。

 どうしても気になったから、「何を見てるんですか?」って聞いてみたら、面白いくらいにユウイチさんは動揺した。「いや、べつに?」と言いつつ、目は泳ぎ、手汗を何度も気にして、最終的には俺は何も言っていないのに「いやいやいや、違うから! 全然違うから!」と必死で何かを否定し始めた。

 たぶん、アダルトグッズとかそういうページを見ていたんだろうけど、慌てっぷりが面白くてそれで、「俺、まだ何も言ってませんよ」ってゲラゲラ笑った。……それ以来、ユウイチさんがコソコソとスマホを見ている時は「ねえねえ」って俺がいじっては、「いやいや、ダメだよ。マナトにはまだ早いから……」とユウイチさんが返事をして、それから二人でクスクス笑い合うという流れが出来上がってしまった。

 ……他の人に知られたら「何をやってんの?」「そんなことが楽しいの?」って呆れられるかもしれないけど……。家の中での事だし、ユウイチさんと俺しか通じないことだから、バカみたいだったとしても、いいよね、と思うようにしている。
 今日は笑い合った後に「エッチな道具を注文してたんですか?」ってユウイチさんの事をからかったら、そうだよ、って大きな手で尻を揉まれた。

「ひゃっ! 押さないで! くすぐったい……」
「こってる?」
「もう! やめてくださいよ……!」

 笑ったり、ユウイチさんから逃げようとモゾモゾ身を捩ったりしていたから、シャワーの後なのに、また汗をかいてしまいそうだった。明日も二人とも仕事だから早く眠らないといけない。ユウイチさんはアラームがなる五分前には目を覚まして、音が鳴る前にスッ……と目覚ましを止めてしまうくらい寝起きがいいけど、俺はいつも朝はグズグズとしてしまう。だから、本当は一刻も早く寝るべきなのに、もっと話をしていたくて、なかなか「もう寝ますね」の一言が言えなかった。



「ユウイチさん、荷物がすごくたくさんあったのに、もう全部片付けちゃったんですか?」
「いや……。段ボールごとクローゼットに突っ込んでるだけだよ」

 引っ越しの時はユウイチさんの持ち物の量に「あの狭い部屋のどこからこんなに荷物が……!?」とビックリしてしまった。同じ間取りに住んでいた俺の家はロクに物が無いのにすごく窮屈だと思っていたから、「ユウイチさんスゴイ……。収納名人……?」って感動してしまったくらいだ。



「……俺がずっとユウイチさんの部屋に入り浸ってるから、もしかして片付けがしづらいですか?」
「そういうわけじゃないけど……」

 違う、そんなことない、ってユウイチさんは否定してくれたけど、なんだかソワソワしていて居心地が悪そうだった。ユウイチさんだって、見られたくない大事な物を持っているかもしれないのに、ここへ引っ越してくる前から家にも泊めて貰って、俺ってすごく邪魔だったのかも、ということに今さら気が付いた。よくよく思い出してみたら、やっと一緒に住めるんだ、ってことに浮かれてはしゃぎすぎていたかもしれない。

「すみません……。俺、明日から頑張って自分の部屋をすぐに片付けます!」
「え……、いや、そんな……。無理しなくても……」
「ユウイチさんの部屋は居心地が良くて……。だから、また時々は眠りに来ると思います……」

 俺が就職してからはなかなか難しくなってしまったけれど、時々休みが合う日くらいは一緒に寝たいな、と思う。……寝室が別々だとセックスしたい時、俺はどうしたらいいんだろう、って事だけが少し気になるけど……。まだ引っ越してきたばかりで慣れないことも多いし、落ち着いてからそういうことは考えてもいいのかもしれない。とにかく部屋を片付けなくちゃ……という意思を固めつつ、眠い目をゴシゴシ擦る。

「……マナト」
「うん……?」
「……実は俺はマナトに、嘘を……」
「へえ……?」

 驚いて、仰向けで寝ていた体を慌ててユウイチさんの方に向ける。ユウイチさんはすごく深刻な顔をして、天井を眺めていた。

「嘘って……? 本当はサラリーマンじゃなくて、アダルトグッズの通販サイトをやって、それで生計を立ててるとかそういうことですか……?」
「……そうじゃない。たいしたことじゃないけど……」
「うん…?」
「いや……、あの……。そういう道具は段ボール一箱程度の量と言ったけど、あれは嘘で……。本当は六箱もあるから、ちょっとマナトの目を盗んで作業しようかと思って」
「ええ~!?」

 ユウイチさんが段ボール六箱分のアダルトグッズを所有しているということよりも、やっぱり俺は「そんなにいっぱい何処に納めていたんですか!?」ということに驚いてしまう。

「そんなに持ってたんだ……。ユウイチさん、引っ越し大変でしたね……」
「……数を確認したら、いつの間にか増えてるものもあって驚いたよ」
「増える……? そんなことあるんですか? あっ、そうだ! 良かったら片付けるの、俺にも手伝わせてくれませんか?」
「なんだって!」

 ユウイチさんは「いや、でも」「それは、ちょっと……」と何かを言いたそうにしては口を閉じた。かえって困らせてしまっている? って少しだけ不安になる。だけど、ビックリしてしまうようなパンツやアダルトグッズも、ユウイチさんにとっては時間をかけて選んだすごく大切なものだ。一緒に暮らしていくんだし、コソコソ隠すよりも「すごい! ユウイチさん、こんなにたくさんいつ集めたんですか!?」ってオープンな方が長い目で見たら所有者であるユウイチさんにとって、良いことのような気がする。



「ユウイチさんが俺と使おうと思って集めてくれた大事なモノなんですよね? それに、いっぱい使おうって約束した……。だから、俺にも手伝わせてください」

 ……一生懸命頼んだのにユウイチさんはなかなか首を縦に振ってくれなかった。だから、卑怯だってわかっていたけど「お願いします」って、顔を覗き込んだら、「ふー……」と長い長いため息をついた後、わかったって、ユウイチさんは頷いてくれた。



 それで、時間を作ってユウイチさんの持ってる大事な道具を二人で片付けることになった。
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