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第一章
6.また来よう②
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「そういえば、最近キルに会った?」
カイトは飯を頬張りながら尋ねてくる。俺は昨日の夜の事を思い出す。
「あぁ、昨日夜にたまたま城の廊下で会ったよ」
「そうなんだ! 僕なかなか会えなくてさ……なんかタイミング悪いのかな」
「あいつ夜散歩してたから、カイトもしたら会えるんじゃないか」
「散歩? ふふっ、なにそれ。キルそんな事してるの?」
「それで、いい加減話してくれないか?」
前置きはもう十分だろうと、頬杖ついて詰め寄る。でも、なんとなく言いたい事は分かってる。カイトが勿体ぶって話す話はいつも決まってる。
「ははっ、そうだねぇ……実はね、僕好きな人ができて」
ほらやっぱり。
「へぇー」
「……反応薄くない?」
「いや、なんとなく分かってたから」
「それでも、もうちょっと」
「……」
俺にそんな反応を求めるのは無理がある。カイトは姿勢を正し口元に手を当てコホンっと一回咳払いをする。手はそのままにして潤んだ瞳を下に向ける。
「でもね、今回は違うんだよ。その人と……実は恋人になれたんだ」
「へぇー」
さっきの声色よりも若干高めにして返事を返す。
「えぇ~! 驚かないの?」
「いや、よかったな。おめでとう」
「ありがとっ! いやぁ照れるなぁ」
こそばゆそうに鼻先を掻くカイトに疑問が浮かぶ。カイトはいつも話してくれるけど、なんでだろ。なんのアドバイスも共感だってしてやれる事は出来ない。一番話す相手には向かないと思う。
「前から思ってたんだけど、なんでわざわざ俺に話してくれるんだ?」
「えっ? どういう事?」
「いや、俺に話してもつまんないだろ」
「ははっ! つまんないって」
カイトは腹を抱えて笑っている。そんなに可笑しいだろうかと眺めていると、カイトは目を細めて微笑む。
「だって、そう約束したから」
「約束?」
「えっ!? 覚えて、ない? ほら」
カイトは一つ、昔話をし始める。それを聞いて、俺の記憶のページが開かれ出す。
△
「ついにここまできたね!」
「おお!」
椅子をガタガタゆらし、時折机を叩きながら今日もキルとカイトは最近ハマっている恋愛小説にのめり込み、あーでもないこーでもないと盛り上がっている。
「なんかさぁ、この本の主人公ってヴァンにちょっと似てるんだよねぇ、この不器用なところとか!」
「俺も思ってた! ヴァンも好きな人とかできても奥手そうだよなー」
「くだらない。てか、うるさいから静かに読めよ」
俺はその興味のない内容に呆れ、手に持っていた分厚い本をそのまま読み進める。
「ほんっとつまんねぇなぁー。俺らもう10歳よ? 恋愛とかに興味持つ歳でしょうよ」
「別に。生きてく上で困るなら考える」
はぁと力のないため息が俺に飛ぶ。
「俺はこいつの将来が心配だよ……」
「でも僕達も大きくなったら何してるかな!」
カイトが読んでいた小さな本を胸でギュッと抱きしめ、瞳を輝かせて言う。
「そうだよなー! 俺たちどんな大人になってるかな?」
「やっぱり結婚して家庭をもったりしてるかな」
結婚!?家庭!? 歳に似合わない言葉に俺は思わずカイトを見る。
「おま、なんかいきなりぶっ飛んだな」
キルも微妙な顔で笑っている。
「やっぱり、好きな人とはずっといたいものじゃないの?」
「まっまぁ、そうだな」
「僕、好きな人出来たら二人に一番に教えるからね!」
カイトの勢いは止まらない。けど、なんだかその言葉は俺たちのことを特別と言ってるようにも聞こえて、少しこそばゆい気持ちになる。
「おう! じゃあ俺もな!」
キルもそれが嬉しかったのか歯に噛む様に笑っている。そして、同時に二人がこちらを見る
えっ?まさか俺も……?
こんな約束してたまるかと立ちあがろうとした時、キルが俺の前に立ちはだかる。見上げると小指を俺に向け差し出す。
「じゃあさ、俺らで約束しようぜ!」
カイトは飯を頬張りながら尋ねてくる。俺は昨日の夜の事を思い出す。
「あぁ、昨日夜にたまたま城の廊下で会ったよ」
「そうなんだ! 僕なかなか会えなくてさ……なんかタイミング悪いのかな」
「あいつ夜散歩してたから、カイトもしたら会えるんじゃないか」
「散歩? ふふっ、なにそれ。キルそんな事してるの?」
「それで、いい加減話してくれないか?」
前置きはもう十分だろうと、頬杖ついて詰め寄る。でも、なんとなく言いたい事は分かってる。カイトが勿体ぶって話す話はいつも決まってる。
「ははっ、そうだねぇ……実はね、僕好きな人ができて」
ほらやっぱり。
「へぇー」
「……反応薄くない?」
「いや、なんとなく分かってたから」
「それでも、もうちょっと」
「……」
俺にそんな反応を求めるのは無理がある。カイトは姿勢を正し口元に手を当てコホンっと一回咳払いをする。手はそのままにして潤んだ瞳を下に向ける。
「でもね、今回は違うんだよ。その人と……実は恋人になれたんだ」
「へぇー」
さっきの声色よりも若干高めにして返事を返す。
「えぇ~! 驚かないの?」
「いや、よかったな。おめでとう」
「ありがとっ! いやぁ照れるなぁ」
こそばゆそうに鼻先を掻くカイトに疑問が浮かぶ。カイトはいつも話してくれるけど、なんでだろ。なんのアドバイスも共感だってしてやれる事は出来ない。一番話す相手には向かないと思う。
「前から思ってたんだけど、なんでわざわざ俺に話してくれるんだ?」
「えっ? どういう事?」
「いや、俺に話してもつまんないだろ」
「ははっ! つまんないって」
カイトは腹を抱えて笑っている。そんなに可笑しいだろうかと眺めていると、カイトは目を細めて微笑む。
「だって、そう約束したから」
「約束?」
「えっ!? 覚えて、ない? ほら」
カイトは一つ、昔話をし始める。それを聞いて、俺の記憶のページが開かれ出す。
△
「ついにここまできたね!」
「おお!」
椅子をガタガタゆらし、時折机を叩きながら今日もキルとカイトは最近ハマっている恋愛小説にのめり込み、あーでもないこーでもないと盛り上がっている。
「なんかさぁ、この本の主人公ってヴァンにちょっと似てるんだよねぇ、この不器用なところとか!」
「俺も思ってた! ヴァンも好きな人とかできても奥手そうだよなー」
「くだらない。てか、うるさいから静かに読めよ」
俺はその興味のない内容に呆れ、手に持っていた分厚い本をそのまま読み進める。
「ほんっとつまんねぇなぁー。俺らもう10歳よ? 恋愛とかに興味持つ歳でしょうよ」
「別に。生きてく上で困るなら考える」
はぁと力のないため息が俺に飛ぶ。
「俺はこいつの将来が心配だよ……」
「でも僕達も大きくなったら何してるかな!」
カイトが読んでいた小さな本を胸でギュッと抱きしめ、瞳を輝かせて言う。
「そうだよなー! 俺たちどんな大人になってるかな?」
「やっぱり結婚して家庭をもったりしてるかな」
結婚!?家庭!? 歳に似合わない言葉に俺は思わずカイトを見る。
「おま、なんかいきなりぶっ飛んだな」
キルも微妙な顔で笑っている。
「やっぱり、好きな人とはずっといたいものじゃないの?」
「まっまぁ、そうだな」
「僕、好きな人出来たら二人に一番に教えるからね!」
カイトの勢いは止まらない。けど、なんだかその言葉は俺たちのことを特別と言ってるようにも聞こえて、少しこそばゆい気持ちになる。
「おう! じゃあ俺もな!」
キルもそれが嬉しかったのか歯に噛む様に笑っている。そして、同時に二人がこちらを見る
えっ?まさか俺も……?
こんな約束してたまるかと立ちあがろうとした時、キルが俺の前に立ちはだかる。見上げると小指を俺に向け差し出す。
「じゃあさ、俺らで約束しようぜ!」
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