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新人対抗戦編
アルベール王国vsアルフォンソ国3
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「それでは中堅は前へ」
これに勝てば負けはなくなる。まぁ一つも落とす気はないけどな。
「レーナ、一つだけ言っておく」
「なになにー?」
「ぶっ飛ばしてきなさい!」
「あいあいさー!」
俺はもうこのアルフォンソ国に対して情けをかける気などない。アリスの初戦を汚した時点で奴らが地獄に堕ちることは決定済みなのだ。
イエス様が許したとしても、俺が許すわけにはいかない。初戦のあれさえなければ、いくらか見せ場を作ってやっても良かったんだがな。
今度の相手は女の子か。目つきのきつい悪役令嬢みたいな顔をしている。可哀想に。レーナはぶっ飛ばせと言えばホントにぶっ飛ばす子だ。
「中堅戦----はじめ!」
『大地の女神!』
あら早い。悪役令嬢は目を見開いてまだ何もできていない。焦って詠唱をはじめたみたいだが、レーナが既に飛び出している。
「どーん!」
悪役令嬢は鳴ってはいけない音を体から響かせながら吹き飛んだ。口から何かキラキラしたものが飛び出しているように見えるが、何も見なかったことにしておく。
とても優秀な結界があるので、場外へ達する前には致命傷が治癒されて退場していた。
治癒された後も外でゲェと吐いていた。治ったとはいえ、直前の感覚が残っているのかもしれないな。多分内蔵が潰れたんだろうけど、そんな感覚俺も嫌だ。
それにしても予想通り早かったな。最速記録更新したんじゃないか? 少なくとも白雷隊で一位なのは間違いない。
「……中堅戦勝者----ラレーナ=ベルナベル!」
おや、さすがの審判も憐憫の目を悪役令嬢に向けている。……うん、ちょっとやり過ぎたかもしれない。ごめんなさい悪役令嬢さん。
初戦のあいつ以外はまだ何もしてないもんな。まぁあの試合見ればする気も失せるだろうけど。とりあえず次はもう少しだけ見せ場をあげてもいいかもしれないな。
「エリー、次はちょっと手加減」
「嫌よ」
喰い気味にきた。大分被せてきたよ。あ、エリーも怒ってる。初戦のあいつか。まぁエリーはアリスとかなり仲いいもんな。あんなことされちゃ簡単には許せないか。
本人じゃないとはいっても同じ国の同じチームだもんな。ぶつけたくなる気持ちはすごく分かる。痛い程に分かる。さっきまでそうだったし。
でも悪役令嬢のゲロでちょっとだけ我にかえっただけなのだ。まぁ……ご愁傷様……初戦のあいつを恨むんだな。
「それでは副将、前へ」
エリーはどう戦うつもりだろうか。ただ圧倒するだけならさっきまでと同じだが……
「副将戦----はじめ!」
「舞え、疾く速く。その体は何より強く」
『身体強化』
まずは強化からか。詠唱も前のやつと同じだな。アルフォンソ国ではこの詠唱が主流なのかな。まぁ詠唱破棄を除けば、それなりに短くて良い詠唱だと思う。
エリーは……何もしてないな。どうする気だろうか。
「燃えろ。全てを焼き尽くす灼熱の業火。天を埋め尽くすその火勢で彼の者を討ち滅ぼせ」
だせぇ。なんだその詠唱、マジでやってるのか。確かにイメージはしやすいかもしれないが、あまりにもださい。俺は絶対に使いたくない。
『灼熱』
魔法属性=火
形状=不定
性質=爆発
発動数=1
威力=2200
魔力=5500
速度=1000
誘導=55
まぁ無駄な魔法式だこと。仕方ないんだろうけど……だが白雷隊に入る前のみんなのことも考えれば、悪くはないレベルだ。
ただ色々と選択が悪すぎる。まず第一に、エリーに炎魔法を使ったことだ。仮にもエリーは深紅の炎とか呼ばれてる炎魔法の家系。あの程度の炎魔法でエリーに挑むのは無謀だろう。
そして二つ目、中途半端な範囲魔法にしたことだ。相手はたった一人で、しかもわざわざ魔法の詠唱を待ってくれてるんだ。なら単体魔法で可能な限り威力を上げるべきだった。
全体の威力は、まぁあのレベルにしてはそれなりだろうが、範囲を無駄に広げすぎているせいで、単体に与えるダメージとしては下の下だ。
『爆発』
灼熱とかいう微妙な魔法がエリーに届く寸前、エリーが魔法を発動した。自分を中心として、だが自分は範囲から外した爆発魔法。
シンプルだがいい使い方だ。勢いのない相手の魔法はそれだけで吹き飛ばされている。
「終わり?」
「くっ……! 灼熱の業火よ。炎槍と成りて敵を滅ぼせ!」
いやだから灼熱の業火好きすぎるだろ。他にレパートリーないのかよ。やっぱりイメージ補足のためとはいえ、俺は詠唱は邪魔だな。よっぽどしっくりくる言葉が見つからなきゃ逆効果にしかならない。魔法名だけで十分だと再認識した。
「炎の槍」
ただ、今度は対象が単体の魔法にシフトしたようだ。最初の魔法の結果から範囲魔法ではダメージを与えられないことが分かったのだろう。だがそれでも人より大きな槍は無駄だと思う。
精々胸さえ貫ける大きさがあれば、致命傷にはなるのだから、無駄に大きくして威力を分散させるのは悪手だ。
『深紅の鎧』
なるほど、ここで使うのか。確かに効果的だろう。あれを発動したエリーにあの魔法でダメージを与えることは難しそうだ。
エリーは無造作に手を前へ出すと、飛翔する炎槍を握りつぶした。
「はぁ!? なんだよそれ!」
相手が悪かったな坊や。炎のスペシャリストは君ではなかったようだ。早めに気づけて良かったな。
「じゃあこっちの番ね」
「ま、待てよ!」
「待たない」
『炎の渦』
丁度包み込むサイズの炎が、相手を中心に燃え上がった。範囲を小さく絞って威力も無駄になっていない。相手はすぐに致命傷になり、強制退場された。
エリーらしいな。相手に何もさせず圧倒するわけじゃなく、相手に自由にさせた上で完封するとはな。文句のつけようのない完璧な勝利だろう。
「副将戦勝者----エリーゼ=エマニエル!」
これまでで一番の大声援だ。今のはやっと戦いという感じの魔法の応酬があったからな。その上で完璧な完封勝利だ。熱くならないはずがない。
「さすがエリーだな! だけどすぐ追いついてやるからな!」
「ボクだって負けないぞー!」
「エリー、すごかった」
「さすがエリーさん。白雷隊の副隊長ですね」
「ありがと。って副隊長はやめてよ。まだ慣れてないんだから……」
「言われなきゃ慣れないだろ? 諦めろよ」
「もう……」
さて、最後は俺か。力を出し過ぎないように気をつけよう。
これに勝てば負けはなくなる。まぁ一つも落とす気はないけどな。
「レーナ、一つだけ言っておく」
「なになにー?」
「ぶっ飛ばしてきなさい!」
「あいあいさー!」
俺はもうこのアルフォンソ国に対して情けをかける気などない。アリスの初戦を汚した時点で奴らが地獄に堕ちることは決定済みなのだ。
イエス様が許したとしても、俺が許すわけにはいかない。初戦のあれさえなければ、いくらか見せ場を作ってやっても良かったんだがな。
今度の相手は女の子か。目つきのきつい悪役令嬢みたいな顔をしている。可哀想に。レーナはぶっ飛ばせと言えばホントにぶっ飛ばす子だ。
「中堅戦----はじめ!」
『大地の女神!』
あら早い。悪役令嬢は目を見開いてまだ何もできていない。焦って詠唱をはじめたみたいだが、レーナが既に飛び出している。
「どーん!」
悪役令嬢は鳴ってはいけない音を体から響かせながら吹き飛んだ。口から何かキラキラしたものが飛び出しているように見えるが、何も見なかったことにしておく。
とても優秀な結界があるので、場外へ達する前には致命傷が治癒されて退場していた。
治癒された後も外でゲェと吐いていた。治ったとはいえ、直前の感覚が残っているのかもしれないな。多分内蔵が潰れたんだろうけど、そんな感覚俺も嫌だ。
それにしても予想通り早かったな。最速記録更新したんじゃないか? 少なくとも白雷隊で一位なのは間違いない。
「……中堅戦勝者----ラレーナ=ベルナベル!」
おや、さすがの審判も憐憫の目を悪役令嬢に向けている。……うん、ちょっとやり過ぎたかもしれない。ごめんなさい悪役令嬢さん。
初戦のあいつ以外はまだ何もしてないもんな。まぁあの試合見ればする気も失せるだろうけど。とりあえず次はもう少しだけ見せ場をあげてもいいかもしれないな。
「エリー、次はちょっと手加減」
「嫌よ」
喰い気味にきた。大分被せてきたよ。あ、エリーも怒ってる。初戦のあいつか。まぁエリーはアリスとかなり仲いいもんな。あんなことされちゃ簡単には許せないか。
本人じゃないとはいっても同じ国の同じチームだもんな。ぶつけたくなる気持ちはすごく分かる。痛い程に分かる。さっきまでそうだったし。
でも悪役令嬢のゲロでちょっとだけ我にかえっただけなのだ。まぁ……ご愁傷様……初戦のあいつを恨むんだな。
「それでは副将、前へ」
エリーはどう戦うつもりだろうか。ただ圧倒するだけならさっきまでと同じだが……
「副将戦----はじめ!」
「舞え、疾く速く。その体は何より強く」
『身体強化』
まずは強化からか。詠唱も前のやつと同じだな。アルフォンソ国ではこの詠唱が主流なのかな。まぁ詠唱破棄を除けば、それなりに短くて良い詠唱だと思う。
エリーは……何もしてないな。どうする気だろうか。
「燃えろ。全てを焼き尽くす灼熱の業火。天を埋め尽くすその火勢で彼の者を討ち滅ぼせ」
だせぇ。なんだその詠唱、マジでやってるのか。確かにイメージはしやすいかもしれないが、あまりにもださい。俺は絶対に使いたくない。
『灼熱』
魔法属性=火
形状=不定
性質=爆発
発動数=1
威力=2200
魔力=5500
速度=1000
誘導=55
まぁ無駄な魔法式だこと。仕方ないんだろうけど……だが白雷隊に入る前のみんなのことも考えれば、悪くはないレベルだ。
ただ色々と選択が悪すぎる。まず第一に、エリーに炎魔法を使ったことだ。仮にもエリーは深紅の炎とか呼ばれてる炎魔法の家系。あの程度の炎魔法でエリーに挑むのは無謀だろう。
そして二つ目、中途半端な範囲魔法にしたことだ。相手はたった一人で、しかもわざわざ魔法の詠唱を待ってくれてるんだ。なら単体魔法で可能な限り威力を上げるべきだった。
全体の威力は、まぁあのレベルにしてはそれなりだろうが、範囲を無駄に広げすぎているせいで、単体に与えるダメージとしては下の下だ。
『爆発』
灼熱とかいう微妙な魔法がエリーに届く寸前、エリーが魔法を発動した。自分を中心として、だが自分は範囲から外した爆発魔法。
シンプルだがいい使い方だ。勢いのない相手の魔法はそれだけで吹き飛ばされている。
「終わり?」
「くっ……! 灼熱の業火よ。炎槍と成りて敵を滅ぼせ!」
いやだから灼熱の業火好きすぎるだろ。他にレパートリーないのかよ。やっぱりイメージ補足のためとはいえ、俺は詠唱は邪魔だな。よっぽどしっくりくる言葉が見つからなきゃ逆効果にしかならない。魔法名だけで十分だと再認識した。
「炎の槍」
ただ、今度は対象が単体の魔法にシフトしたようだ。最初の魔法の結果から範囲魔法ではダメージを与えられないことが分かったのだろう。だがそれでも人より大きな槍は無駄だと思う。
精々胸さえ貫ける大きさがあれば、致命傷にはなるのだから、無駄に大きくして威力を分散させるのは悪手だ。
『深紅の鎧』
なるほど、ここで使うのか。確かに効果的だろう。あれを発動したエリーにあの魔法でダメージを与えることは難しそうだ。
エリーは無造作に手を前へ出すと、飛翔する炎槍を握りつぶした。
「はぁ!? なんだよそれ!」
相手が悪かったな坊や。炎のスペシャリストは君ではなかったようだ。早めに気づけて良かったな。
「じゃあこっちの番ね」
「ま、待てよ!」
「待たない」
『炎の渦』
丁度包み込むサイズの炎が、相手を中心に燃え上がった。範囲を小さく絞って威力も無駄になっていない。相手はすぐに致命傷になり、強制退場された。
エリーらしいな。相手に何もさせず圧倒するわけじゃなく、相手に自由にさせた上で完封するとはな。文句のつけようのない完璧な勝利だろう。
「副将戦勝者----エリーゼ=エマニエル!」
これまでで一番の大声援だ。今のはやっと戦いという感じの魔法の応酬があったからな。その上で完璧な完封勝利だ。熱くならないはずがない。
「さすがエリーだな! だけどすぐ追いついてやるからな!」
「ボクだって負けないぞー!」
「エリー、すごかった」
「さすがエリーさん。白雷隊の副隊長ですね」
「ありがと。って副隊長はやめてよ。まだ慣れてないんだから……」
「言われなきゃ慣れないだろ? 諦めろよ」
「もう……」
さて、最後は俺か。力を出し過ぎないように気をつけよう。
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