白雷のルシウス ~知識チートで最強への道を歩んでいたら、敵もチートだった~

がおがお

文字の大きさ
58 / 59
精霊の涙編

寂れた魔法具屋

しおりを挟む
「えぇ!? じゃあ風竜を仲間にしたの?」

 ルシウスは追いついた先で、シルヴィラについて説明していた。

「仲間ってわけじゃない。精霊界に乗り込む時限定で協力してもらえることになったんだ」

「風竜って強かったー!?」

 キラキラとした瞳でレーナがシルヴィラのことを問う。

「あぁ、深淵アビスよりは落ちるが、そう変わらないレベルだったな」

「戦力的には今ってどうなのかな?」

 アリスが問うているのは、今の戦力で精霊界と戦えるのかどうかということだ。

 アグニは精霊王と渡り合える実力を持っているだろう。しかしそれ以外は?

 ルシウスは良い魔法具を手にいれたことで、大精霊すら越える力を手に入れているが、その力は現状では短時間限定でしか使えず、継戦能力はほとんどない。

 シルヴィラは上位精霊を相手にする分には問題ないだろうが、大精霊相手には厳しいだろう。

 他の六人は複数で上位精霊を相手取ることはできるだろうが、圧倒的に数が足りない。

「大精霊以下の相手をする戦力が、全く足りていない」

 アグニが冷静に事実を答える。

「どうするんだよ?」と厳しい状況にイザベラが頭を抱える。

「戦力を増やすしかない。それも……深淵級の戦力を……」

 その発言に六人は息を飲む。

「深淵級ってそれ深淵しかいないよー?」

 レーナが言うことは当たり前で、当然のことだ。隔絶した力を持つからこそ深淵と呼ばれている。もし力がなければ深淵とは呼ばれていない。そしてそんなやつらを引き入れることが可能なのか、知る者はおらず、少なくとも前向きに考えられる内容ではなかった。

「なんとか説得してみるしかないな……」

「じゃあ竜王にも頼むの?」

「竜王は戦闘狂らしいからなぁ……戦闘は避けられないかも……ただ、もしかすれば可能性はあるかもしれない」

「竜王……私達はまた力になれないのね……」

 俯き、自身の力の無さに拳を強く握りしめる。口元はギリ--と強く結ばれている。

「気にしないで。みんなはどんどん強くなってる。本当だ。ちゃんと力になってくれてるさ」

 六人も自分達に全く力がないとは思っていない。しかし、場を決するような頂上の戦いとなれば、どれだけ無力かということもりかいしていた。

「絶対にもっと強くなるわ」

「俺もだぜ!」「あたしもあたしもー!」

「ルウ君一人にはさせないからね!」

 みんなの決意に頬を緩めるルシウス。

「あぁ。分かってるよ。それじゃあ、王都に戻ろう。竜王のところには、魔法具ができたら一人で行くよ」

 一行は王都への帰路につく。渓谷からは風が強く吹いており、大地の砂を巻き上げていた。





 ルシウスは魔法具作成と、報告のために王城へ来ていた。他のメンバーも一緒だ。

「そこの六人が白雷隊の隊員か。一人だけ年が離れているようだな?」

 陛下が値踏みするように隊員達を見回す。

「はい。彼女は元々冒険者をしていたのですが、私がスカウトしました」

「そうか。それで、精霊界--だったか」

「はい。そう遠くない未来、恐らく数年以内にこの世界が侵食されます」

「……今お主達はそれを防ごうと動いているのだな?」

「はい。まだ戦力も必要な物も足らず、準備している段階ですが……」

「良い。精霊界というだけで、既に手に負えるとは思えぬ事態だ。それに対抗できる可能性があるというのなら、なんでもやるがいい。必要なものがあれば言え。用意できるものなら用意しよう」

「ありがとうございます」

「うむ……ところで、戦力に当てはあるのか? 王国の騎士団や魔術師団はどうだ?」

「……物理攻撃が主体の騎士団では精霊の相手は難しいでしょう。魔術師団であれば、下位精霊なら相手にできるかもしれません」

 アルベール王が眉を寄せる。

「王国が誇る魔術師団が下位に分類される敵の相手か……いや、精霊なのだ。下位でも相当な力を持っているのだろう?」

「はい。それに下位精霊は数が多いと聞いています。その分人数が必要になるでしょう」

「わかった。その時がくれば言ってくれ」

「ありがとうございます」





「ここか?」

 ルシウスがエリーと来たのは、王都の様々な商店が集まる広場--から狭い路地を進んだ先にある寂れた店だった。

「そうよ。店はこんなだけど、腕は確かよ。父さんが魔法具を買う時はいつもここだったわ」

「こんな--とは言うようになったようじゃな。エリーゼ」

 店から出てきたのは、顎に長く白い口髭を蓄えた小さな男だった。

「グステオおじさん!」

 エリーが再会を喜ぶように、グステオと呼ばれた男に抱擁する。グステオは「わはは」と笑いながらエリーの背中をポンポンと叩いている。

「え? ドワーフ?」

 ルシウスが、正にドワーフと言った体躯をしているグステオを見て目を丸くする。

「そうよ。おじさんはドワーフなの。腕のいい職人って、武具に限らず人よりもドワーフなのよ」

 ルシウスはこれまで亜人族を見たことはなかった。存在だけは知っていたのだが、この王都にいたことに驚いていた。

「久しぶりじゃのう。で、どうしたんじゃ? 魔法具が必要になったのか?」

「えぇ。ただ、今日は店にある魔法具を買いにきたんじゃないの。素材を持ってきたから、魔法具を作って欲しいのよ」

「ふむ? それは構わんが、なんの素材じゃ?」

「ルウ」

 エリーに呼ばれて、ルシウスは異空間収納から風竜の鱗を七枚取り出した。鱗一つがエリーの顔程もある、巨大な翠の鱗だ。

 グステオは何もない空間から鱗を取り出したことにも驚いたが、それ以上に取り出した鱗に目を奪われていた。

「そ……それは?」

「風竜シルヴィラの鱗だ」

「風竜じゃとぉ!?」

 身体強化ばりに一瞬でルシウスまでの距離を詰め、見開いた目で鱗を見やる。

「これを使って、七人分の魔法具を作って欲しいの。お願いできる?」

「……あぁ、できる。できるとも! やらせてくれ!」

 グステオの瞳は子供のように輝いている。

「これほどの素材……初めてじゃ! これを扱えるなど儂はなんと幸運か!」

「あ……うん。それじゃあよろしくね?」

「任せるのじゃ! 一ヶ月後にまた来い! さっそく取りかかる!」

 グステオは我慢できないとばかりに、ルシウスから鱗を受け取ると店の中へ引き返していった。

「大丈夫なのか?」

「えぇ。腕は確か……なはずよ」

 エリーもグステオの腕は信頼しているが、見たことのないグステオのテンションに少しだけ不安を感じていた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...