伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高

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小話

9※

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「本当に可愛い……愛しいな……」

 向ける眼差しは完全に捕食者のそれであるというのに、フェリシアの頬を撫でる手付きはどこまでも優しい。

「わ……わた、し、も、グレン様のことが、愛しいです」

 それはフェリシアの心からの言葉であり、それと同時に救いを求める言葉でもあった。つまりは

「これで終わりにしてほしい?」

 姑息な思惑など当然筒抜けである。うう、とこれまでとは違う羞恥で顔を赤く染めつつフェリシアは小さく頷いた。グレンはフェリシアの頬を撫でながら優しく微笑む。

「じゃあこうしようフェリシア」

 そうして告げられた言葉はさらにフェリシアを追い込む事になる。

「俺に触れられるのが本当に嫌になったら、この手を動かして阻止したらいい。そうすれば俺はすぐに君に触れるのを止めるよ」

 本当に嫌になったら――そんな事などあるわけがない。グレンに触れられるのが嫌だなんて、欠片も想った事はないというのに。

「それじゃあ少しも動けないじゃないですか……!」

 完全に言葉だけで動きを封じられてしまった。フェリシアは今度こそ本気でグレンを睨み付ける。けれどそれすらも彼を喜ばせる事にしかならず、グレンは心底嬉しそうに笑みを浮かべたままフェリシアの身体に新たな快楽の火種を灯していった。






 顔中に口付けの雨が降ってくる。どれも軽く啄む様なもので、それは官能よりも単純なくすぐったさを与え、そしてフェリシアの身体から緊張を奪っていく。なのに、グレンの手はスルスルとフェリシアの身体を覆う物を剥ぎ取っていくのだからこれまた見事に誤魔化された。気付いた時には一糸纏わぬ姿にされ、羞恥に再び緊張が走る。が、グレンは我が物顔でフェリシアの胸に手を伸ばすと、その柔らかさと肌触りを堪能し始めた。

 くぅ、とフェリシアの喉から堪えきれない声が漏れる。反射的に手を動かしそうになったが、それはどうにか耐えきった。そうやって羞恥と快楽に肌を震わせるフェリシアに、普段のグレンであれば気遣う声を掛け、少しずつゆっくりと事を進めて行くはずのグレンはしかし今日は容赦がない。
 己の掌で自由自在に動きを変える柔らかな膨らみをしばし堪能した後、今度はそれを両サイドから中央に押し寄せ、そしてすでに固く尖った胸の先端をじゅうと派手な音と共に吸い上げた。

「あぁッ!!」

 両方の胸の先を一気に口淫された事などこれまで一度たりともない。初めての、そして強烈なまでの快感にフェリシアの背中が仰け反る。

「あっ、あ、んッ……ふ、あ、……ぁあッ……!」

 気持ち良すぎて息が詰まる。フェリシアはどうにか身体を捩って逃げようとするが、次から次に与えられる快楽に身体の力も理性も奪われそれもままならない。
 いっそ辛すぎるこの快感。フェリシアの目の端からポロポロと涙が零れ、肌を伝ってシーツへ落ちる。その刺激にすら快感を拾ってしまい、それにまた涙が落ちる。
 けれど、それほどまでに辛くとも、フェリシアは両手を動かしてグレンを止めようとはしない。グレンはフェリシアの胸に舌を這わせながら、その様子を目にしてうっとりと微笑んだ。


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