結婚を前提にお付き合いを申し込まれたので了承したらなぜか説教されています。え、本当にどうして??

新高

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「現当主であるエーリク様は決してお許しにはならないでしょう」
「父上にはきちんと詫びを入れるし、ユリアナとの関係も」
「すでに婚約者を持つ貴族のご子息が、思春期に入った途端特有のソレを拗らせて他の女性と浮気をするのはままあることです。一時の熱に浮かされての蛮行ですが、その後考えを改めて本来のお相手に誠心誠意謝罪をすれば、そこから真の愛が育つ場合もあるでしょう。まさにエーリク様がいい例ですね」

 ニールスの父も若い頃に同じ様な熱に浮かされて婚約者を蔑ろにし、あわや婚約解消寸前までいった事がある。しかしどうにか正気に戻り、婚約者であったステアとの仲がより一層深まり無事結婚。今では社交界屈指の愛妻家として有名だ。

「ですがニールス様はその蛮行を貫かれました。そのおかげで今や公爵家はいい笑い物です。公爵家が、貴族達の……いいえそれだけでなく、一般の市民にまで嘲笑の対象とされています! ルンセン公爵家の権威は地に落ちる寸前で、その元凶は貴方でしかない!!」

 でも……とニールスは口をどうにか動かそうとするが上手く言葉が出てこない。あえて見ない様に、考えない様にしていた問題を目の前に、顔にめり込む勢いで突きつけられているのだから当然だ。

「ここからが本題です」
「……まだ本題ですらなかったのか!?」
「十中八九、ニールス様は勘当されるでしょう。公爵家を内側から貶めたのですから、その場で首を撥ねられないだけマシですね。さて、そうなった時にどうなさいます? 生まれてこのかたずっと公爵家の跡取りとして砂糖水より甘く育てられてきたニールス様に、はたして庶民の生活が耐えられますか? 下手をしたら庶民以下の生活かもしれない可能性もありますよ。身ぐるみを全て剥がれて路上に放置されるかもしれませんもの」
「そっ……それほどまでのことを僕がしたと言うのか!?」
「なさったんです、それ程までのことを。ご自身に一切非がないとはいえ、年頃になった途端それまでの婚約者に破棄を突きつけられた、というだけでマリーナ様も謂われなき中傷にさらされているんです。マリーナ様の名誉も、貴方は傷付けたのですよ」

 ニールスの顔から血の気が失せる。心変わりはしたけれど、それも結局はヘンリエッタが言った様に思春期を拗らせ、自由な恋とやらに憧れて、たまたま知り合ったユリアナと恋に落ちた。そこにマリーナに対する不満はなく、また彼女を傷付けたいという気持ちは欠片も無かったのだ。もしマリーナが異を唱え、少しでも嫉妬めいたものを見せてくれたらニールスは再び彼女の元へ戻るつもりでいた。しかしどこまでも控え目な性格をしている彼女はそうはしなかった。だから、ニールスは戻る機会を見失ったまま蛮行を続け、ついにはこんな事態を招いてしまったのだ。

「公爵家の威信は元より、伯爵家となによりもマリーナ様の名誉のために、ニールス様は断罪されるでしょう……さて、ここでユリアナ様にもお尋ねします。貴女様は、公爵家の身分を剥奪されたニールス様とそれでも愛を貫きますか? いいえ、貫けますか?」

 それが終止符となった。ユリアナは首を横に振り、呆然となるニールスを置いて逃げた。彼女としては、公爵家子息のニールスが好きなのであって、ただのニールスには一切興味はなかったらしい。あまりにも潔く立ち去るものだから、ヘンリエッタは思わず拍手を送ってしまった。

 憐れなのは残されたニールスだ。ユリアナと別れた事により勘当はなんとか免れたが、一度壊れたマリーナとの関係はどう足掻いても修復ができない。心を入れ替え、誠心誠意の詫びを見せ、マリーナもその謝罪を受け入れはしたが、けれどニールス自身は拒絶したまま。そうこうしている内にマリーナは遊学中の隣国の第三王子に見初められ、つい先日婚約者として公表された。まるで物語の様だと、一部の令嬢達の間で猛烈な声援を送られている。


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