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小話
その後の国王夫婦・1
しおりを挟むディーデリックの負傷から始まったとんだ地獄絵図からひとまず抜け出した、もとい、逃げ出したステンであるが、むしろ本番はこれからではなかろうかという予感がすでにあった。国王夫妻の寝室。その扉の前でステンはどうしたものかとしばし固まる。
絶対に、間違いなく、この扉を開けたが最後、過去最高に面倒くさい展開が待ち構えている――そんな未来図しか見えない。
できることならばこのまま寝室を素通りして執務室に籠もりたい。あそこのソファは寝床として充分だ。
決して妻であるティーアを拒絶しているわけでは無い。むしろ人として尊敬しているし、勿論妻としても愛している。が、だからといってそれで片付く問題では無いのだ、この扉の向こうで起きる事は。
それもこれも全部あの思春期夫婦が原因だ。あいつら本当に覚えてろ、と国王としても、そしていい年をした成人男性としても器の小ささを露呈しつつステンは覚悟を決めて扉を開けた。
「陛下、今日こそ子どもを作りましょう!!」
案の定、豪速球で問題しかない発言が飛んできた。
「王妃……うん、なんだ、まだ……起きていたのか」
「まだと仰いますけど、それこそまだこんな時間ですもの。寝るには早い時間でしょう?」
「あー……でも、健康のためと後なんだ……美容のためにも睡眠時間はしっかり摂らないとならないのだろう? それに沢山寝ないと大きくなれないぞ」
「またそうやって小さな子ども扱いを! わたくしだってもう立派な大人です! いつまでも小さなティーアではありません!」
臣下や民衆の前ではたおやかな姿を崩さない王妃も、リサとディーデリック、そしてステンの前ではこうして年相応の姿を見せる。
幼い頃から王家の人間として育ち、そして弱冠十一歳で和平の為にとかつての敵国に嫁いできた姫。それが王家に名を連ねる者の宿命だとしても、あまりにも過酷すぎる。
だからこそステンは可能な限り手を尽くした。その一つに、ティーアを精神面で支える為にあえて寵姫を雇ったわけであるが、ある意味大成功である意味大失敗であった。
せめて自分達の前でだけは、幼い姫の心が自由でいられるようにと接してきた。それと同時に、どうあがいても婚姻関係を続けていかねばならぬのだから、彼女にとって理想ともいうべき夫であろうとステンは努めた。淡い恋心を抱く事すら許されぬ状況に置かれた少女に、せめて擬似恋愛でもいいからそれに似た感情を抱かせてやりたいと、およそ一般女性が理想とする男性像であるようにと。
その甲斐あってか、ティーアは年頃になると思春期特有の羞恥からステンを時に避けるような素振りを見せ、しかし傍にいたいと近付いてみたりと随分と素直に可愛らしい姿を見せるようになった。元からあった彼女の真っ直ぐな気性もそのままで、ステン達にだけは甘えた姿を見せた。
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