3 / 11
3時間 溶けかけの氷
しおりを挟む
「どや、大丈夫そうか。」
それは、私がここで仕事をするようになって1ヶ月ほど経った時のことだった。
丸刈りで丸眼鏡をかけた先輩から声をかけられた。
「はい。」
私は小声で返事をする。そんな私に先輩は言う。
「まぁ、僕が一緒に付いて教えるのは、今日で最後やけど、わからん事あったら連絡ちょうだいよ。なんか、面白い事の1つでもあったらよかったんやけどな。頑張りや。」
先輩は、私を励ましてくれた。休憩時間は、いつもどこからか、お菓子とジュースを持ってきていた。
そんな先輩は明日からいなくなる。先輩はいつもふざけた感じだけど、自宅警備試験の上級や機械関係の資格をたくさん持っていた。
この職業に就いて15年になるそうだ。
そしてついに、上からお声がかかり、自宅警備委員会本部へ移動することになった。
そんな穴埋めに私が選ばれたわけなのだが、大丈夫だろうか。時間はそんな心配を待ってはくれない。
「そや、もし、賊でも入ってきたら、1番に司令室に逃げ込むんやで。あそこには、バトラーがおるから安心や。」
「バトラーですか?」
「司令室の中に座ってたロボットがおったやろ。あれがバトラーや。」
私は司令室に入った時に座っていたロボットを思い出す。
「バトラーって言うのは、自警(自宅警備員の略)仲間の間で勝手に呼んでいる愛称なんやけどな。やっぱり、この職業っていうのはいろいろあるんよ。」
先輩は、司令室にいた無表情のロボット『バトラー』についていろいろと話してくれた。
まず、ロボットが活躍する時代を作り上げたプロトタイプ自動学習機械の13機のうちの1機だという事。
内部のメモリーには、100年以上の記録があり、外側の部分は最新の技術が詰め込まれている。それは、今こうして話している間も更新しているらしい。
それから、その100年以上の記録が経験した、災害や犯罪、異常時の対応がすべてあるという事。
先輩もかなり前に大きな災害があり、助けられたらしい。
「ほんま、あの時は助かったで。今こうしていられるのも、バトラーさまさまっちゅうわけや。」
先輩は、何処か遠くの方を見ている。当時の事を思い出しているのだろうか。
「あの丸みを帯びた外見にはそんな秘密が。」
「そやねん、なんかあったらバトラーに頼りや。最初は無表情やし。なにこの変なロボット!怖っ!って思っていたんやけどな。」
先輩は笑いながら私に話しかけてくれていた。
「ふー。」
ひと息つく。先輩は、いつも飲んでいる黄色の炭酸水を一気に喉に流し込むと、立ち上がった。
「それじゃ、続き行こか。」
私も急いで立ち上がり、先輩の後ろ姿を追いかけていく。
「頑張らなきゃ。」
私は今はまだ追いつけぬ、先輩の後を追う決意を固めた。
そうして、時間は過ぎていき、ロッカーに制服を入れる。
「お疲れ様。」
「お疲れ様です。ありがとうございました。その、こ、これを。」
先輩に選別を渡す。今日の為に少し高めのお菓子セットを購入していた。
「おーええのに~。」
先輩から笑みがこぼれる。
「ほんま、ありがとうやで。せや、」
そう言って、先輩は自分の持っていた手さげカバンから、アメの袋を取り出す。
「これ、お返しにあげるわ。頑張ってな。」
「ありがとうございます。」
「おう、ほなな!」
そのまま、先輩は自転車に乗り行ってしまった。
先輩が見えなくなるまで見送った後に、私も駅に向けて歩きだす。先輩から貰ったアメを食べながら。
電車に乗り、口の中のアメが無くなったので、新しいアメを袋から取り出す。包み紙を開けると、薄い水色のアメが出てきた。それをゆっくりと口に入れる。少し、しょっぱい味がした。
次の勤務日がきた。もう、先輩はいない。私は教わった事を1つ1つ、丁寧にこなす。
作業をして、1時間ほど経った頃。
「ふぅー。あつい。」
外の気温は低いが、今は火照りを冷やすのにはちょうどいい。
今いる場所は、正面の大きな門とは真反対の位置になる。
ひと通り作業を終えて、休憩室へ向かう。
休憩室は司令室の近くにあり、歩いて行くと20分ほどかかる。っと言っても、走ったところで、途中に立ち入り禁止の柵やいくつもの扉、シャッターを開けたりしないと通れないところがあるので時間的には、あまり変わらない。
そんな時、ウォッグから音声が流れる。
「緊急、緊急。コード4、コード4。繰り返す。緊急、緊・・・」
「ん!?」
コード4、それは、侵入者が来た時の緊急連絡。それが繰り返される。慌てて音声を止める。
何事かと思ったが、考えている場合ではない。急いで、避難場所に走る。
先輩は『何かあった時は司令室のバトラーを頼れ』だ。
そうして、10分ぐらいは走っただろうか、息が続かない。やはり、日頃の、運動不足が、
「はぁっ、、、はあっ、、、」
休まないと倒れてしまいそうだ。心臓のあたりが苦しい。ぜいぜいと息を切らしながら、司令室まであと少しと言うところで、
ドゴン!
後ろの方で何か恐ろしい音がした。肩がビクッと震える。
バゴンッ!
続けて爆発音がして、私は転倒した。
それは、私がここで仕事をするようになって1ヶ月ほど経った時のことだった。
丸刈りで丸眼鏡をかけた先輩から声をかけられた。
「はい。」
私は小声で返事をする。そんな私に先輩は言う。
「まぁ、僕が一緒に付いて教えるのは、今日で最後やけど、わからん事あったら連絡ちょうだいよ。なんか、面白い事の1つでもあったらよかったんやけどな。頑張りや。」
先輩は、私を励ましてくれた。休憩時間は、いつもどこからか、お菓子とジュースを持ってきていた。
そんな先輩は明日からいなくなる。先輩はいつもふざけた感じだけど、自宅警備試験の上級や機械関係の資格をたくさん持っていた。
この職業に就いて15年になるそうだ。
そしてついに、上からお声がかかり、自宅警備委員会本部へ移動することになった。
そんな穴埋めに私が選ばれたわけなのだが、大丈夫だろうか。時間はそんな心配を待ってはくれない。
「そや、もし、賊でも入ってきたら、1番に司令室に逃げ込むんやで。あそこには、バトラーがおるから安心や。」
「バトラーですか?」
「司令室の中に座ってたロボットがおったやろ。あれがバトラーや。」
私は司令室に入った時に座っていたロボットを思い出す。
「バトラーって言うのは、自警(自宅警備員の略)仲間の間で勝手に呼んでいる愛称なんやけどな。やっぱり、この職業っていうのはいろいろあるんよ。」
先輩は、司令室にいた無表情のロボット『バトラー』についていろいろと話してくれた。
まず、ロボットが活躍する時代を作り上げたプロトタイプ自動学習機械の13機のうちの1機だという事。
内部のメモリーには、100年以上の記録があり、外側の部分は最新の技術が詰め込まれている。それは、今こうして話している間も更新しているらしい。
それから、その100年以上の記録が経験した、災害や犯罪、異常時の対応がすべてあるという事。
先輩もかなり前に大きな災害があり、助けられたらしい。
「ほんま、あの時は助かったで。今こうしていられるのも、バトラーさまさまっちゅうわけや。」
先輩は、何処か遠くの方を見ている。当時の事を思い出しているのだろうか。
「あの丸みを帯びた外見にはそんな秘密が。」
「そやねん、なんかあったらバトラーに頼りや。最初は無表情やし。なにこの変なロボット!怖っ!って思っていたんやけどな。」
先輩は笑いながら私に話しかけてくれていた。
「ふー。」
ひと息つく。先輩は、いつも飲んでいる黄色の炭酸水を一気に喉に流し込むと、立ち上がった。
「それじゃ、続き行こか。」
私も急いで立ち上がり、先輩の後ろ姿を追いかけていく。
「頑張らなきゃ。」
私は今はまだ追いつけぬ、先輩の後を追う決意を固めた。
そうして、時間は過ぎていき、ロッカーに制服を入れる。
「お疲れ様。」
「お疲れ様です。ありがとうございました。その、こ、これを。」
先輩に選別を渡す。今日の為に少し高めのお菓子セットを購入していた。
「おーええのに~。」
先輩から笑みがこぼれる。
「ほんま、ありがとうやで。せや、」
そう言って、先輩は自分の持っていた手さげカバンから、アメの袋を取り出す。
「これ、お返しにあげるわ。頑張ってな。」
「ありがとうございます。」
「おう、ほなな!」
そのまま、先輩は自転車に乗り行ってしまった。
先輩が見えなくなるまで見送った後に、私も駅に向けて歩きだす。先輩から貰ったアメを食べながら。
電車に乗り、口の中のアメが無くなったので、新しいアメを袋から取り出す。包み紙を開けると、薄い水色のアメが出てきた。それをゆっくりと口に入れる。少し、しょっぱい味がした。
次の勤務日がきた。もう、先輩はいない。私は教わった事を1つ1つ、丁寧にこなす。
作業をして、1時間ほど経った頃。
「ふぅー。あつい。」
外の気温は低いが、今は火照りを冷やすのにはちょうどいい。
今いる場所は、正面の大きな門とは真反対の位置になる。
ひと通り作業を終えて、休憩室へ向かう。
休憩室は司令室の近くにあり、歩いて行くと20分ほどかかる。っと言っても、走ったところで、途中に立ち入り禁止の柵やいくつもの扉、シャッターを開けたりしないと通れないところがあるので時間的には、あまり変わらない。
そんな時、ウォッグから音声が流れる。
「緊急、緊急。コード4、コード4。繰り返す。緊急、緊・・・」
「ん!?」
コード4、それは、侵入者が来た時の緊急連絡。それが繰り返される。慌てて音声を止める。
何事かと思ったが、考えている場合ではない。急いで、避難場所に走る。
先輩は『何かあった時は司令室のバトラーを頼れ』だ。
そうして、10分ぐらいは走っただろうか、息が続かない。やはり、日頃の、運動不足が、
「はぁっ、、、はあっ、、、」
休まないと倒れてしまいそうだ。心臓のあたりが苦しい。ぜいぜいと息を切らしながら、司令室まであと少しと言うところで、
ドゴン!
後ろの方で何か恐ろしい音がした。肩がビクッと震える。
バゴンッ!
続けて爆発音がして、私は転倒した。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる