正義の劣等生は異世界にて活躍する夢を見ない

マキシマム・ザ ・俊ちゃん

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第一章 黒ギャルにイケメンの仲間が加わった!(+モブ未満1名)

俺たちは逃げるに逃げられない運命の赤い糸で結ばれているわけだ

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 村から離れてしまうので、地図に載っていた川には向かわないと思っていた。
 しかし今から目指すのは村の反対側にある山賊のアジト。

 川の上流の先を目指さなければいけない。

 ついでにワイルドボアを解体して、肉を食べながら野宿で一泊というわけだ。

 オタカリはともかく、俺と白井は麓近くまで下りての登山なので、結果二度手間の形となってちょっとダルかった。

「こんなことなら、川遊びしながらオタカリさんを待ってればよかったな」
「結果論だけど、それは同意」

 俺たちの言葉に苦笑いを浮かべながら、オタカリは告げた。

「まあ、それで僕と出会えたかはさておき、そろそろ日が暮れる時間だ。獣道で距離を稼ごう」

 俺も白井も頷いて、黙々と皆で歩いた。

 それから十分くらいは歩いただろうか。
 ふと、視界の端でキラりと光る。

【察知】持ちの二人が同時にそれを見て、俺は疑問に感じながら、光る謎現象を注視した。

 七色に輝く小さな石が宙に浮いている。

「何ですかあれ?」
「ああ、ジンヤたちは初めてかい? あれが魔物の誕生の瞬間さ」

 オタカリの言葉に俺と白井は身構えた。

 白井はラウンドシールドを全面に出して。
 俺は何も武装できないので、荒ぶる鷹のポーズというか、ベスト・◯ッドよろしく鶴の構えで。

 しかし、自然体のオタカリは俺たちに説明を続けた。

「あれは魔石と呼ばれるものでね、一定の魔力を浴びると七色に輝く性質がある。普段はそこらへんの石と何ら変わらなく存在していて、大気中の魔素を吸収しながら育つんだ。で、あんなに綺麗に輝いているけど、しばらくすると――」

 怪しい紫色の煙を吹き出して、その中のシルエットは見覚えのある猪の形に整えられていく。

「石が得ている環境情報を元に最適な魔物が生まれてくるというわけさ」

 原材料『石』とか、なんだか歯がボロボロになりそうで、肉を食う気が失せる内容だった。

 しかし、俺はそんな気の抜けた思考を振り払い、のんびりと説明をするオタカリに尋ねた。

「オタカリさん、先手必勝って言葉をしってます?」
「ああ、もちろんさ。でもね、あの煙が残っている内はダメだ」
「え?」
「まだ魔石の状態と言った方がいいのかな? どんな攻撃も受け付けない」
「じゃあ、逃げるしかない、と?」
「まあ、逃げる時間はあるさ。それで放っておけば悪さをし始めるんだけど」

「ああ……」

 俺が納得したように頷くと、白井は首を傾げた。

「どういうこと?」
「つまり、生態系を荒らしたり、集落を見つけたら壊したり、ろくでもないことしかしないってことでしょ」
「その通り。ジンヤたちは山の中で普通の動物に出会ったかい? 集落で保護されている動物以外はとても貴重なんだよ」
「なるほどね」

 俺たちは逃げるに逃げられない運命の赤い糸で結ばれているわけだ。

 したたる血の糸みたいな?

「危なそうだったら僕が狙い撃つ。ちょっと二人の実力を見せてくれないか?」

「おっけぃ、任せておきなさい」
「分かった」

 というわけで、俺にとっては初のバトルが始まった。

 ガードが硬いって言っても白井が油断する可能性だってある。

 その時は俺が対処すればいい。

 果たして、ワイルドボアの煙が薄れていき、前足でガリガリと地面を削るような威嚇が始まる。

 来るっ!?

 えっ、ちょっ、待っ!?

 ワイルドボアは、バキバキと大木をなぎ倒しながら、速度をほとんど落とさず残像を纏って突っ込んできた。

 竜巻を見ている気分となるが、『これは凄ぇ! シャッターチャンスだ!』とか、そんな呑気なことをしている場合ではない。
 
「どうぇあっ!」

 俺が精一杯に狩人ゲーのようなジャンプ回避を見せると、もう一つの大きな風が吹く。
 残像を纏いながら、ワイルドボアに向かって飛び込む勇ましい黒ギャルがそこにいた。

 大きく鈍い衝撃音が響き、なんかもうこっちまで痛みを感じて顔を引きつらせてしまう。

 体ん中、グチャグチャのバキバキでしょうね。
 ええ、間違いなく……。

 白井はケロっとしていた。
 あいつにぶつかる相手が不幸だと感じるくらいに。

 ワイルドボアの方は、残った勢いでフラりとよろけるとゴロゴロと緩い傾斜を転がっていく。

 やべぇ……。
 瞬間的な加速だけならウサイン・ボ◯トとか、人間としての限界速度とか、そんなレベルは軽く超えていた。

 そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
 もっと恐ろしいものの片鱗を――。

 って、ポルポル君になるくらいにヤバかった。

 しかし、エンカウントみたいに敵が出現するとか、出現したタイミングで攻撃できないとか、なんだかゲームをやらされてる気分だよなぁ。

 まあ、ステータスもあるのに今更か。

 そんなことを考えてたら、白井はさっさと猪の死体を【ストレジ】で保管してしまう。

「圧勝だっね。マコトは強いな。僕よりも強いんじゃないかな?」
「ううん、オタロさんよりも生きるか死ぬかの経験が圧倒的に少ないと思う」
「ジンヤはマコトのサポートって感じかな? 優れた洞察力といい、きっと凄い魔法を隠しているんだろ?」

「え……あ、いや…………」

 ステータスを見せ合わなかったのが裏目に出たな。

 一方的に見せてもらっただけだし……。

「ジンヤ、どうしたんだい?」
「あ……ああ。考え事してた。後で俺たちのステータスも見せるから驚くなよ?」
「それは楽しみだ」

 俺の作り笑いの強がりにオタカリは涼しい笑顔で答えた。

 そして、再び山の中を歩く。

 白井はやっぱり強かった。
 予想はしてたけど、実際に間近で見るとへこむわ。

 もう、あいつ一人でいいんじゃないかなっ!
 そんな気分にさせられる。

 俺が劣等生なのは自分で理解しているつもりだけど、白井の前でカッコつけたいという自分もいて、モヤモヤが止まらないんだ。

「もうすぐ川だよ」

 オタカリの言葉がボヤっと聞こえ、俺はいつの間にか少し俯いて歩いていたのだと気付かされた。
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