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シエナ、特訓を始めます!
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次の日からシエナの魔力タンクを大きくする特訓が始まった。
「よし! 今日からは、シエナに魔術をバンバン使ってもらう! 返事はいいか!」
「イエッサー!」
「もう一回!」
「イエッサー!」
よしよし、とシエナの頭を撫でる。すると、彼女は目を細めて気持ちの良さそうな顔をしてくれた。
なにをしているかって? 気合い入れだ。
師匠と弟子という関係を味わってみたいと思って、返事も『イエッサー』にしろと教えた。
理由? なんとなくだ。
「それで、今日シエナに使ってもらう魔術だが……俊敏さを向上させる魔術とその逆の俊敏さを低下させるものにしようと思う」
「分かりました! ……じゃなくてイエッサー! がんばります!」
慌てて律儀に修正するシエナ、可愛い……
「では、お目当てのモンスターを探すぞ!」
「イエッサー!」
森の中を二人でしばらく周りに注意しながら歩いていると……今日の目当てのモンスターを一匹発見した。ぶひ豚である。
見た目は豚のままだが、豚よりも筋肉質で性格も攻撃的なモンスターだ。イノシシみたいなものだろうか。
俺達は木陰に隠れて、ユニークスキルと彼女には異常回復ポーションも忘れずに飲んでもらい……小声で指示を出す。
(じゃあ実際に魔術を使ってもらうが……俺には俊敏さを向上、あのぶひ豚には逆に低下させる魔術を付与してくれ。いつもどおり、杖の先端を目標に向けて今回の場合は『アジリティー』と詠唱した後に頭の中で向上させるのか低下させるのか考えたらその通りになる。分かったか?)
(イエッサー)
(よし。じゃあ、俺が前に出て戦闘を開始するからよろしく頼む)
そう言い残して木陰からタタタ、とぶひ豚に駆け寄っていく。
その足音にモンスターも気が付き……『ぶひぃいいいいい!』を声を上げて……突進をしてきた。
「《アジリティー》!」
後ろからシエナの魔術を唱える声が聞こえてくる。
すると俺の体の動きが速くーーあれ、速くなってるというよりかは遅くなってないか?
「《アジリティー》!」
もう一度、後ろから彼女の声が聞こえてくる。
すると、ぶひ豚の動きが遅くーーん? なんか突進速度が速くなってないか?
俺とぶひ豚は急速に距離を縮めていく。
……やっぱりどう考えても俺の動きが鈍くなってるな。まあ、これくらいならーー
「《ドレイン》!」
シエナが気を利かせたのか体力を奪い取る魔術を発動した。
すると、ぶひ豚が苦しみの声を……
「うぐぁあ!」
俺が苦しみの声を上げる。
……いや、シエナさん。おそらく杖の狙い、エイムがずれて俺に魔術がかかっちゃったんだろうが……くっ……きつい……!
ぶひ豚がこれ好機と更に突進速度を上げて俺に飛びかかってくる。
くそっ……舐めるなよこの豚がっ! これごときで殺られる俺ではないわァ!
「ハッ……ハッ……ハッ……!」
激しく息を切らせて俺は拳を上に振り上げる。
……ようやくドレインから解放……ではなく。ぶひ豚を倒すことが出来たぞ……!
ドレインと俊敏さ低下がネックとなり、討伐難易度『簡単』のモンスターを倒すのに五分かかってしまった。
なんで、ドレインを使われて生きているんだって?
途中何度もポケットに仕込んでいた回復ポーションを飲んで、体力を回復していたからな。あれがなかったら死んでたかも。
息をなんとか整え、皮を一部剥いでからシエナのもとに戻る。
「エリック様、お疲れさまでした! 支援魔術如何だったでしょうか? 上手く出来ているかいまいち分からなくて……あ、あと! ドレインも何故か今日はモンスターへの効きが悪かったのですが、原因はなにか分かりますか?」
シエナの元へ戻るなり、彼女が質問攻めをしてくる。
……すぐに結果を聞いて、改善をしようとするその姿勢は非常に良いことだ。
「ちゃんと支援魔術もドレインも使えていたぞ。だから、魔術に関しては何も言うことはない。ただ、今後の課題としては、杖の先をちゃんと目標に向けることだな。狙いがブレて、俊敏さ低下とドレインの効果が全て俺に向いてたから。まあ、気にしないでーー」
「――申し訳ありません! 支援魔術を使った時にエリック様の様子がいつもと違ったので、良かれと思ってドレインもしたのですが、そんなことになっていたなんて……私……エリック様の支えになるどころか足を引っ張ってしまって……」
みるみるうちにシエナの表情が暗いものになっていく。
まあ、敵が敵だったらまじで危なかったんだけど……ぶひ豚だったしな。それに、失敗することは想定済みだったのだ。これくらいなんともない。
俺はシエナの肩に手を置いて励ましの言葉をかける。
「気にするな。シエナはまだ駆け出しの冒険者なんだから、失敗するのは当たり前だ。そこまで落ち込んで自分を責めることなんてしなくていい。それに、俺も少し位置取りが悪かったしな。シエナから見たら、俺とぶひ豚はほぼ一直線上だっただろうし。だから、その……次だ次! 場数を踏んで練習だ! なにも臆せず魔術をぶっ放せ。同じ失敗をしてもいい。シエナが出来るようになるまで付き合ってやる!」
どうだろうか……? と思ってシエナの方を見てみると……『ありがとうございます!イエッサー!』と笑顔で俺の顔を見ながら言ってきた。
よし! じゃあ次だ!
狙いの付け方についてレクチャーをしながら他のぶひ豚を探していると……土を掘っているぶひ豚を見つけた。
先ほどと同じように木陰に隠れてユニークスキルを使い……異常回復ポーションを飲んでもらって……俺は一気にモンスターへと近づいていく。シエナも支援魔術を唱えて……戦闘が始まった。
息絶えたぶひ豚の皮を剥いで、シエナのところに戻る。
「どうだったでしょうか……?」
シエナが恐る恐ると聞いてきた。
「ちゃんと出来ていたぞ。今回は狙いが付けやすいようにシエナには側面から魔術をかけてもらったしな。いい調子だ。次からは少しずつ狙いを付けづらくしていくから、しっかり練習をしてくれ」
「イエッサー!」
そして、五匹を倒し終わったところでシエナが『少し疲れました』と言ってきたので、魔力不足を警戒してこの日の特訓は終了した。
五匹目には、狙いがつけづらい状態であってもきちんと魔術を狙った相手に発動することが出来るようになったので、万々歳の結果と言えよう。
というか、普通はもっと慣れるのに時間がかかるものだし、本当にシエナはすごい才能があると改めて再認識した日であった。
「よし! 今日からは、シエナに魔術をバンバン使ってもらう! 返事はいいか!」
「イエッサー!」
「もう一回!」
「イエッサー!」
よしよし、とシエナの頭を撫でる。すると、彼女は目を細めて気持ちの良さそうな顔をしてくれた。
なにをしているかって? 気合い入れだ。
師匠と弟子という関係を味わってみたいと思って、返事も『イエッサー』にしろと教えた。
理由? なんとなくだ。
「それで、今日シエナに使ってもらう魔術だが……俊敏さを向上させる魔術とその逆の俊敏さを低下させるものにしようと思う」
「分かりました! ……じゃなくてイエッサー! がんばります!」
慌てて律儀に修正するシエナ、可愛い……
「では、お目当てのモンスターを探すぞ!」
「イエッサー!」
森の中を二人でしばらく周りに注意しながら歩いていると……今日の目当てのモンスターを一匹発見した。ぶひ豚である。
見た目は豚のままだが、豚よりも筋肉質で性格も攻撃的なモンスターだ。イノシシみたいなものだろうか。
俺達は木陰に隠れて、ユニークスキルと彼女には異常回復ポーションも忘れずに飲んでもらい……小声で指示を出す。
(じゃあ実際に魔術を使ってもらうが……俺には俊敏さを向上、あのぶひ豚には逆に低下させる魔術を付与してくれ。いつもどおり、杖の先端を目標に向けて今回の場合は『アジリティー』と詠唱した後に頭の中で向上させるのか低下させるのか考えたらその通りになる。分かったか?)
(イエッサー)
(よし。じゃあ、俺が前に出て戦闘を開始するからよろしく頼む)
そう言い残して木陰からタタタ、とぶひ豚に駆け寄っていく。
その足音にモンスターも気が付き……『ぶひぃいいいいい!』を声を上げて……突進をしてきた。
「《アジリティー》!」
後ろからシエナの魔術を唱える声が聞こえてくる。
すると俺の体の動きが速くーーあれ、速くなってるというよりかは遅くなってないか?
「《アジリティー》!」
もう一度、後ろから彼女の声が聞こえてくる。
すると、ぶひ豚の動きが遅くーーん? なんか突進速度が速くなってないか?
俺とぶひ豚は急速に距離を縮めていく。
……やっぱりどう考えても俺の動きが鈍くなってるな。まあ、これくらいならーー
「《ドレイン》!」
シエナが気を利かせたのか体力を奪い取る魔術を発動した。
すると、ぶひ豚が苦しみの声を……
「うぐぁあ!」
俺が苦しみの声を上げる。
……いや、シエナさん。おそらく杖の狙い、エイムがずれて俺に魔術がかかっちゃったんだろうが……くっ……きつい……!
ぶひ豚がこれ好機と更に突進速度を上げて俺に飛びかかってくる。
くそっ……舐めるなよこの豚がっ! これごときで殺られる俺ではないわァ!
「ハッ……ハッ……ハッ……!」
激しく息を切らせて俺は拳を上に振り上げる。
……ようやくドレインから解放……ではなく。ぶひ豚を倒すことが出来たぞ……!
ドレインと俊敏さ低下がネックとなり、討伐難易度『簡単』のモンスターを倒すのに五分かかってしまった。
なんで、ドレインを使われて生きているんだって?
途中何度もポケットに仕込んでいた回復ポーションを飲んで、体力を回復していたからな。あれがなかったら死んでたかも。
息をなんとか整え、皮を一部剥いでからシエナのもとに戻る。
「エリック様、お疲れさまでした! 支援魔術如何だったでしょうか? 上手く出来ているかいまいち分からなくて……あ、あと! ドレインも何故か今日はモンスターへの効きが悪かったのですが、原因はなにか分かりますか?」
シエナの元へ戻るなり、彼女が質問攻めをしてくる。
……すぐに結果を聞いて、改善をしようとするその姿勢は非常に良いことだ。
「ちゃんと支援魔術もドレインも使えていたぞ。だから、魔術に関しては何も言うことはない。ただ、今後の課題としては、杖の先をちゃんと目標に向けることだな。狙いがブレて、俊敏さ低下とドレインの効果が全て俺に向いてたから。まあ、気にしないでーー」
「――申し訳ありません! 支援魔術を使った時にエリック様の様子がいつもと違ったので、良かれと思ってドレインもしたのですが、そんなことになっていたなんて……私……エリック様の支えになるどころか足を引っ張ってしまって……」
みるみるうちにシエナの表情が暗いものになっていく。
まあ、敵が敵だったらまじで危なかったんだけど……ぶひ豚だったしな。それに、失敗することは想定済みだったのだ。これくらいなんともない。
俺はシエナの肩に手を置いて励ましの言葉をかける。
「気にするな。シエナはまだ駆け出しの冒険者なんだから、失敗するのは当たり前だ。そこまで落ち込んで自分を責めることなんてしなくていい。それに、俺も少し位置取りが悪かったしな。シエナから見たら、俺とぶひ豚はほぼ一直線上だっただろうし。だから、その……次だ次! 場数を踏んで練習だ! なにも臆せず魔術をぶっ放せ。同じ失敗をしてもいい。シエナが出来るようになるまで付き合ってやる!」
どうだろうか……? と思ってシエナの方を見てみると……『ありがとうございます!イエッサー!』と笑顔で俺の顔を見ながら言ってきた。
よし! じゃあ次だ!
狙いの付け方についてレクチャーをしながら他のぶひ豚を探していると……土を掘っているぶひ豚を見つけた。
先ほどと同じように木陰に隠れてユニークスキルを使い……異常回復ポーションを飲んでもらって……俺は一気にモンスターへと近づいていく。シエナも支援魔術を唱えて……戦闘が始まった。
息絶えたぶひ豚の皮を剥いで、シエナのところに戻る。
「どうだったでしょうか……?」
シエナが恐る恐ると聞いてきた。
「ちゃんと出来ていたぞ。今回は狙いが付けやすいようにシエナには側面から魔術をかけてもらったしな。いい調子だ。次からは少しずつ狙いを付けづらくしていくから、しっかり練習をしてくれ」
「イエッサー!」
そして、五匹を倒し終わったところでシエナが『少し疲れました』と言ってきたので、魔力不足を警戒してこの日の特訓は終了した。
五匹目には、狙いがつけづらい状態であってもきちんと魔術を狙った相手に発動することが出来るようになったので、万々歳の結果と言えよう。
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