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小さい箱が二つ
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で、ひと仕事終えた俺達は、今日は宿屋の食堂でご飯を食べ、部屋に付いていたお風呂で体をもう一度綺麗にしてから大きなベッドに寝転んでくつろぐ。
……いや、くつろげないな。いつアレを渡そうかと思ってソワソワしちゃうわ。
「エリック様、どうされたのですか? 先程から落ち着かないような雰囲気ですが……」
シエナが俺のソワソワ具合に気がつく。
いや、そんな心配されるようなことじゃないんだが……
「……ドラゴンを中々見つけられなくて焦っているんですの? 確かにその気持ちも分かりますが、焦ってもいいことありませんわよ? それに、他の冒険者がすでに発見しているかもしれませんし」
メリッサが気遣ってきてくれる。
いや……そんな立派なことでソワソワしているんじゃなくてだな……
ええい! もう今渡そう! どのみち今日中には渡す予定だったんだ。それにこの後は寝るだけ。渡すなら今しかない!
俺は起き上がって、正座をし……シエナとメリッサに向かい合う。で、寝間着のポケットの中に入れていた小さな箱を二つ取り出す。
「それは……?」
「なにかの武器ですの?」
彼女たちがじーっと俺が手に持っている箱を見る。
……なんだか分からんがめちゃくちゃ緊張してきた。てか、これをそもそも受け取ってくれるのだろうか? いや、シエナは受け取ってくれるだろうが……メリッサは……今まで中途半端な態度しかしてこなかった俺に辟易して、俺のことを好きではなくなっているかもしれない。彼女の今までの態度を鑑みるならそれはありえない話だとは思うんだが……人の心って難しいからな。
……あー、そう思うと今このタイミングじゃないような気がしてきた。というか、全然ロマンチックな場所じゃないじゃん。ただの宿屋だぞ、ここ。もうちょっと雰囲気のあるところでこういうのって渡すんじゃないのか?
うーん、うーん、と唸っていると……シエナとメリッサが姿勢を急に正してきた。
え? なになに突然どうしたの? 表情もにやけそうな顔を必死で我慢していると言うか、嬉しそうな感じがにじみ出ているが…………いや、俺の気のせいだろう。そうだ、俺の幻覚か何かだ。それよりも、やっぱり今渡すべきじゃないのかなぁ……もう少し期間を置いて、しっかりとした場所でちゃんとした格好で渡すべきなんじゃないのか? そうだ、きっとそうだろう。今ではない。渡すべきなのは今ではない。よしよし、そうと決まれば……
「あー……こいつは……ただの箱だ。別に中に何かが入っているわけじゃない。街の人に『縁起のいい木から作った箱』だと言われて、珍しそうだったから買ったと言うかだな。だから、ちょっとお前たちに自慢したかっと言うか、見せたかったとか、そんな感じだから。うん、じゃあ寝ようか!」
そう言って、自分でも下手なごまかし方だなぁ、と思いつつ二つの小さな立方体の箱を仕舞おうとしたんだが……目に見えない速度でシエナとメリッサがそれぞれ俺の腕を掴んできた。
え……すごい。今のが剣だったら俺、対処できずに殺されているぞ。
二人の腕を掴んできた速度に恐れおののいていると……
「エリック様。ここまで期待させておいてそれはないです。いくら意気地なしと言っても限度があると思います。それには私達の関係に相応しいものが入っているのではないのですか?」
「そうですわ! ほら! 今! ここで! その箱の『中身』をわたくしたちに見せるなり渡すなりしてくださいな!」
ジト目のシエナと興奮気味のメリッサが箱の中身に気がついた様子でそう言ってくる。
……なんで中身が分かったんだ? え? 透視能力か何かあるの?
しかし、バレてしまっては仕方ない。ここで『いや、違うぞ』とか言ったら嫌われそうだったし、彼女たちを悲しませるかもしれないので……もう一度、彼女たちの前に箱を差し出す。
「あー、そのー……今、俺達は緊急クエストを受けている。いくら万全を期しているとはいえ、死んでしまうリスクはあるわけで。いや、勿論お前たちは死にものぐるいで俺が守りはするが……守りきれる保障はないわけだ。だからその……後悔しないようにというか、そういう感じで思い立ってこの街で買ってきたわけだが……」
正直言ってどうでもいいだろうなぁ、ということを思いながらも事の経緯を述べる。
いや、だってさ。これを話さないといきなりこの箱の中身を渡す頭のおかしいやつみたいじゃん。いや、おかしくはないのかもしれないけど、俺はストレートで渡す勇気がない。言い訳に言い訳を重ねないと恥ずかしさと緊張で逃げ出したくなるし。
なおも俺は話しつづける。
「ここは腕のいい武器職人が集まっている街なんだが、アクセサリー類を作ることも出来るらしくてな。結構いい感じに作ってもらいはしたんだが……お前たちに相応しいものかどうかは分からないと言うか……いや、そもそも『え? こんなの渡されても困るんですけど』とか言われたりしそうなんだが……まあなんだ。そうだとしても一応は受け取ってくれたらと思うんだよ。その……拒否られたらクエストどころじゃなくなるっていうか……あー、うん、そんな感じだからさ。……じゃあ、はい。えー、左手の薬指を出していただければと思います」
俺の言葉を聞くなりシュバッ! と彼女たちは左手の薬指を差し出してきた。
……さっきから凄い動きをしているな。まじでS級ランク並だぞ。
驚きながらも俺はパカっ、と箱の蓋を開けて……エンゲージリング、つまりは結婚指輪を取り出す。まずはシエナの分だ。
「メリッサはちょっと待っていてくれ。いや、渡す順番に深い意味はないんだがな? 優劣を決める意図はない。それは理解しておいてくれ」
コクコクとメリッサが首を縦に振る。まあ、理解してくれたと見ていいだろう。
……いや、くつろげないな。いつアレを渡そうかと思ってソワソワしちゃうわ。
「エリック様、どうされたのですか? 先程から落ち着かないような雰囲気ですが……」
シエナが俺のソワソワ具合に気がつく。
いや、そんな心配されるようなことじゃないんだが……
「……ドラゴンを中々見つけられなくて焦っているんですの? 確かにその気持ちも分かりますが、焦ってもいいことありませんわよ? それに、他の冒険者がすでに発見しているかもしれませんし」
メリッサが気遣ってきてくれる。
いや……そんな立派なことでソワソワしているんじゃなくてだな……
ええい! もう今渡そう! どのみち今日中には渡す予定だったんだ。それにこの後は寝るだけ。渡すなら今しかない!
俺は起き上がって、正座をし……シエナとメリッサに向かい合う。で、寝間着のポケットの中に入れていた小さな箱を二つ取り出す。
「それは……?」
「なにかの武器ですの?」
彼女たちがじーっと俺が手に持っている箱を見る。
……なんだか分からんがめちゃくちゃ緊張してきた。てか、これをそもそも受け取ってくれるのだろうか? いや、シエナは受け取ってくれるだろうが……メリッサは……今まで中途半端な態度しかしてこなかった俺に辟易して、俺のことを好きではなくなっているかもしれない。彼女の今までの態度を鑑みるならそれはありえない話だとは思うんだが……人の心って難しいからな。
……あー、そう思うと今このタイミングじゃないような気がしてきた。というか、全然ロマンチックな場所じゃないじゃん。ただの宿屋だぞ、ここ。もうちょっと雰囲気のあるところでこういうのって渡すんじゃないのか?
うーん、うーん、と唸っていると……シエナとメリッサが姿勢を急に正してきた。
え? なになに突然どうしたの? 表情もにやけそうな顔を必死で我慢していると言うか、嬉しそうな感じがにじみ出ているが…………いや、俺の気のせいだろう。そうだ、俺の幻覚か何かだ。それよりも、やっぱり今渡すべきじゃないのかなぁ……もう少し期間を置いて、しっかりとした場所でちゃんとした格好で渡すべきなんじゃないのか? そうだ、きっとそうだろう。今ではない。渡すべきなのは今ではない。よしよし、そうと決まれば……
「あー……こいつは……ただの箱だ。別に中に何かが入っているわけじゃない。街の人に『縁起のいい木から作った箱』だと言われて、珍しそうだったから買ったと言うかだな。だから、ちょっとお前たちに自慢したかっと言うか、見せたかったとか、そんな感じだから。うん、じゃあ寝ようか!」
そう言って、自分でも下手なごまかし方だなぁ、と思いつつ二つの小さな立方体の箱を仕舞おうとしたんだが……目に見えない速度でシエナとメリッサがそれぞれ俺の腕を掴んできた。
え……すごい。今のが剣だったら俺、対処できずに殺されているぞ。
二人の腕を掴んできた速度に恐れおののいていると……
「エリック様。ここまで期待させておいてそれはないです。いくら意気地なしと言っても限度があると思います。それには私達の関係に相応しいものが入っているのではないのですか?」
「そうですわ! ほら! 今! ここで! その箱の『中身』をわたくしたちに見せるなり渡すなりしてくださいな!」
ジト目のシエナと興奮気味のメリッサが箱の中身に気がついた様子でそう言ってくる。
……なんで中身が分かったんだ? え? 透視能力か何かあるの?
しかし、バレてしまっては仕方ない。ここで『いや、違うぞ』とか言ったら嫌われそうだったし、彼女たちを悲しませるかもしれないので……もう一度、彼女たちの前に箱を差し出す。
「あー、そのー……今、俺達は緊急クエストを受けている。いくら万全を期しているとはいえ、死んでしまうリスクはあるわけで。いや、勿論お前たちは死にものぐるいで俺が守りはするが……守りきれる保障はないわけだ。だからその……後悔しないようにというか、そういう感じで思い立ってこの街で買ってきたわけだが……」
正直言ってどうでもいいだろうなぁ、ということを思いながらも事の経緯を述べる。
いや、だってさ。これを話さないといきなりこの箱の中身を渡す頭のおかしいやつみたいじゃん。いや、おかしくはないのかもしれないけど、俺はストレートで渡す勇気がない。言い訳に言い訳を重ねないと恥ずかしさと緊張で逃げ出したくなるし。
なおも俺は話しつづける。
「ここは腕のいい武器職人が集まっている街なんだが、アクセサリー類を作ることも出来るらしくてな。結構いい感じに作ってもらいはしたんだが……お前たちに相応しいものかどうかは分からないと言うか……いや、そもそも『え? こんなの渡されても困るんですけど』とか言われたりしそうなんだが……まあなんだ。そうだとしても一応は受け取ってくれたらと思うんだよ。その……拒否られたらクエストどころじゃなくなるっていうか……あー、うん、そんな感じだからさ。……じゃあ、はい。えー、左手の薬指を出していただければと思います」
俺の言葉を聞くなりシュバッ! と彼女たちは左手の薬指を差し出してきた。
……さっきから凄い動きをしているな。まじでS級ランク並だぞ。
驚きながらも俺はパカっ、と箱の蓋を開けて……エンゲージリング、つまりは結婚指輪を取り出す。まずはシエナの分だ。
「メリッサはちょっと待っていてくれ。いや、渡す順番に深い意味はないんだがな? 優劣を決める意図はない。それは理解しておいてくれ」
コクコクとメリッサが首を縦に振る。まあ、理解してくれたと見ていいだろう。
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