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【3.5】益者三友~どちゃくそ煩いOB達
だって僕らの寮だもの
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「ただいまーっス」
寮の玄関はあいていたので、すでに誰か居るのだろう。
「おっかえりなんしー!いっくん!」
福原がばたばたと出てきた。青木も一緒だ。
「おかえり、いっくん」
「ただいまです」
「来原は一緒じゃないの?」
「みんな片づけするから、先に帰っていいって。デカい方の風呂わかしといて欲しいそうです」
「りょーかい。じゃ、掃除するか」
「そーだな」
福原と青木は二人でそう言って、風呂掃除に向かおうとした。青木が足を止め、振り返ると長い髪がふわりと揺れた。
髪をすくいながら、かがみこみ、青木は幾久に尋ねた。
「いっくん、なにかあった?」
「え?」
「眉間にしわが寄ってるけど」
青木に眉間を指で押され、幾久はああ、と気づく。
むっとしたまま幾久は答える。
「さっき、なんか門の前に変な女の人がいたんすよ」
「変な女の人?」
青木が首を傾げると、福原がふざけて言った。
「レスラーのマスクでもかぶってたん?」
「そんなんじゃなくて、なんかグラスエッジが来てるのかって」
幾久の言葉に福原と青木の動きが止まる。
2人は顔を見合わせた後、幾久に尋ねた。
「いっくん、何て答えたの?」
幾久は思い出すとむかむかしてきて、むっとしたまま答えた。
「いるのは先生とレスラーとお笑い芸人だけって言ったら帰りました」
「レスラーはともかくお笑い芸人って俺のこと?」
「ですよね?」
「もー!」
すると青木がぶはっと吹き出し、腹をかかえて笑い出した。
「あははははっ!いっくん、それ大正解!」
「青木君、後輩に嘘教えるのやめてよ!」
「嘘じゃねーじゃん、ファレル・ウィリアムスはアメリカの大道芸出身のコメディアンだろ?」
「息するように嘘つくなよ!世界的に有名なミュージシャンじゃねえかよ!青木君だって好きじゃん!」
2人はいつものようにはしゃいでいるが、幾久の気持ちはなぜか晴れない。
笑い声と大きな声では、掻き消せない何かが胸の中にあった。
「……いっくん、何落ち込んでんだ?」
青木が幾久の頭に手を置いて尋ねた。
幾久は「わかんないっすけど」と首を横に振る。
「言いたくないのなら聞かないけど、よく判らなくてもしゃべっていいよ。こっち大人なんだし」
青木の言葉に幾久は驚いて顔を上げた。
福原もうなづく。
「そーそー。なんか嫌なことあんなら、吐き出しちゃえって。聞くから」
幾久はまとまらないまま、ぽつり、言葉を紡いだ。
「グラスエッジってバンド、いるじゃないっすか」
幾久の言葉に青木も福原も同時に「いるねえ」「聞いたことあるねえ」とうなづく。
「そのグラスエッジってこの寮出身なんすって。オレそういうの詳しくねーのに、なにか知らないのかとか、先輩に聞いてないのかとかしつこいし、知らないっつったらあからさまにがっかりしてて、そのくせお礼もなしで、なーんか気分悪いっていうか。お礼言って欲しいわけじゃ全然ないんすけど」
「うんうん」
「寮も、あんまこの辺って人通りないじゃないっすか」
大きな道路をひとつ内側に入るこの寮の入り口は、この先の道が車で通りぬけできないこともあり、住んでいる人しか通らない生活道路だ。
「なんか、寮の前に知らない人が居て、見張ってるみたいなのってすっげえ気分悪くって」
そんなのは幾久のわがままだし、なぜ気分が悪いのかも判らない。
ただ、無性に嫌だと思ったのだ。
が、福原は大きく頷いた。
「わかるわかるぅ!なんか寮って俺らのもんって気ィするから、部外者来るの嫌なんだよなー」
「え?」
幾久は福原の言葉に驚いた。
(寮って、オレらのもん?)
「つか、いまは僕らのほうが部外者なんだけどね」
青木の言葉に幾久は驚く。
「や、先輩達には全然、そんなのないっす!」
慌てて首を横に振ると、青木がにこにこと「いっくんかわいいねえ!」と頭を撫でてくる。
でも、本当にどうしてあんなにもむっとしてしまったのだろう。
「なんで先輩らにはむかつかないのに、あの人たちにはむかついたんだろ?」
幾久は自分の言葉に自分で首を傾げた。
青木は楽しそうに幾久の様子をうかがい、尋ねた。
「なんでか考えてみたら?思いつくままでいいから言ってみなよ」
青木の言葉に幾久は考えて、思いつくままに言葉を出した。
「そもそも、本当にオレがその、グラスエッジの事知ってたとしても、そんなん部外者に言うはずもねーのになんで聞くのか、とは思うっす」
寮のことを、知らない人にべらべらしゃべると思われたわけではないだろうけれど、軽く尋ねてくるのが気に入らなかった。
「寮の事、いう訳ないのに」
まだたったひと月でも、幾久にとってはすでに(一応は)我が家なわけだ。
学校内でも寮の詳しい事はしゃべらない雰囲気があるし、部外者に事情をしゃべるわけがないのに。
「やっぱ、なんか、寮に近づかれるのってむかつく。深い意味はないんすけども」
幾久が嫌そうな顔で言うと、青木が笑って幾久に告げた。
「それって、いっくん、かなり御門寮の事、好きだからじゃない?」
「え?」
まだ入って一か月くらいなのに?と思ったが青木はそう決めてしまったようだ。
「一年はたったひとりしかいないって聞いてたからさ、逃げられたらどーすんだとか思ってたけど、かなりの御門愛じゃん!」
「いや、別にそこまでは」
「照れんなよいっくん!」
青木と福原はこういう時は盛り上がって結束を魅せる。
でも、しゃべると気分が少し良くなった。
自分で眉間に手をやると、しわが消えているのが判った。
別になにが解決したわけでもないのに、文句を言うだけでもちょっとは違うのかな、先輩って、どんな年上でもかわらないのかな、いまは出かけている二年の先輩たちとちょっと似ている気がする、と幾久は思ったのだった。
幾久の表情が柔らかくなったのを確認すると、青木は言った。
「さ、それより掃除だ掃除。掃除しろや福原ウンコ」
「俺がウンコなら風呂掃除なんかさせんなよもー」
言いながら二人は風呂場に向かっていく。幾久もなんとなく後をついていく。
(ひょっとして、慰めてくれたんだよなあ)
判りづらいけど。
話は解決していないのに、幾久の中では妙なもやもやはもう消えてしまっていた。
三人で大きい風呂を掃除しながら、おしゃべりは続いた。
福原が尋ねた。
「いっくんは音楽とかって聞かないの?」
「あんまり。入学するまではこれまでは勉強で忙しかったし」
昔、一緒のユースに居た幼馴染はそういうのも詳しかったが、中学の二年を過ぎたくらいから連絡もとらなくなって、今はどうしているのかも知らない。
そういえば、音楽もアニメもゲームも、幼馴染の影響が大きかったな、と今更ながらに思い出す。
「まあ、動画サイトで流れてきたのをちょっと聞くかなっていうくらいで」
「そーいう時代だよねえ」
青木もはは、と笑っている。
「先輩たちは音楽関係でしたっけ」
「そーよぉ。だから明日も、お仕事お仕事」
福原が床をたわしでこすりながら言う。
「お休みなのに大変っすね」
「ま、僕らはこういう時に出る仕事だからねえ。それにいっくんだって明日はお仕事でしょ。バイト頑張って貰うよ」
「頑張るっす!」
バイトとなればお金が貰えるので俄然張り切れる。
「フェスとかも行ったことないし、ちょっと楽しみっす」
「フェスはめちゃくちゃ楽しいよ!」
福原の言葉に青木も頷く。
「そうそう!絶対に楽しいから」
「でもオレ、たぶん殆どの曲わかんないっすし」
「それでいいんだよ」
青木の言葉に幾久は驚く。
「だって、普通は知ってるファンとかの人が行くもんじゃないんすか?」
コンサートとか、ライブとか、フェスとか。
幾久が言うと福原が答えた。
「まあ、そういう人が多いかもだけど、知らなくても音楽たのしみたいっていう理由で来る人は多いよ。いっくんも明日、行ってみてさ、一曲でもいい出会いがあったらそれでいいんじゃね?」
「そうそう。そういうもんでいいんだよ」
「なんか軽い」
いいのかなあ、と幾久は言うが、青木は「いいんだよ」と答える。
「出会いなんか、重いも軽いもないよ。後でそれが長く続けば重いものになるし、一瞬で終わったら軽くなるんだよ。結果論だよ、所詮」
福原も頷く。
「そーそー。曲とか人もそうだもんね。人生を変える曲とか人になるかどうかは、関わってみないとわかんないし」
「わかってんじゃん福原ウンコ」
「ちょっとさらっと名前にウンコ混ぜないでよ青木君。本名にしちゃうよ?」
「似合ってんぞ」
「わーい嬉しいな?」
「先輩達、そっちから水流してください」
幾久が言うと、青木が「いっくんってほんとクール」といい、「そういうとこあるよねえ」と福原がため息をついた。
寮の玄関はあいていたので、すでに誰か居るのだろう。
「おっかえりなんしー!いっくん!」
福原がばたばたと出てきた。青木も一緒だ。
「おかえり、いっくん」
「ただいまです」
「来原は一緒じゃないの?」
「みんな片づけするから、先に帰っていいって。デカい方の風呂わかしといて欲しいそうです」
「りょーかい。じゃ、掃除するか」
「そーだな」
福原と青木は二人でそう言って、風呂掃除に向かおうとした。青木が足を止め、振り返ると長い髪がふわりと揺れた。
髪をすくいながら、かがみこみ、青木は幾久に尋ねた。
「いっくん、なにかあった?」
「え?」
「眉間にしわが寄ってるけど」
青木に眉間を指で押され、幾久はああ、と気づく。
むっとしたまま幾久は答える。
「さっき、なんか門の前に変な女の人がいたんすよ」
「変な女の人?」
青木が首を傾げると、福原がふざけて言った。
「レスラーのマスクでもかぶってたん?」
「そんなんじゃなくて、なんかグラスエッジが来てるのかって」
幾久の言葉に福原と青木の動きが止まる。
2人は顔を見合わせた後、幾久に尋ねた。
「いっくん、何て答えたの?」
幾久は思い出すとむかむかしてきて、むっとしたまま答えた。
「いるのは先生とレスラーとお笑い芸人だけって言ったら帰りました」
「レスラーはともかくお笑い芸人って俺のこと?」
「ですよね?」
「もー!」
すると青木がぶはっと吹き出し、腹をかかえて笑い出した。
「あははははっ!いっくん、それ大正解!」
「青木君、後輩に嘘教えるのやめてよ!」
「嘘じゃねーじゃん、ファレル・ウィリアムスはアメリカの大道芸出身のコメディアンだろ?」
「息するように嘘つくなよ!世界的に有名なミュージシャンじゃねえかよ!青木君だって好きじゃん!」
2人はいつものようにはしゃいでいるが、幾久の気持ちはなぜか晴れない。
笑い声と大きな声では、掻き消せない何かが胸の中にあった。
「……いっくん、何落ち込んでんだ?」
青木が幾久の頭に手を置いて尋ねた。
幾久は「わかんないっすけど」と首を横に振る。
「言いたくないのなら聞かないけど、よく判らなくてもしゃべっていいよ。こっち大人なんだし」
青木の言葉に幾久は驚いて顔を上げた。
福原もうなづく。
「そーそー。なんか嫌なことあんなら、吐き出しちゃえって。聞くから」
幾久はまとまらないまま、ぽつり、言葉を紡いだ。
「グラスエッジってバンド、いるじゃないっすか」
幾久の言葉に青木も福原も同時に「いるねえ」「聞いたことあるねえ」とうなづく。
「そのグラスエッジってこの寮出身なんすって。オレそういうの詳しくねーのに、なにか知らないのかとか、先輩に聞いてないのかとかしつこいし、知らないっつったらあからさまにがっかりしてて、そのくせお礼もなしで、なーんか気分悪いっていうか。お礼言って欲しいわけじゃ全然ないんすけど」
「うんうん」
「寮も、あんまこの辺って人通りないじゃないっすか」
大きな道路をひとつ内側に入るこの寮の入り口は、この先の道が車で通りぬけできないこともあり、住んでいる人しか通らない生活道路だ。
「なんか、寮の前に知らない人が居て、見張ってるみたいなのってすっげえ気分悪くって」
そんなのは幾久のわがままだし、なぜ気分が悪いのかも判らない。
ただ、無性に嫌だと思ったのだ。
が、福原は大きく頷いた。
「わかるわかるぅ!なんか寮って俺らのもんって気ィするから、部外者来るの嫌なんだよなー」
「え?」
幾久は福原の言葉に驚いた。
(寮って、オレらのもん?)
「つか、いまは僕らのほうが部外者なんだけどね」
青木の言葉に幾久は驚く。
「や、先輩達には全然、そんなのないっす!」
慌てて首を横に振ると、青木がにこにこと「いっくんかわいいねえ!」と頭を撫でてくる。
でも、本当にどうしてあんなにもむっとしてしまったのだろう。
「なんで先輩らにはむかつかないのに、あの人たちにはむかついたんだろ?」
幾久は自分の言葉に自分で首を傾げた。
青木は楽しそうに幾久の様子をうかがい、尋ねた。
「なんでか考えてみたら?思いつくままでいいから言ってみなよ」
青木の言葉に幾久は考えて、思いつくままに言葉を出した。
「そもそも、本当にオレがその、グラスエッジの事知ってたとしても、そんなん部外者に言うはずもねーのになんで聞くのか、とは思うっす」
寮のことを、知らない人にべらべらしゃべると思われたわけではないだろうけれど、軽く尋ねてくるのが気に入らなかった。
「寮の事、いう訳ないのに」
まだたったひと月でも、幾久にとってはすでに(一応は)我が家なわけだ。
学校内でも寮の詳しい事はしゃべらない雰囲気があるし、部外者に事情をしゃべるわけがないのに。
「やっぱ、なんか、寮に近づかれるのってむかつく。深い意味はないんすけども」
幾久が嫌そうな顔で言うと、青木が笑って幾久に告げた。
「それって、いっくん、かなり御門寮の事、好きだからじゃない?」
「え?」
まだ入って一か月くらいなのに?と思ったが青木はそう決めてしまったようだ。
「一年はたったひとりしかいないって聞いてたからさ、逃げられたらどーすんだとか思ってたけど、かなりの御門愛じゃん!」
「いや、別にそこまでは」
「照れんなよいっくん!」
青木と福原はこういう時は盛り上がって結束を魅せる。
でも、しゃべると気分が少し良くなった。
自分で眉間に手をやると、しわが消えているのが判った。
別になにが解決したわけでもないのに、文句を言うだけでもちょっとは違うのかな、先輩って、どんな年上でもかわらないのかな、いまは出かけている二年の先輩たちとちょっと似ている気がする、と幾久は思ったのだった。
幾久の表情が柔らかくなったのを確認すると、青木は言った。
「さ、それより掃除だ掃除。掃除しろや福原ウンコ」
「俺がウンコなら風呂掃除なんかさせんなよもー」
言いながら二人は風呂場に向かっていく。幾久もなんとなく後をついていく。
(ひょっとして、慰めてくれたんだよなあ)
判りづらいけど。
話は解決していないのに、幾久の中では妙なもやもやはもう消えてしまっていた。
三人で大きい風呂を掃除しながら、おしゃべりは続いた。
福原が尋ねた。
「いっくんは音楽とかって聞かないの?」
「あんまり。入学するまではこれまでは勉強で忙しかったし」
昔、一緒のユースに居た幼馴染はそういうのも詳しかったが、中学の二年を過ぎたくらいから連絡もとらなくなって、今はどうしているのかも知らない。
そういえば、音楽もアニメもゲームも、幼馴染の影響が大きかったな、と今更ながらに思い出す。
「まあ、動画サイトで流れてきたのをちょっと聞くかなっていうくらいで」
「そーいう時代だよねえ」
青木もはは、と笑っている。
「先輩たちは音楽関係でしたっけ」
「そーよぉ。だから明日も、お仕事お仕事」
福原が床をたわしでこすりながら言う。
「お休みなのに大変っすね」
「ま、僕らはこういう時に出る仕事だからねえ。それにいっくんだって明日はお仕事でしょ。バイト頑張って貰うよ」
「頑張るっす!」
バイトとなればお金が貰えるので俄然張り切れる。
「フェスとかも行ったことないし、ちょっと楽しみっす」
「フェスはめちゃくちゃ楽しいよ!」
福原の言葉に青木も頷く。
「そうそう!絶対に楽しいから」
「でもオレ、たぶん殆どの曲わかんないっすし」
「それでいいんだよ」
青木の言葉に幾久は驚く。
「だって、普通は知ってるファンとかの人が行くもんじゃないんすか?」
コンサートとか、ライブとか、フェスとか。
幾久が言うと福原が答えた。
「まあ、そういう人が多いかもだけど、知らなくても音楽たのしみたいっていう理由で来る人は多いよ。いっくんも明日、行ってみてさ、一曲でもいい出会いがあったらそれでいいんじゃね?」
「そうそう。そういうもんでいいんだよ」
「なんか軽い」
いいのかなあ、と幾久は言うが、青木は「いいんだよ」と答える。
「出会いなんか、重いも軽いもないよ。後でそれが長く続けば重いものになるし、一瞬で終わったら軽くなるんだよ。結果論だよ、所詮」
福原も頷く。
「そーそー。曲とか人もそうだもんね。人生を変える曲とか人になるかどうかは、関わってみないとわかんないし」
「わかってんじゃん福原ウンコ」
「ちょっとさらっと名前にウンコ混ぜないでよ青木君。本名にしちゃうよ?」
「似合ってんぞ」
「わーい嬉しいな?」
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