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【4】夜の踊り子
幽霊があらわれた!!!
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いつも通り寮に帰ると、最近そうしているようにお決まりのスケジュールで幾久と二年生の三人は一緒に勉強をした。
しかし、なにか足りない気がしていたら全く山縣の姿を見なかったという事に気づいた。
「そういや、ガタ先輩は勉強しなくていいんすか?」
「まあ、してるんじゃないのかな」
吉田が言うので幾久は信じられず顔を上げると、久坂は頷く。高杉は無視している。
「でもずっとゲームしてるっぽいですけど」
元から早起きではなかったが、最近特に起きてこないので、絶対に夜中までゲームに夢中なのだろうと思ったのだが。
「つうか、ガタはむしろ今が今までどおりだよ。最近は早起きだったほうで」
「えぇー?」
「一応、いっくん来てるから気を使ってたんだよあれでも」
「微妙な気遣いっすね」
最近は幾久が寮を出る時間になっても起きてこないが、ちょっと前までは食事の最中くらいには起きてきていた。
そんなことをされても幾久には特に関わりもないので、意味わからない、と幾久が言うと吉田がまあね、と笑う。
「ま、あいつなりにいっくんと合わせようとしたんじゃないの。無駄だけど」
相変わらず山縣はよく判らない人だなと幾久はそう思って、そのままいつも通りに勉強をした。
「いっくん、今日もサッカー?」
もう寝支度に入ろうとしている久坂と高杉に、幾久は「はい」と答えた。
「早く寝たほうがいいのは判るんすけど、どうしてもこれだけは見たくって」
見ちゃいけない、と暗に言われているような気がしてそう言うと、久坂は笑う。
「別に子供じゃないんだから、テレビ見ないで寝ろなんて言わないよ」
いっくん頑張ってるしね、と久坂が言うと高杉も頷く。
「このままのペースできちんといければ、まあ鷹は固いじゃろうし」
「そっかー」
なんにせよ、成績のいい先輩達がお墨付きをくれるのは嬉しいし安心する。
「だったら遠慮なく、テレビ見るっス」
「はは、じゃあ僕らは先に休むね」
「おやすみ、幾久」
「おやすみなさいっす、久坂先輩とハル先輩」
あぐらをかいたまま、ぺこっと頭を下げる。
そうして再び幾久はサッカーの放送を待っていた。
放送が始まれば当然夢中になってサッカーを見てしまったが、ふと、ハーフタイムに以前の事を思い出した。
(そういや、前もこの時間に変な光が見えたんだよな)
わざわざ雪充にまで尋ねたのにうっかり忘れていた。
雪充の言葉に幾久は、絶対にあの光にはなにかあると思っていたのだ。
『それにそんな夜遅くまでおきてちゃ駄目だよ。勉強もやりすぎたら効果ないからね』
雪充の言葉を思い出して、幾久は(やっぱりおかしいよな)と思っていた。
なぜなら、幾久は何時まで起きていたのかを雪充に言っていなかったからだ。
光が見えた、とは伝えたが、勉強していたとか深夜放送の海外サッカーのハーフタイムとか、そういったことは一切伝えていない。それなのに、雪充が勝手に早く寝たほうがいいくらいの真夜中と判ったのは何故なのか。
(そんなの、知ってるからに決まってる)
雪充の表情で、幾久はそう信じていた。
幾久に理由を言ってくれないのは正直ショックではあるが、幾久が鳩クラスで、現在上のクラスを目指すために勉強をしていることは弥太郎から伝え聞いているはずだ。
だから実はたいしたことがないことかもしれないし、どうでもいいことなのかもしれない。
しかし、勉強の為としても、幾久の事を考えてくれたのだとしても、なにか隠されるのは子ども扱いされているみたいで嫌だ。
幾久はハーフタイムに突入すると同時に、トイレに向かう。
当然、尿意などなかったけれど。
以前と同じようにしようと思い、尿意はなくてもトイレを済ませ、手を洗い居間へ戻ろうと廊下を歩く。
ゆっくりと歩いてみたが、やはり何も明かりは見えない。
(やっぱ気のせいだったとか?いや、でも絶対に見たし)
幾久は居間まで戻ろうと廊下を歩くが、ぱちんと廊下の明かりを消す。まるで廊下を通り終わり、居間に戻ったかのように。
すると、暫くしてオレンジの光がゆらりと見えた。
(―――――!)
あれだ!
以前と全く同じ、オレンジの棒状の光が一瞬ゆらぎ、ふわんと消えた。
(間違いない!やっぱなんか光がある!)
以前は驚きのあまり、吉田の言うとおり外の明かりかとも思ったがあれは全くそんなものじゃない。
「……」
幾久は暫く考えると、暗い廊下を忍び足でそっと歩く。そうして再びトイレへ戻り、ふと思い立って山縣の部屋へ向かう。
ひょっとしたら山縣がまたなにか変な事をしているのかと思ったからだ。
しかし、しのび足で山縣の部屋の前を通ると、ドアの小さな窓から明かりが漏れていた。
多分いつものごとく、インターネット経由で誰かと喋っているのだろう。
(ってことはガタ先輩でもないってことか)
吉田はさっきまで台所の片づけをして今風呂に入っている最中だし、高杉と久坂はもう寝ている。
(じゃあ、まさか本当に幽霊、とか?)
しかし雪充や他の先輩の態度からそうは思えない。
一瞬、山縣に尋ねてみようかとも思ったが、絶対に『幽霊とかWWWWバカスWWW』ってネットスラングでバカにされるに決まっている。
(あーもう、一人で行ってやるよ!)
どうせ寮の敷地内だし、なんかあったらすぐに先輩達がかけつけてくれるし、敷地内には寮母の麗子さんだって居る。
絶対に大丈夫のはず、と幾久はそっとトイレとは反対側の廊下の窓をあけ、庭履きのクロックスをはくと静かに庭へ出たのだった。
御門寮の庭は呆れるほど広い。
小さい山がほとんどひとつ入っているというのだからそれも当然だ。庭を全部回るだけでいい散歩になってしまうくらいに広い。
寮から離れた小高い丘、当然それも寮の敷地内にあるのだがその奥に滝があり、その滝から御門寮の池に向かってS字の連なったような川が流れている。
その川のほとりに小さな茶室がひとつあるのだが、光は間違いなくそのあたりから見えた。
御門寮の敷地内は広いが、昔のお偉いさんの家だっただけあって、侵入するのは難しい。
入ろうにもあの大きな門を超えなければならないが、そう簡単に入れるわけじゃない。
壁だって、その手前には溝があるし高さもある。それこそ忍者でもなければ絶対に無理だ。
それなのに不法侵入するやつがいるのか、それとも先輩達が隠しているなにかがあるのか。
隠しているのならそれを暴いて鼻をあかしてやる、なんて軽い気持ちで幾久は明かりの元に、静かに静かに近づいていく。
敷地内は広いのと、そんな泥棒なんか入る余地もないようであっても所々街灯がついているので、全く見えないほどでもない。
もうすぐ茶室に到着する、というあたりで幾久はがさりという音を聞いた。ぴた、と幾久は体を止める。
(……いま、なんか音が)
自分の呼吸音さえ聞こえそうなくらいに、真夜中の御門寮は静かだ。
足を止めた今、静かにあるく足音すら聞こえない。自分の呼吸音と、なにかの気配。
(……なんか、いる)
霊感なんか全くない幾久でも、気配くらいは流石に感じる。いま、なにかが絶対に幾久の目の前の暗い闇の中にいる。
「―――――だれだよ?」
わざと強気でそう尋ねると、がさりとなにか、人の形をしたものが出てきた。
「―――――!!!!!!」
あまりの事に息を呑んだ。それは全く人の形ではあったけれど、顔に顔がなかった、つまりのっぺらぼうのようにつるんとしていたのだ。
そしてそのつるんとしたのっぺらぼうは突然、声を出した。
「ウォオオオ」
そして幾久のほうへ向かってきた。
「うわ―――――ッ!!!!!!!」
あまりの事に驚いてしまい、幾久は叫んだが驚いたあまりに足を踏み外し、池にばっしゃーんと落ちてしまった。だが、それどころじゃない。
池から慌てて出ると、寮へ向かい廊下のガラス戸をあけて入ろうとしたが、幾久が出てきた場所と違うのでそこは鍵がかかっていて開かない。
ガタガタとガラス戸を強引に開けようと必死で何度も戸を開けようとするが当然そこは開かず、のっぺらぼうは追っかけてくる。
「せんぱいっ!せんぱいたちっ!」
必死でがたがたやっていると、音と声に何事かと高杉が目を覚ましたのかまだ寝ていなかったのか、部屋から出てきて驚いてガラス戸をあけた。
「どうしたんじゃ、一体!」
なにがあった、と幾久に尋ねるが、幾久はあまりのことに、のっぺらぼうを指差すことしかできない。
池に落ちてずぶぬれの上に、高杉を見て安心したせいで腰が抜けてしまった。
騒ぎに久坂も出てきてなぜか山縣まで出てきた。
そして心底あきれた声で高杉が言った。
「お前か……幾久になにしちょるんか」
え?知り合い?と驚き幾久がのっぺらぼうを見ると、廊下の明かりの中、のっぺらぼうは頭の部分からジッパーを下げた。
下げられたジッパーからは普通に人間の顔が出てきて、しかも幾久とそう変わらない年齢に見える高校生くらいの男だった。そして親指を立てるとやたらにこやかな笑顔でこう言った。
「オッス!おら時山!トッキーって呼んでくれよな!」
「と……とき……?」
まだ事態がよくつかめず、高杉にしがみついている幾久に久坂はため息をついて、山縣はまるで大切なフィギュアをへし折られたように、真っ青な顔をしていた。
「ねね、いまなんかすごい音と声がしたけど、一体……」
風呂上りの吉田が廊下へ来て、そこで状況を見ると「あちゃあ」という顔をしていた。
しかし、なにか足りない気がしていたら全く山縣の姿を見なかったという事に気づいた。
「そういや、ガタ先輩は勉強しなくていいんすか?」
「まあ、してるんじゃないのかな」
吉田が言うので幾久は信じられず顔を上げると、久坂は頷く。高杉は無視している。
「でもずっとゲームしてるっぽいですけど」
元から早起きではなかったが、最近特に起きてこないので、絶対に夜中までゲームに夢中なのだろうと思ったのだが。
「つうか、ガタはむしろ今が今までどおりだよ。最近は早起きだったほうで」
「えぇー?」
「一応、いっくん来てるから気を使ってたんだよあれでも」
「微妙な気遣いっすね」
最近は幾久が寮を出る時間になっても起きてこないが、ちょっと前までは食事の最中くらいには起きてきていた。
そんなことをされても幾久には特に関わりもないので、意味わからない、と幾久が言うと吉田がまあね、と笑う。
「ま、あいつなりにいっくんと合わせようとしたんじゃないの。無駄だけど」
相変わらず山縣はよく判らない人だなと幾久はそう思って、そのままいつも通りに勉強をした。
「いっくん、今日もサッカー?」
もう寝支度に入ろうとしている久坂と高杉に、幾久は「はい」と答えた。
「早く寝たほうがいいのは判るんすけど、どうしてもこれだけは見たくって」
見ちゃいけない、と暗に言われているような気がしてそう言うと、久坂は笑う。
「別に子供じゃないんだから、テレビ見ないで寝ろなんて言わないよ」
いっくん頑張ってるしね、と久坂が言うと高杉も頷く。
「このままのペースできちんといければ、まあ鷹は固いじゃろうし」
「そっかー」
なんにせよ、成績のいい先輩達がお墨付きをくれるのは嬉しいし安心する。
「だったら遠慮なく、テレビ見るっス」
「はは、じゃあ僕らは先に休むね」
「おやすみ、幾久」
「おやすみなさいっす、久坂先輩とハル先輩」
あぐらをかいたまま、ぺこっと頭を下げる。
そうして再び幾久はサッカーの放送を待っていた。
放送が始まれば当然夢中になってサッカーを見てしまったが、ふと、ハーフタイムに以前の事を思い出した。
(そういや、前もこの時間に変な光が見えたんだよな)
わざわざ雪充にまで尋ねたのにうっかり忘れていた。
雪充の言葉に幾久は、絶対にあの光にはなにかあると思っていたのだ。
『それにそんな夜遅くまでおきてちゃ駄目だよ。勉強もやりすぎたら効果ないからね』
雪充の言葉を思い出して、幾久は(やっぱりおかしいよな)と思っていた。
なぜなら、幾久は何時まで起きていたのかを雪充に言っていなかったからだ。
光が見えた、とは伝えたが、勉強していたとか深夜放送の海外サッカーのハーフタイムとか、そういったことは一切伝えていない。それなのに、雪充が勝手に早く寝たほうがいいくらいの真夜中と判ったのは何故なのか。
(そんなの、知ってるからに決まってる)
雪充の表情で、幾久はそう信じていた。
幾久に理由を言ってくれないのは正直ショックではあるが、幾久が鳩クラスで、現在上のクラスを目指すために勉強をしていることは弥太郎から伝え聞いているはずだ。
だから実はたいしたことがないことかもしれないし、どうでもいいことなのかもしれない。
しかし、勉強の為としても、幾久の事を考えてくれたのだとしても、なにか隠されるのは子ども扱いされているみたいで嫌だ。
幾久はハーフタイムに突入すると同時に、トイレに向かう。
当然、尿意などなかったけれど。
以前と同じようにしようと思い、尿意はなくてもトイレを済ませ、手を洗い居間へ戻ろうと廊下を歩く。
ゆっくりと歩いてみたが、やはり何も明かりは見えない。
(やっぱ気のせいだったとか?いや、でも絶対に見たし)
幾久は居間まで戻ろうと廊下を歩くが、ぱちんと廊下の明かりを消す。まるで廊下を通り終わり、居間に戻ったかのように。
すると、暫くしてオレンジの光がゆらりと見えた。
(―――――!)
あれだ!
以前と全く同じ、オレンジの棒状の光が一瞬ゆらぎ、ふわんと消えた。
(間違いない!やっぱなんか光がある!)
以前は驚きのあまり、吉田の言うとおり外の明かりかとも思ったがあれは全くそんなものじゃない。
「……」
幾久は暫く考えると、暗い廊下を忍び足でそっと歩く。そうして再びトイレへ戻り、ふと思い立って山縣の部屋へ向かう。
ひょっとしたら山縣がまたなにか変な事をしているのかと思ったからだ。
しかし、しのび足で山縣の部屋の前を通ると、ドアの小さな窓から明かりが漏れていた。
多分いつものごとく、インターネット経由で誰かと喋っているのだろう。
(ってことはガタ先輩でもないってことか)
吉田はさっきまで台所の片づけをして今風呂に入っている最中だし、高杉と久坂はもう寝ている。
(じゃあ、まさか本当に幽霊、とか?)
しかし雪充や他の先輩の態度からそうは思えない。
一瞬、山縣に尋ねてみようかとも思ったが、絶対に『幽霊とかWWWWバカスWWW』ってネットスラングでバカにされるに決まっている。
(あーもう、一人で行ってやるよ!)
どうせ寮の敷地内だし、なんかあったらすぐに先輩達がかけつけてくれるし、敷地内には寮母の麗子さんだって居る。
絶対に大丈夫のはず、と幾久はそっとトイレとは反対側の廊下の窓をあけ、庭履きのクロックスをはくと静かに庭へ出たのだった。
御門寮の庭は呆れるほど広い。
小さい山がほとんどひとつ入っているというのだからそれも当然だ。庭を全部回るだけでいい散歩になってしまうくらいに広い。
寮から離れた小高い丘、当然それも寮の敷地内にあるのだがその奥に滝があり、その滝から御門寮の池に向かってS字の連なったような川が流れている。
その川のほとりに小さな茶室がひとつあるのだが、光は間違いなくそのあたりから見えた。
御門寮の敷地内は広いが、昔のお偉いさんの家だっただけあって、侵入するのは難しい。
入ろうにもあの大きな門を超えなければならないが、そう簡単に入れるわけじゃない。
壁だって、その手前には溝があるし高さもある。それこそ忍者でもなければ絶対に無理だ。
それなのに不法侵入するやつがいるのか、それとも先輩達が隠しているなにかがあるのか。
隠しているのならそれを暴いて鼻をあかしてやる、なんて軽い気持ちで幾久は明かりの元に、静かに静かに近づいていく。
敷地内は広いのと、そんな泥棒なんか入る余地もないようであっても所々街灯がついているので、全く見えないほどでもない。
もうすぐ茶室に到着する、というあたりで幾久はがさりという音を聞いた。ぴた、と幾久は体を止める。
(……いま、なんか音が)
自分の呼吸音さえ聞こえそうなくらいに、真夜中の御門寮は静かだ。
足を止めた今、静かにあるく足音すら聞こえない。自分の呼吸音と、なにかの気配。
(……なんか、いる)
霊感なんか全くない幾久でも、気配くらいは流石に感じる。いま、なにかが絶対に幾久の目の前の暗い闇の中にいる。
「―――――だれだよ?」
わざと強気でそう尋ねると、がさりとなにか、人の形をしたものが出てきた。
「―――――!!!!!!」
あまりの事に息を呑んだ。それは全く人の形ではあったけれど、顔に顔がなかった、つまりのっぺらぼうのようにつるんとしていたのだ。
そしてそのつるんとしたのっぺらぼうは突然、声を出した。
「ウォオオオ」
そして幾久のほうへ向かってきた。
「うわ―――――ッ!!!!!!!」
あまりの事に驚いてしまい、幾久は叫んだが驚いたあまりに足を踏み外し、池にばっしゃーんと落ちてしまった。だが、それどころじゃない。
池から慌てて出ると、寮へ向かい廊下のガラス戸をあけて入ろうとしたが、幾久が出てきた場所と違うのでそこは鍵がかかっていて開かない。
ガタガタとガラス戸を強引に開けようと必死で何度も戸を開けようとするが当然そこは開かず、のっぺらぼうは追っかけてくる。
「せんぱいっ!せんぱいたちっ!」
必死でがたがたやっていると、音と声に何事かと高杉が目を覚ましたのかまだ寝ていなかったのか、部屋から出てきて驚いてガラス戸をあけた。
「どうしたんじゃ、一体!」
なにがあった、と幾久に尋ねるが、幾久はあまりのことに、のっぺらぼうを指差すことしかできない。
池に落ちてずぶぬれの上に、高杉を見て安心したせいで腰が抜けてしまった。
騒ぎに久坂も出てきてなぜか山縣まで出てきた。
そして心底あきれた声で高杉が言った。
「お前か……幾久になにしちょるんか」
え?知り合い?と驚き幾久がのっぺらぼうを見ると、廊下の明かりの中、のっぺらぼうは頭の部分からジッパーを下げた。
下げられたジッパーからは普通に人間の顔が出てきて、しかも幾久とそう変わらない年齢に見える高校生くらいの男だった。そして親指を立てるとやたらにこやかな笑顔でこう言った。
「オッス!おら時山!トッキーって呼んでくれよな!」
「と……とき……?」
まだ事態がよくつかめず、高杉にしがみついている幾久に久坂はため息をついて、山縣はまるで大切なフィギュアをへし折られたように、真っ青な顔をしていた。
「ねね、いまなんかすごい音と声がしたけど、一体……」
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